高山病の対策|事前トレーニングとSpO2の目安・グッズ選び

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「高山病 対策 トレーニング」で調べている方の多くは、水分補給やゆっくり歩くことなど、基本的な注意点はすでにご存知のはずです。それでも記事を探しているのは、登山前に具体的に何を・どれくらいやっておけばいいのかと、自分の体が今どういう状態にあるのかをどう確かめればいいのかを知りたいからではないでしょうか。

この記事では、日本登山医学会などが公表している情報をもとに、登山前にできる準備と、パルスオキシメーターで測るSpO2(血中酸素飽和度)の見方から解説します。そのうえで、標高別に起こりやすいこととるべき行動の一覧、低酸素トレーニングマスクの効果の実際、対策グッズの選び方、症状が出たときにどう動くかまで、山で実際に使える内容にまとめました。

先に症状が出たときの対処だけ確認したい方は症状が出たらどうするかへ進んでください。

この記事の結論
  • 高山病を防ぐ最大の要因は体力ではなく登る速さと寝る標高。ゆっくり登ることが最優先
  • 事前のトレーニングは「高山病を防ぐ」のではなく、疲労をためずに歩き続けられる体を作るためのもの
  • SpO2(血中酸素飽和度)は90%を割ると要注意、80%を切ると危険域(下界の目安)。高所では数値が下がるのが普通で個人差も大きいため、症状とあわせて判断する
  • 低酸素トレーニングマスクは呼吸筋を鍛える器具であり、実際の高地順応の代わりにはならない
  • 症状が出たときに唯一確実な対処は高度を下げること。グッズは症状を一時的に和らげる補助でしかない

高山病とは|標高2,500m前後から増えるリスク

高山病とは何か 標高と酸素の関係を示す登山道

高山病は、標高が上がって空気中の酸素が薄くなる環境に、体の適応が追いつかないことで起こる症状の総称です。日本登山医学会は、頭痛に加えて、消化器症状(食欲不振・嘔気・嘔吐)、倦怠感や虚脱感、めまいやもうろう感、睡眠障害のうち少なくとも1つを伴う状態を急性高山病と定義しています。

標高との関係については、同学会のデータから次のことが分かります。標高2,500mの高度に急激に登高すると、約25%の人に3個以上の症状が現れるとされ、標高3,500mではほとんどの人が何らかの症状を経験し、うち10%は重症化するとされています。多くの登山者にとって、2,500m前後が「対策を意識し始める」目安の標高になります。

急性高山病・高所肺水腫・高所脳浮腫の3段階

高山病は、重さによって3段階に整理されます。

  • 急性高山病(山酔い)……前述の頭痛+随伴症状。多くはここで休息や高度を上げないことで回復に向かいます。
  • 高所肺水腫(HAPE)……安静時の呼吸困難、せき、虚脱感や運動能力の低下、胸部の圧迫感や充満感のうち2つ以上が目安とされます。
  • 高所脳浮腫(HACE)……重症急性高山病の最終段階とされ、精神状態の変化や運動失調(まっすぐ歩けない)が現れます。

高所肺水腫・高所脳浮腫は命に関わる状態です。症状の見分け方と、そのときにやることは後述の章で詳しく扱います。

高山病になりやすい人の特徴

高山病になりやすい人の特徴と年齢による差

体質による差は確かにありますが、日本登山医学会が強調しているのは年齢や体力そのものより、登る速さと体調管理です。特に高齢者については、標高3,500m付近のデータで50歳以上と以下を比べると差がはっきり出ており、50歳以上はSpO2が若い人より2〜3%低くても通常の範囲とされています。過去に高山病になったことがある人、風邪気味の人、寝不足や飲酒で体調を崩している人も、通常よりリスクが上がると考えてください。

高山病を防ぐ事前トレーニング|何を・いつから・週何回

高山病に備えて登山前にトレーニングする様子

「高山病 対策 トレーニング」というキーワードで調べる方の多くが期待しているのはここだと思いますので、最初に誠実にお伝えします。体力(心肺機能や持久力)そのものは、高山病を防ぐ主要因ではありません。山岳医療に詳しい医師の解説でも、「体力と高所順応は別物」とされ、国際的なガイドラインでも年齢・性別・体力は急性高山病リスクの主要因ではなく、最も重要なのは登高速度と睡眠する標高だと整理されています。

では事前のトレーニングは無意味かというと、そうではありません。体力があれば、同じ行程を余裕を持ったペースで歩けるため、疲労や脱水といった「高山病のリスクを上乗せする要因」を避けやすくなります。「体力があれば高山病にならない」ではなく、「体力があれば無理のないペースを保ちやすい」という位置づけで捉えてください。

最優先は登るペースと寝る標高

日本登山医学会は、高山病対策の基本として「急激に高度を上げすぎないこと」を挙げています。ゆっくりした日程であれば、低酸素状態に体の馴化が追いつきます。そのうえで、睡眠・休養を十分取ること、行動中にこまめに糖分と水分を摂ることを重要な対策として挙げています。飲みすぎや下痢の放置は脱水や浮腫を招きやすいため危険で、風邪のようなウイルス感染も危険因子になるとされています。過激な運動も、逆にじっとして動かないのも良くないとされており、自分のペースを保ちながら着実に歩くことが基本です。

事前にできる体力づくりの目安

トレーニング開始の時期や頻度について、山岳医療の専門家サイトでは登山や旅行の2〜3週間前から、できれば1ヶ月ほど前から始めることをすすめる例が見られます。内容は、ジョギングやウォーキングなど軽めの有酸素運動を週2〜3回、30分程度続ける形が一般的です。ただし、これは前述の通り「高山病を防ぐ」ためというより、行程を余裕のあるペースで歩き切るための体力づくりだと理解しておいてください。継続的な体力づくりそのものについては登山のトレーニング方法で詳しく扱っているので、そちらもあわせて確認してください。この記事では、高地に備えるという観点に絞って解説を続けます。

呼吸筋を鍛える

荷物を背負って標高を稼ぐ登山では、呼吸に使う筋肉(横隔膜や肋間筋など)の持久力も行動のしやすさに関わります。呼吸筋トレーニング器具は、本来はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者や、管楽器奏者・声楽家の訓練などに使われてきた器具で、吸う息に負荷をかけて呼吸筋そのものを鍛えるものです。低酸素環境を再現するものではないため、「高山病を防ぐ」効果を示すものではありませんが、行動中の息苦しさに余裕を持たせたい人には選択肢の1つになります。


この「POWERbreathe(パワーブリーズ) プラス 重負荷」は、吸気に負荷をかけて呼吸筋を鍛える器具です。パワーブリーズ公式サイトによると、使い方は1セット30呼吸を1日2回が目安で、30回をどうにか終えられる強さの負荷が適切とされています。同じ強さで1週間ほど続け、余裕が出てきたら負荷ノブを調整します。重負荷モデルは、標準負荷で物足りなくなった人向けの設定です。繰り返しになりますが、これは呼吸筋を鍛える器具であって、低酸素環境そのものへの順応を再現する道具ではありません。

低酸素トレーニングマスクの是非

「高山病 トレーニング マスク」で調べている方も多いと思うので、ここで整理します。市販されている黒いフィルター状のマスク(いわゆるトレーニングマスク)の多くは、吸い込める空気の量そのものを絞る構造になっています。フィルターを通しても、吸っている空気の酸素濃度(約21%)自体は変わりません。つまり、実際の高所や低酸素室のように酸素分圧が下がった環境を再現しているわけではなく、負荷をかけて呼吸筋を鍛える器具という点では、前述のPOWERbreatheなどと同じ位置づけになります。

専門のジムなどが提供する低酸素室でのトレーニングは、実際に酸素濃度を下げた環境を使うため仕組みが異なりますが、これも「現地での高度順応をスムーズにする」ことを目的にしたものであり、事前に行けば高山病を防げると断定できるものではありません。マスクであれ低酸素室であれ、「高地順応の代わりになる」と断定はできないという前提で、呼吸筋トレーニングや行動時の体力づくりの一環として捉えるのが実情に近い理解です。

直前の実地トレーニングも有効

日本登山医学会は、海外の高所トレッキングに出かける場合の対策として、「出発直前に富士山に1〜2回登ってトレーニングしておくのも有効」という趣旨を挙げています。国内で標高3,000mを超える体験ができる山は限られており、富士登山は実地に近い準備として位置づけられます。富士山と高山病の関係は後述の章で詳しく扱います。日帰りで富士山に登る計画を立てている方は富士山日帰り登山も参考にしてください。

SpO2(血中酸素飽和度)の見方|パルスオキシメーターで何を見るか

「高山病 予防 サプリ」などとあわせて調べられることが多いものの、サプリメントより先に押さえておきたいのが自分の体の状態を数値で確認する方法です。高山病の症状は自覚しにくいこともあるため、パルスオキシメーターでSpO2を測る習慣は、日本の代表的なトレッキング会社やツアーでもほぼ標準的な装備として扱われています。

SpO2とは

SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)は、指先などにクリップ式の機器を挟むだけで、血液中のヘモグロビンがどれだけ酸素と結びついているかをパーセントで表示する数値です。標高が上がって空気中の酸素が減ると、それに応じてSpO2も低下します。ただし低下の程度は、登る速さや個人差(もともとの呼吸機能・馴化の違い)によって大きく変わります。

SpO2の目安と「危険の壁」

日本登山医学会が公表している目安は次のとおりです。平地(下界)ではSpO2が90%を割ると酸素吸入も考える、80%を下回ると危ない、と考えるのが一般的とされています。

高所でのトレッキング中(エベレスト街道での調査データ)では、SpO2の値が90%を割り込むと体に大きな低酸素ストレスが加わり始める「第一の壁」にあたり、目安として標高3,000m前後で起こりやすいとされます。80%を切ると、かなり危険な低酸素状態に入る「第二の壁」で、目安は標高4,600m前後です。ただし同学会自身が「各人によってこの高度は変わってくる」と明記しているとおり、これはあくまで目安であり、断定できる基準ではありません。数値だけでなく、頭痛やめまいなど自覚症状とあわせて判断することが前提です。

年齢による違いもあります。前述のとおり、50歳以上は若い人よりSpO2が2〜3%低くても通常の範囲とされているため、年齢の異なるパーティで数値を比べるときは、この差を踏まえて考える必要があります。

どんなときに高度を上げるのをやめるか

日本登山医学会の整理では、頭痛に他の症状が加わり、かつSpO2がその標高での平均値をかなり下回るようであれば、新しく高度を稼ぐことは避けて停滞・休養にあてるという考え方が示されています。休んでも改善が見られない場合は、キャンプ地(宿泊地)を1つ戻すことも選択肢です。SpO2が危険域まで下がり、症状も重い場合は、酸素の使用や下山をためらわないことが繰り返し強調されています。数値の細かい基準よりも、「普段の自分や周りの人と比べて明らかにおかしい」という変化に早く気づくことが実際には役立ちます。

ここで役立つのがパルスオキシメーターです。行動中に定期的に測る習慣をつけておくと、自分のSpO2がどのくらいの標高からどう下がっていくかという「普段の基準」が分かり、体調が悪化したときの変化にも気づきやすくなります。


このパルスオキシメーターは理学療法士監修で、製品情報によると本体重量は電池を含まず約31gとコンパクトで、ザックの小さなポケットにも収まるサイズです。SpO2の測定範囲は35〜100%(測定精度は70〜100%の範囲で±3%)、脈拍数は30〜250bpm(測定精度は±2bpm)まで対応し、管理医療機器として認証されています。電源は単4電池2本で、電池・ハンドストラップ・取扱説明書が付属します。あくまで「今の状態を数値で確認する道具」であり、これを装着すること自体が高山病を防ぐわけではありません。数値の見方や下山の判断は、前述の内容と自覚症状をあわせて総合的に行ってください。

標高別の目安|起こりやすいこととるべき行動

標高が上がるごとに酸素が薄くなる登山道の様子

ここまでの内容を、標高ごとに整理すると次のようになります。数値はいずれも目安で、個人差が大きい点は繰り返し述べてきたとおりです。

標高 起こりやすいこと とるべき行動
2,500m前後 約25%の人に頭痛+複数の症状が出現し始める標高(日本登山医学会) ここから急に高度を上げない。水分・糖分をこまめに摂り、体調の変化に注意する
3,000m前後 SpO2が90%を割り込みやすくなる目安(トレッキング調査データによる「第一の壁」) 頭痛に他の症状が重なったら停滞・休養。改善しなければ高度を上げない
3,776m(富士山) 日帰り・弾丸登山では急激な標高上昇になりやすく、山頂付近で症状を訴える人が多い 5合目で体を慣らす時間を取り、山小屋泊も選択肢に。無理な弾丸登山は避ける
3,500m以上 ほとんどの人が何らかの症状を経験し、うち10%は重症化する標高(日本登山医学会) SpO2をこまめに確認。症状が重ければ高度を上げず、改善なければ下山を検討
4,600m前後 SpO2が80%を切りやすくなる目安(「第二の壁」)。国内の登山では通常到達しない標高 酸素の使用や下山をためらわない。単独で行動させない

国内の一般的な登山では3,500mを超える機会自体が限られますが、2,500m前後から対策を意識するという考え方は、八ヶ岳や北アルプスの稜線、富士山など多くの山に共通します。

富士山と高山病

富士登山で高山病に備える準備の様子

富士山の標高は3,776.12m(国土地理院)です。5合目の標高は登山口によって異なり、公式情報によると富士宮口は2,400m、吉田口(富士スバルライン5合目)は約2,300mとされています。つまり、車やバスで5合目まで上がった時点で、すでに前述の「2,500m前後」に近い高さにいることになります。

富士山で高山病が起こりやすいのは、短時間で一気に標高を稼ぐ行程になりやすいためです。5合目からの標高差はルートによって1,300〜1,900m程度あり、これを1〜2日で登り切る計画は、前述の「急激な高度上昇」に該当しやすくなります。特に夜通し歩いて山頂でご来光を迎える弾丸登山は、休養や睡眠の時間を削ることになるため、対策としては推奨しにくい行程です。

対策の考え方は本記事で解説してきた内容と同じです。5合目に到着したら少し時間を置いてから歩き出す、山小屋で1泊して標高を分割する、水分と糖分をこまめに摂る、といった基本を積み重ねることが、体力の有無以上に効いてきます。日帰りでの富士登山を検討している方は富士山日帰り登山ガイド、山小屋泊を含めた登山ルートのまとめは富士登山ルート・山小屋のまとめもあわせて確認してください。


初めての富士登山では、ルート選びや持ち物、行程の組み方自体に迷う方も多いはずです。「富士登山パーフェクトガイド」は、ルートの特徴や装備、体調管理のポイントなどを1冊にまとめたガイドブックで、事前の行程検討に使えます。

高山病対策グッズ|何が使えて何が使えないか

高山病対策として使われる携帯酸素缶などのグッズ

「高山病対策 グッズ」で調べる方に向けて、ここでは何が使えて何が使えないかを正直に整理します。グッズはいずれも症状を一時的に和らげる、または体調管理をしやすくする補助であり、高山病そのものを治すものではありません。唯一確実な対処は、繰り返しになりますが高度を下げることです。

携帯酸素缶

ドラッグストアや登山用品店で手に入る携帯酸素缶は、ボタンを押すと酸素が噴射されるスプレータイプの製品です。日本登山医学会は、この携帯式のスプレー酸素缶について「せいぜい数分しかもたない」「重量あたりの費用対効果を考えるともったいない」と評価しており、本格的な酸素吸入の代替にはならないとしています。実際、製品によってはボタンを押し続けた場合の使用目安が約3〜5分とされているものもあり、この評価と整合します。あくまで一時的に呼吸が楽になることがある補助であり、根本的な対処は高度を下げることだと理解した上で使ってください。


この「ポケットオキシ」は圧縮型の携帯酸素ボンベで、10Lタイプです。定番の携帯酸素缶で、2本セットの商品も販売されています。

コンパクトタイプの酸素缶

より小型・軽量なタイプを選びたい場合の選択肢もあります。


この「OXY ONE mini」は、直径約38mm・高さ145mmとコンパクトな酸素缶です。販売ページによると酸素充填量は10L、内容は酸素99.9%、重量は酸素満タンの状態でクリアケース付き約160gで、ボタンを押し続けた場合の使用目安は約3〜5分とされています。販売ページには「本製品は医療用品ではありません」「体調の悪い方・妊娠している方は医師にご相談ください」「使用中に異変を感じたら直ちに中止してください」という注意書きがあり、あわせて確認してから使ってください。高圧ガスのため火気の近くでの使用や航空機への持ち込みもできません。

電解質・水分補給

高山病対策としての電解質・水分補給グッズ

日本登山医学会も、高山病対策として行動中のこまめな糖分と水分の摂取を挙げています。脱水は高所での体調不良を招きやすい要因の1つとされ、水だけでなく塩分(電解質)もあわせて摂れる飲料は、行動中の補給として理にかなっています。


この「O.R.Sタブレット」は、水に溶かして使う電解質タブレットです。O.R.S公式サイトによると1粒(3g)あたりエネルギー8.5kcal・食塩相当量0.345g・カリウム96.5mg・クエン酸399mgで、溶かす水の量によって濃度を調整できます。100mlに1粒でWHOの水分補給の考え方に基づく濃度、200mlに1粒で大量の発汗時、500mlに1粒でスポーツ・屋外活動時の濃度とされており、タブレット1粒を携行するだけで済むため荷物を増やしたくない登山との相性がよい製品です。


すでに電解質が調整された状態の飲料をそのまま持って行きたい場合は、こちらが選択肢になります。「アクエリアス 経口補水液 ORS」は、消費者庁の特別用途食品(個別評価型病者用食品)の表示許可を受けた製品です。日本コカ・コーラ公式サイトによると、軽度から中等度の熱中症や過度の発汗による脱水状態の水分・電解質補給に適した病者用食品と位置づけられています。500mlペットボトル×24本というまとまった数量なので、日帰り1回分だけでなくシーズン中のストックとしても使えます。ただし、あくまで水分・電解質補給のための食品であり、高山病の症状そのものを治療する薬ではない点は理解しておいてください。

サプリメント・「食べる酸素」

酸素を含むと表示されたゼリーやタブレットタイプの製品も市販されています。これらは携行しやすく、行動中に手軽に口にできる点は登山向きですが、高山病そのものへの予防効果を裏づける確立した医学的根拠は限定的です。過度な期待はせず、あくまで行動食・補助食品の1つとして捉えてください。


この「食べる酸素」は、ペレットタイプの携帯しやすい商品です。行動中の休憩時に口にする補助食品の選択肢として、味を変えたい・かさばらないものが欲しいという方に向いています。

症状が出たらどうするか|唯一確実な対処は下山

高山病の症状が出た登山者に対応する場面

ここまで予防と対策グッズについて解説してきましたが、実際に症状が出たときにどう動くかが最も重要です。

軽症(山酔い)のサイン

頭痛に加えて、食欲低下、吐き気、めまいやふらつき、倦怠感、睡眠障害(眠れない・息苦しい・何度も目が覚める)のいずれかが見られたら、急性高山病(山酔い)を疑います。この段階では、それ以上高度を上げずにその場で休息を取り、水分と糖分を補給することで改善を目指します。軽い頭痛程度であれば、一般的な鎮痛剤を使いながら注意深く行動を継続できる場合もあります。

重症(高所肺水腫・高所脳浮腫)のサイン

安静時でも息が苦しい、せきが止まらない、休んでも回復しない強い疲労感、胸が締めつけられる感じがあれば高所肺水腫を、まっすぐ歩けない、日時や場所が分からなくなるといった様子があれば高所脳浮腫を疑います。どちらも命に関わる状態で、速やかに標高を下げることが唯一確実な対処です。自力での下山が難しい場合は、救助要請をためらわないでください。

基本の対処の流れ

症状に気づいたら、まずそれ以上の高度上昇をやめて休息を取ります。数十分から数時間休んでも改善しない、あるいは悪化する場合は、高度を下げる(下山する、またはキャンプ地・山小屋を1つ戻る)判断に切り替えます。休息中も水分と糖分の補給は続けてください。症状のある人を1人だけで行動・下降させないことも大切な原則です。重症のサインが見られる場合は、休息の判断を待たず、直ちに下山と救助要請の手配を始めてください。

医薬品について

高山病の症状に応じて医薬品を検討する場面

高山病の予防や治療に使われる医薬品として、アセタゾラミド(ダイアモックス)という名前を見聞きすることがあります。これは医師の処方が必要な薬であり、使用するかどうかは医師が判断するものです。自己判断での使用や、他の人からの分け合いは避け、持病がある方・過去に高山病で苦しんだ経験がある方・出発前から不安がある方は、登山計画の段階で医師に相談しておくことを強くおすすめします。登山経験が豊富な方でも高山病になるときはなるため、体質や持病を自己判断せず、専門家の意見を確認しておくと安心です。

そのほかの対策|呼吸法・休息・情報収集

登山中の呼吸法を意識する場面

トレーニングやグッズ以外にも、行動中に意識できる対策があります。

呼吸を意識する

登り坂など負荷がかかる場面では、呼吸が浅く速くなりがちです。吸う息より吐く息を意識的に長くする呼吸は、リラックスにもつながるとされ、息が上がりやすい人は休憩のたびに意識してみる価値があります。ただし、これも症状を治す方法ではなく、行動を少しでも楽にするための工夫として位置づけてください。

行程に余裕を持たせる

日程に余裕がないと、多少の不調があっても「予定通り進まなければ」という心理が働き、無理をしやすくなります。あらかじめ休憩や停滞の時間を行程に組み込んでおくことは、それ自体が高山病対策になります。荷物を軽くすることも、体力を余分な負荷に使わずに済むという意味で有効です。日帰り登山での軽量化については日帰り登山の軽量化のポイントを参考にしてください。

低体温症との違いにも注意する

標高の高い山では、気温の低下による低体温症のリスクも重なります。頭痛や倦怠感など症状が似る部分もあるため、行動中の様子や気温もあわせて判断してください。服装のレイヤリングについてはレイヤリング完全版にまとめているので、あわせて確認しておくと行動中の体調管理がしやすくなります。

似た症状との見分け方|ハンガーノック(低血糖)との違い

手足の震えや力が入らない、めまいといった症状は、高山病でも、行動食が足りずに起こる低血糖(ハンガーノック)でも起こります。行動中に自分だけで見分けるのは簡単ではありません。最後に食事や行動食を摂ってから時間が経っている場合は、低血糖の可能性もあわせて考えてください。症状の見分け方と対処法は登山中に意識喪失!低血糖とハンガーノックの症状と対処法で詳しく解説しています。標高を上げる前の行動食の摂り方は、高山病と低血糖の両方の対策として共通して役立ちます。

よくある質問

Q. SpO2が何%になったら下山すべきですか?

断定できる一律の数値はありません。目安として、下界ではSpO2が90%を割ると要注意、80%を下回ると危険と考えるのが一般的とされ、高所ではこれより数値が下がるのが普通です。数値だけでなく、頭痛や吐き気などの症状が重なっているか、休んでも改善するかを含めて総合的に判断してください。判断に迷う、または症状が重い場合は、数値にこだわらず高度を下げることを優先してください。

Q. 高山病のトレーニングはいつから始めればいいですか?

体力づくりとしては、登山の2〜3週間前、できれば1ヶ月ほど前から週2〜3回の軽い有酸素運動を行う例が一般的です。ただしこれは疲労をためずに歩き切るための準備であり、高山病そのものを防ぐ効果を保証するものではありません。高山病対策として最も重要なのは、登山当日の登るペースと宿泊する標高の上げ方です。

Q. 低酸素トレーニングマスクは効果がありますか?

市販のトレーニングマスクの多くは、吸い込む空気の量を絞る構造で、吸っている空気の酸素濃度自体を下げているわけではありません。呼吸筋を鍛えるトレーニングとしては使えますが、実際の高地順応を再現するものではないため、「高山病を防ぐ」効果を断定することはできません。

Q. 体力があれば高山病になりにくいですか?

体力(心肺機能や持久力)そのものは、高山病の主要なリスク要因ではないとされています。最も重要なのは登るペースと寝る標高です。ただし体力があると余裕のあるペースを保ちやすく、疲労やそれに伴う脱水を避けやすくなるという間接的な利点はあります。

Q. 携帯酸素缶は高山病に効きますか?

一時的に呼吸が楽になると感じることはありますが、症状そのものを治すものではありません。日本登山医学会も、市販の携帯用スプレー酸素缶は使用できる時間が短く、費用対効果の面でも過度な期待はできないという趣旨の評価をしています。症状が続く、または重い場合は、酸素缶に頼らず高度を下げてください。

Q. ダイアモックス(アセタゾラミド)は自分で判断して飲んでもいいですか?

おすすめできません。これは医師の処方が必要な薬で、使用するかどうかは医師が判断するものです。持病がある方や過去に高山病で苦しんだ経験がある方は、登山の計画段階で医師に相談し、必要な対策を確認しておいてください。

Q. 富士山でも高山病になりますか?

なります。富士山は標高3,776mあり、5合目の時点ですでに2,300〜2,400m前後の標高です。短時間で標高を一気に稼ぐ弾丸登山では特にリスクが上がるとされています。5合目で体を慣らす時間を取る、山小屋に泊まって行程を分けるといった対策が効果的です。

Q. ハンガーノックと高山病はどう見分ければいいですか?

手足の震えやめまい、力が入らないといった症状は共通するため、行動中に自分だけで見分けるのは簡単ではありません。最後に行動食を摂ってから時間が経っている場合は低血糖の可能性も考えてください。詳しい見分け方はこちらの記事で解説しています。

まとめ|高山病を知り、備える

安全な登山のために高山病に備えるまとめのイメージ

高山病対策の中心は、事前のトレーニングそのものよりも登るペースと寝る標高の管理にあります。この記事のポイントを振り返ります。

  • 体力づくりは疲労をためずに歩き切るための準備。高山病を防ぐ主要因は登高速度と睡眠高度
  • SpO2は90%割り込みで要注意、80%未満で危険域(下界の目安)。数値と症状をあわせて判断する
  • 低酸素トレーニングマスクは呼吸筋トレーニングの器具であり、高地順応の代わりにはならない
  • 携帯酸素缶やサプリメントは一時的な補助。唯一確実な対処は高度を下げること
  • 持病がある方・不安がある方は、登山前に医師へ相談しておく

装備やグッズをそろえるだけで安心せず、行動中は自分と同行者の体調変化に注意を払い、迷ったら無理をしない判断を優先してください。次の山行の計画を立てるときに、この記事のポイントを見直してみてください。

出典

※数値は2026年8月14日時点で各公式・販売ページに記載の値です。個人差が大きい項目は目安として扱ってください。

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