登山とは|意味・種類・魅力と遭難者数(警察庁データ)

登山とは、いったいどんな活動を指すのでしょうか。「山を歩くこと」というイメージはあっても、ハイキングやトレッキングとの境界、実際にどのくらい危険なのかは、あらためて聞かれると説明しにくいものです。

このページでは、登山の定義と種類、実際に体験できる魅力に加えて、警察庁が毎年公表している「山岳遭難の概況」を基に、発生件数・遭難者数・死者行方不明者数・原因・年齢層といった実際の数字を紹介します。数字は読者を脅すためではなく、山に入る前の判断材料として使ってください。

なお、装備の選び方や登山計画の立て方、体力づくりの具体的な手順は登山の始め方で詳しく解説しています。このページでは「登山とは何か」を中心に扱います。

登山とは何か

登山とは、山に登る行為全般を指す言葉です。山頂を目指す本格的な登山だけでなく、低い山を歩くハイキングや、山を目的地とせず自然の中を歩くトレッキングも、広い意味では登山に含まれます。

登山とはどんな活動かのイメージ

登山の定義

辞書的には「山に登ること」ですが、実際に使われる場面はもっと幅があります。日帰りで整備された道を歩くだけの散策も、ロープを使って岩壁を登る本格的な登攀も、どちらも「登山」と呼ばれることがあります。共通しているのは、舗装された道路や施設の外に出て、自分の足で高さを稼ぐという行為です。

どこからが「登山」なのか

ハイキングやトレッキングとの境界に、公式な線引きがあるわけではありません。参考になるのは、警察庁が山岳遭難の統計をとる際の分類です。遭難者を目的別に集計する表では、登山・ハイキング・スキー登山・沢登り・岩登りをまとめて「登山」という一つの区分として扱っています。歩く速さや標高で線引きしているわけではなく、山という環境で行うレジャー全体を連続的なものとして捉えていることになります。用語ごとの細かい違いは登山用語一覧で個別に確認できます。

登山の種類

ひとくちに登山といっても、必要な技術や体力はさまざまです。代表的な種類を紹介します。

ハイキング

整備された遊歩道や低山を、日帰りで歩くスタイルです。特別な技術がなくても始めやすく、登山の入り口として選ばれることが多い形です。

トレッキング

山頂への到達を必ずしも目的とせず、山や高原の自然を数時間から数日かけて歩くことを指します。海外の山歩きで使われてきた言葉で、日本では縦走に近い意味で使われることもあります。

縦走

複数の山頂や稜線を尾根伝いに歩きつなぐスタイルです。日帰りで終わるコースもあれば、山小屋やテントに泊まりながら数日かけて歩くコースもあります。

沢登り

沢や渓流をさかのぼって山頂を目指すスタイルです。滝を高巻いたり、川の中を歩いて渡ったりする場面があり、登山道を歩くコースとは求められる技術が異なります。

クライミング

岩壁や氷壁をロープや専用の道具を使って登る、技術面での難易度が高いスタイルです。スポーツとして楽しむフリークライミングから、山頂到達そのものを目的にしたアルパインクライミングまで幅があります。

雪山登山

積雪期に行う登山です。アイゼンやピッケルなど夏山にはない装備が必須になり、道迷いや雪崩など、夏山とは種類の異なるリスクが加わります。

種類 主なフィールド 技術面の負荷 特有のリスク
ハイキング 整備された遊歩道・低山 低い 疲労・熱中症
トレッキング 山や高原の自然歩道 低〜中 天候の急変
縦走 稜線・複数の山頂 道迷い・悪天候
沢登り 沢・渓流 中〜高 滑落・増水
クライミング 岩壁・氷壁 高い 滑落・落石
雪山登山 積雪期の山 高い 道迷い・雪崩・低体温症

自分の体力や経験に合わない種類に無理に挑戦すると、遭難のリスクが上がります。どの山からどの種類で始めればよいか迷う場合は、初心者の山の選び方登山デビューにおすすめの山10座を参考にしてください。

登山の魅力

登山を続けている人に理由を聞くと、精神論だけでは説明しきれない、具体的な体験が語られます。

登山の魅力が伝わる稜線の風景

景色

山頂や稜線からの眺めは、街を歩いていては得られないものです。雲を見下ろす、遠くの山並みを見渡す、街灯りのない夜空を見上げるといった体験は、登った人だけが得られるご褒美です。

達成感

自分の足だけで標高を稼ぎ、山頂に立つ、あるいは計画したコースを歩き切るという達成感は、登山ならではのものです。厳しい区間を越えるほど、この感覚は大きくなります。

非日常

電波が届きにくい山の中では、仕事の連絡やSNSから物理的に離れることになります。この「つながらない時間」を、日常のリセットとして楽しみに登山を続けている人も少なくありません。

体力の変化

登り続けることで、脚力や心肺機能はゆるやかに変化していきます。最初はきつく感じたコースを、以前より楽に歩けるようになる変化そのものを楽しみにしている登山者もいます。

山岳遭難の実数(警察庁データ)

登山にリスクがあることは間違いありませんが、「どのくらい危ないのか」を具体的な数字で確認したことがある人は多くありません。ここでは警察庁が2026年6月18日に公表した「令和7年における山岳遭難の概況等」を基に、実際の数字を紹介します。

山岳遭難のリスクを考えるイメージ

発生件数・遭難者数の推移

項目 令和6年(2024年) 令和7年(2025年) 前年からの変化
発生件数 2,946件 3,122件 +176件
遭難者数 3,357人 3,623人 +266人
死者・行方不明者 300人 332人 +32人
負傷者 1,390人 1,480人 +90人
無事救助 1,667人 1,811人 +144人

令和7年の遭難者3,623人のうち、約半数にあたる1,811人・50.0%は無事に救助されています。負傷者は1,480人・40.9%、死者・行方不明者は332人・9.2%でした。過去10年の推移を見ると、山岳遭難は令和2年から3年連続で増加したあと令和6年に一度減少し、令和7年は再び増加に転じています。

態様別(原因別)

態様 人数(令和7年) 構成比
道迷い 1,119人 30.9%(最多)
転倒 694人 19.2%
滑落 626人 17.3%
その他 534人 14.7%
疲労 356人 9.8%
病気 294人 8.1%

遭難の原因(態様)別にみると、道迷いが1,119人・30.9%で最も多く、次いで転倒694人・19.2%、滑落626人・17.3%と続きます。道迷いが最も多いという順位は、令和2年から令和7年まで6年連続で変わっていません。

このうち病気による遭難には、高山病も含まれます。標高の高い山を目指す場合は、事前に高山病の症状と予防で症状と対策を確認しておくと安心です。

年齢層別

年齢層 遭難者全体に占める割合 死者・行方不明者に占める割合
40歳以上 75.6%(2,739人) 91.6%(304人)
60歳以上 47.6%(1,723人) 66.6%(221人)

年齢層別にみると、遭難者3,623人のうち40歳以上が2,739人・75.6%、60歳以上が1,723人・47.6%を占めています。死者・行方不明者332人に限ると、40歳以上が304人・91.6%、60歳以上が221人・66.6%とさらに高くなります。年齢が高いことがそのまま危険というわけではありませんが、体力や回復力の変化を前提に、若い頃と同じ計画を組まないことが一つの目安になります。

道迷いが最多という事実から言えること

ここまでの数字が示す一番はっきりした事実は、遭難の原因は道迷いが突出して多く、しかもその順位が6年間変わっていないという点です。転倒や滑落は体力や技術である程度対策できますが、道迷いは「自分が今どこにいるか分からなくなる」ことが直接の原因になります。

警察庁も遭難防止対策として、地図の見方やコンパスの活用方法を身につけ、登山中は常に自分の位置を確認するよう呼びかけています。令和7年の遭難発生件数のうち76.3%は、現場から携帯電話などの通信手段で救助を要請していますが、電話がつながっても自分のいる場所を正確に伝えられなければ、捜索には時間がかかります。

つまり、登山靴やレインウェアを新調する前に、地図とコンパス、またはGPS機能のある登山地図アプリを使いこなし、今どこにいるかを常に把握できる状態にしておくことが、遭難を避けるうえで効果の大きい備えだといえます。

装備選びと登山計画の立て方、体力づくりの具体的な手順は登山の始め方にまとめています。単独登山を考えている場合は、複数人での登山に比べてトラブル発生時の対処が難しくなる場面があるため、ソロ登山入門もあわせて確認してください。

あわせて読みたい
装備そのものの選び方は、こちらの記事で具体的に解説しています。

よくある質問

Q. 登山とハイキングの違いは何ですか?

明確な境界線はありません。警察庁の統計でも、ハイキングは登山の一区分として扱われています。一般的には、整備された低山を日帰りで歩くものをハイキング、より本格的な装備や体力を要するものを登山と呼び分けることが多いですが、厳密な基準があるわけではありません。用語の使い分けは登山用語一覧で確認できます。

Q. 登山は危険なスポーツですか?

令和7年は全国で3,122件の山岳遭難が発生し、3,623人が遭難しています。一方で、そのうち半数にあたる1,811人は無事に救助されており、死者・行方不明者は332人でした。危険がゼロとは言えませんが、原因の多くは道迷い・転倒・滑落に集中しており、対策のしようがあるリスクだといえます。

Q. 山岳遭難の原因で一番多いのは何ですか?

道迷いです。令和7年は1,119人・30.9%を占め、6年連続で最も多い原因になっています。次いで転倒19.2%、滑落17.3%と続きます。

Q. 一人で登山をしても大丈夫ですか?

禁止されているわけではありませんが、数字の上では注意が必要です。令和7年、単独登山者1,367人のうち死者・行方不明者は209人・15.3%で、複数人での登山の5.5%と比べて9.8ポイント高くなっています。トラブル発生時に一人では対処が難しい場面があるためです。詳しくはソロ登山入門で確認してください。

Q. 登山用語がわからないときはどうすればいいですか?

登山用語一覧に、この記事に出てきたハイキング・トレッキング・縦走などの用語もまとめてあります。

Q. 初めての登山にはどの山がおすすめですか?

体力や経験に合わない山を選ぶこと自体が、遭難の原因になり得ます。登山デビューにおすすめの山10座初心者の山の選び方で、自分に合う山の選び方を確認してから計画を立ててください。

まとめ

登山とは何かのまとめのイメージ

登山とは、低山を歩くハイキングから雪山やクライミングまでを含む、幅の広い言葉です。境界を厳密に決める基準はなく、警察庁の統計上も、ハイキングや沢登り、岩登りは「登山」という一つの区分にまとめられています。

魅力は精神論だけでは語りきれず、景色・達成感・非日常・体力の変化といった具体的な体験として語られます。

一方で、令和7年には3,122件・3,623人の山岳遭難が発生し、原因の30.9%を道迷いが占めています。この事実は、装備をそろえる以上に、自分が今どこにいるかを把握する技術が遭難を避けるうえで重要であることを示しています。

次の一歩として、装備の選び方や登山計画の立て方は登山の始め方で確認してください。準備が整ったら、山に出かけましょう。

出典

※統計は警察庁が2026年6月18日に公表した「令和7年における山岳遭難の概況等」(令和7年=2025年1月〜12月のデータ)によるものです。本記事の数値は2026年8月13日時点で確認したものです。

スポンサーリンク