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10月の第2土曜に丸をつけた。あとは山を決めるだけ——のはずが、検索するほど手が止まる。出てくる記事はどれも「全国20選」で、しかも更新日は去年の秋。その山が、自分が行けるその日に色づいているかどうかは、どこにも書かれていない。
紅葉が進むかどうかを決めているのは、山の名前ではなく気温である。日本気象協会 tenki.jp の解説(2020年10月15日公開)によれば、最低気温が8℃を下回ると色づきが進み始める。そして気温は標高で下がる。国際標準大気の値では対流圏の気温減率は0.65℃/100m(日本気象学会「天気」2017年)。登山の現場では標高100mにつき約0.6℃という丸めた数字がよく使われる。つまり「どの山か」より先に決まるのは「いつ、どの高さか」なのだ。
もうひとつ、秋の山を難しくしている数字がある。国立天文台 暦計算室によると、東京の日の入りは2026年9月15日が17:49、10月15日が17:06、11月15日が16:35。9月中旬から11月中旬までで74分、つまり1時間14分も早く暗くなる。紅葉が良くなる時期ほど、歩ける時間は短くなっていく。この記事は、その2つの数字から「今年の秋、自分はどこへ行けるのか」を自分で決めるための道具をまとめたものだ。
この記事でわかること
- 紅葉が進む気温の目安(最低気温8℃・5℃・0℃)と、標高で気温が下がる仕組みの読み方
- 行ける日が先に決まっている人向けの「標高×時期の見頃早見表」と、公式発表の探し方
- 日の入り時刻から逆算して出発時刻を出す計算式(下山完了=日の入り−1時間)
- 出発前に3分で終わる、紅葉登山の可否判定チェックリスト
紅葉の見頃は気温で決まり、その気温は標高で決まる
紅葉前線とは、葉の色づきが北から南へ、そして高いところから低いところへ順に降りていく、その進行の境目のことである。
桜前線が南から北へ上がるのに対し、紅葉前線は逆向きに降りてくる。この「降りてくる」という動きが、山を選ぶときにそのまま効いてくる。標高が上がれば気温は下がる。国際標準大気では対流圏の気温減率は0.65℃/100m と定められており、日本気象学会の学術誌「天気」(2017年、木村龍治「対流圏の気温減率はなぜ6.5K/kmなのか」)でもこの値が扱われている。登山の解説で広く使われる「100mで0.6℃」は、この値を扱いやすく丸めたものだ。
標高100mと言われてもピンと来ないかもしれない。一般的な階段の1段を約18cmとすると、100mはおよそ550段分。駅の長いエスカレーターを何本も乗り継ぐくらいの高さで、気温が0.6℃ずつ削られていく計算になる。標高1,000mの山なら、麓との差はおよそ6℃。標高2,000mを超える山では、麓が快適な秋日和でも山頂は真冬の入口に近い。
0.6℃と0.65℃、どちらが正しいのか
当サイトが調べた範囲では、気象庁が「標高100mで0.6℃下がる」と明記した解説ページは確認できなかった。公的性の高い数値として確認できたのは、国際標準大気の6.5K/km(=0.65℃/100m)を扱った日本気象学会「天気」2017年の記事のみである。実際の大気は湿り具合や天候で変わるため、0.6℃は「暗算しやすい目安」と考えておくのが安全だ。
同じ山の中でも、この差ははっきり現れる。みなかみ町観光協会が公表している谷川岳の紅葉情報(2025年シーズンの掲載内容)では、山頂の谷川岳肩ノ小屋周辺が9月20日頃、天神平〜天神峠が10月5日頃、麓の土合口駅〜天神平が10月中旬頃とされている。ひとつの山の上と下で、色づきの時期が3週間以上ずれるということだ。「谷川岳の紅葉」と一言で言っても、9月下旬に行くのと10月中旬に行くのとでは、見えている景色がまるで違う。
| 場所 | 公表されている見頃の目安 | 出典(発表元・年) |
|---|---|---|
| 涸沢カール(標高約2,300m) | 9月中旬頃から色づき始め、見頃は9月下旬〜10月上旬頃 | 上高地公式ウェブサイト(自然公園財団運営/2019年9月時点の記事) |
| 谷川岳 山頂(肩ノ小屋) | 9月20日頃 | みなかみ町観光協会(2025年シーズンの掲載内容) |
| 谷川岳 天神平〜天神峠 | 10月5日頃 | 同上 |
| 谷川岳 麓(土合口駅〜天神平) | 10月中旬頃 | 同上 |
| 那須岳 牛ヶ首〜姥ヶ平 | 2025年10月8日時点で「見頃」との実況 | 那須町観光協会 公式X(2025年10月8日投稿) |
| 大山(大山秋色週間) | 2025年は10月24日〜11月9日にイベント開催 | 大山観光局(2025年)※見頃発表ではなくイベント期間 |
| 高尾山 | 例年11月中旬〜12月上旬。2025年のもみじまつりは10月25日〜12月14日 | 八王子観光コンベンション協会(2025年) |
並べてみると、標高の高い順に日付が後ろへずれていくのがわかる。9月下旬の涸沢から始まり、12月に入ってようやく高尾山が終わる。日本の紅葉シーズンは、実質2か月半にわたって続いていることになる。なお、これらはいずれも各発表元が示した目安や実況であって、今年の同じ日を保証するものではない。当日の気温と天候で前後する前提で見てほしい。山ごとの気温の読み方は山の天気予報の見方をまとめた記事で詳しく扱っている。
麓の最低気温が8℃を切ったら、高い山は見頃入りの合図である
紅葉の進行サインとは、色づきが始まる/加速する/傷むという3段階を、最低気温という1つの数字で見分ける考え方のことである。
日本気象協会 tenki.jp が2020年10月15日に公開した解説によると、判断のラインは次の3つに整理できる。
- 最低気温が8℃を下回る日が出始める→ 色づきが進み始めるサイン
- 最低気温がさらに下がる日が続く → 色づきが一段と進む(具体的な追加の温度基準は出典記事に記載なし)
- 最低気温が0℃以下になる → 葉が色づかないまま黒く枯れてしまうことがある
ここに標高の話を重ねると、天気予報がそのまま紅葉予報に変わる。麓の街の最低気温が8℃まで下がった日、標高1,000m上の稜線では、単純計算でおよそ6℃低い2℃前後。すでに5℃を大きく下回っている。街の予報で「今朝は冷えましたね」と言われた翌週こそ、高い山が動くタイミングだと読めるわけだ。
結論
行き先を決める材料は、他人が書いた「見頃ランキング」ではなく、麓の最低気温の推移である。滞在予定エリアの最低気温が8℃を割った週は標高の高い山、5℃前後が続くようになったら中腹、街の紅葉が始まったら低山——この順で降りていけば、大きく外すことは少ない。
冷え込みすぎた年は色が出ない
最低気温が0℃を下回ると、葉が変色する前に枯れて黒くなることがある。急な冷え込みが入った年は「例年通りの日付なのに色が悪い」ということが起こりうる。日付だけを信じて長距離を移動する前に、必ず現地の観光協会や山小屋の直近の実況を確認してほしい。
編集部
編集部が毎年もどかしく思うのは、「見頃はいつですか」という質問に誰も正直に答えられないことです。気温次第なので、1か月前には誰にもわかりません。だからこの記事では日付を当てにいくのをやめて、直前の気温から判断する手順のほうを渡すことにしました。
行ける日が先に決まっているなら、標高帯から逆算する


山を先に決めて日程を合わせるのではなく、動かせない日程を起点に、その時期に見頃を迎えている高さの山を選ぶ。この手順を、この記事では逆算と呼ぶ。
仕事や家族の予定がある以上、多くの人にとって動かせないのは日付のほうだ。だったら順番を入れ替えればいい。以下は、前章で挙げた各発表元の公表内容を標高順に並べ直し、当サイトが「この時期ならこの高さ」という形に整理した早見表である。標高帯の区切りは公式発表ではなく、当サイトが公表事例から逆算した目安であることを先に断っておく。
| 行ける時期 | 狙う標高帯の目安 | 参考になる公表事例 | タイプ |
|---|---|---|---|
| 9月下旬〜10月上旬 | 標高2,000m以上の高山帯 | 涸沢カール(約2,300m)は9月下旬〜10月上旬が見頃/谷川岳山頂は9月20日頃 | 要体力 |
| 10月上旬〜中旬 | 標高1,500〜2,000m前後の山頂・中腹 | 那須岳の姥ヶ平一帯は2025年10月8日時点で見頃/谷川岳 天神平は10月5日頃 | 日帰り |
| 10月下旬〜11月上旬 | 標高1,000〜1,500m前後の山 | 大山では2025年に「大山秋色週間」が10月24日〜11月9日に開催 | 日帰り |
| 11月中旬〜12月上旬 | 都市近郊の低山・麓の渓谷 | 高尾山は例年11月中旬〜12月上旬が見頃 | 初心者 |
この表の使い方はシンプルだ。カレンダーで空いている日を見つけたら、まず行を選ぶ。次にその標高帯にある、自宅から通える範囲の山を候補に挙げる。最後にその山の地元自治体・観光協会の公式サイトで、直近の実況が出ていないかを確かめる。順番が逆——つまり憧れの山から入ると、たいてい日程が合わずに妥協することになる。
候補を挙げる段階では、地域を絞った記事が近道になる。たとえば中部圏から動くなら、岐阜県の紅葉登山スポットをまとめた地域編のように、エリア単位で標高と時期が並んでいる記事のほうが選びやすい。
「平年」を自分で調べる裏道
気象庁の生物季節観測は2021年1月に植物6種目9現象へ縮小されたが、「かえで(いろはかえで)の紅葉・落葉」と「いちょうの黄葉・落葉」は現在も観測が続いている。気象庁のデータページで各地の観測日を見れば、その土地の平年値と今年の進み具合を、誰かの体感ではなく記録として比べられる。麓の街の色づきがわかれば、そこから標高を足して山の状況を推測する足がかりになる。
下山時刻は日の入りから逆算し、出発時刻を計算で出す
登り始めの時刻を気分で決めず、その日の日の入り時刻から機械的に引き算して決める。ここではこの方法を下山逆算と呼ぶ。
秋の登山でいちばん怖いのは、実は寒さより時間切れだ。国立天文台 暦計算室の東京のデータでは、日の入りは2026年9月15日が17:49、10月15日が17:06、11月15日が16:35。ひと月ごとに40分前後ずつ削られていく。
| 日付(2026年・東京) | 日の入り | 9月15日との差 |
|---|---|---|
| 9月15日 | 17:49 | ±0 |
| 10月15日 | 17:06 | −43分 |
| 11月15日 | 16:35 | −74分(1時間14分) |
夏山の感覚のまま11月の山に入ると、最後の1時間強がまるごと闇に沈む。しかも山では稜線や尾根に日が隠れるぶん、暦の上の日の入りより早く薄暗くなる。上の数値は東京の値であり、西日本ではもう少し遅く、東日本の内陸ではもう少し早い。あくまで自分が行く土地の値を確認したうえで使ってほしい。
下山時刻の逆算式
①下山完了の目標時刻 = その日の日の入り時刻 − 1時間
②出発時刻 = 下山完了の目標時刻 − (地図のコースタイム × 1.2)
1.2倍は、休憩・写真・道迷いの戻りを織り込むための係数(当サイトの基準)。紅葉期は立ち止まる回数が増えるため、夏より余裕を厚く取る。
実際に当てはめてみる。10月15日、東京近郊、往復のコースタイムが6時間の山だとしよう。日の入りが17:06だから、下山完了の目標は16:06。コースタイム6時間に1.2を掛けると7時間12分。16:06から7時間12分を引くと、出発は8時54分となる。始発でなくても間に合う、と安心するか、駐車場の混雑を考えるともっと早い方がいい、と判断するか。どちらにせよ「なんとなく9時頃」より、はるかに強い根拠のある数字になる。
11月15日、コースタイム4時間の低山ならこうだ。日の入り16:35から1時間引いて、下山完了は15:35。4時間×1.2で4時間48分。出発は10時47分までとなる。低山でも昼前には歩き始めていないと危ういのが11月である。もし計算結果が「すでに過ぎている時刻」になったら、その日その山は選ばないというのが正解になる。
そして、計算した以上は保険も持つ。行動予定が日没ぎりぎりに寄る日ほど、ヘッドライトは救助待ちの道具ではなく、通常装備として最初からザックに入れておきたい。明るさや電池の考え方は登山用ヘッドライトの選び方の記事にまとめてある。
通常装備として入れておく1つがブラックダイヤモンドのアストロ300だ。救助を待つための道具ではなく、自分で歩いて下りるための道具という位置づけで持つ。明るさと電池の考え方は、メーカーが公表値を出しているかどうかで選ぶのが確実だ。
道迷いは遭難態様の最多である
警察庁「令和7年における山岳遭難の概況等」(令和8年6月18日公表)によると、2025年の山岳遭難は全国で3,122件、遭難者は3,623人、うち死者・行方不明者は332人。態様別では道迷いが30.9%(1,119人)で最も多く、転倒19.2%、滑落17.3%と続く。暗くなってから地形が読めなくなることは、この最多要因を直接引き寄せる。安全に関する最終的な判断は、現地の警察・自治体・山岳団体などの公的な情報と、専門家の助言に従ってほしい。
出発前の可否判定は、チェックリストで3分で終わらせる
行くか行かないかを当日の気分ではなく、前夜のうちに決めておく。この確認手順を、ここでは可否判定と呼ぶ。
装備を詰めたあと、寝る前にこのリストを通してみてほしい。すべてに「はい」と言えないなら、山を変えるか、日を変えるか、コースを短くする。それだけの話だ。
- 行き先の直近の色づき状況を、地元自治体か観光協会の公式発表で確認した
- 当日の麓の最低気温と、山頂付近の推定気温(麓の気温 − 0.6℃×標高差÷100)を出した
- その日の日の入り時刻を調べ、下山完了の目標時刻を決めた
- コースタイム×1.2で計算した出発時刻に、実際に間に合う交通手段がある
- ヘッドライト(予備電池つき)をザックに入れた
- 行動中に体を温められる飲み物か食べ物を用意した
- 登山届を提出し、家族や友人に行き先と下山予定時刻を伝えた
- 撤退ラインを決めた(この時刻までに山頂に着かなければ引き返す、という時刻)
- 駐車場が満車だった場合の代替案を1つ持っている
「低山だから大丈夫」は通用しない。同じ警察庁資料によれば、高尾山だけで2025年に106人が遭難しており、これは5年平均の101.4人と比べて4.5%多い。ケーブルカーがあり、山頂に売店があり、観光地として扱われる山でも、この人数が動いている。自分の体力と山の難しさの釣り合いを事前に見たいなら、山のグレーディング表で体力度と難易度を確認する方法を先に押さえておくと、候補を絞る速度が上がる。
もうひとつ、秋ならではの確認事項がある。クマの活動である。秋は冬眠前の採食期にあたり、実りを求めて行動範囲が広がる時期とされる。人の少ない早朝や薄暮の時間帯に単独で歩く計画なら、登山のクマ対策をまとめた記事を読んでから出発日を決めたほうがいい。
編集部
撤退ラインだけは、必ず「時刻」で決めてください。「疲れたら戻る」は判断を先送りしているだけで、疲れている人ほど戻る決断ができなくなります。13時に山頂に着いていなければ引き返す、と紙に書いてポケットに入れておく。これが編集部としていちばん強く勧めたい習慣です。
紅葉期の装備は、朝晩の冷え込みを基準に組み直す
紅葉期の装備とは、日中の快適さではなく、歩き始めの早朝と、日が傾いてからの下山時に合わせて選ぶ装備のことである。
数字で見ると事情がはっきりする。麓の街が15℃の日、標高差が2,270mある場所(たとえば涸沢カールの標高約2,300mと平地との差)では、0.6〜0.65℃/100m で計算して気温差はおよそ13.6〜14.8℃。単純計算で0〜2℃前後まで下がりうる。実際には天候や風でさらに体感が落ちる。半袖で駅を出た人が、数時間後には冬の服装を必要としている、という落差だ。当日の実際の気温は、必ず気象庁の実況や山岳の予報で都度確認してほしい。
つまり、秋の山で問われるのは「厚い服を1枚持つか」ではなく「脱ぎ着で細かく調整できるか」になる。登りで汗をかき、山頂で止まって冷え、下りでまた汗をかく。この上下動に対応できないと、濡れた服のまま気温の低い時間帯に入ることになり、体温を大きく削られる。具体的なレイヤリングの組み方は秋の登山の服装をまとめた記事に譲るが、原則は「汗を溜めない」ことに尽きる。
服の次に効くのが、体の内側から温める手段だ。休憩のたびに温かい飲み物を口にできるかどうかで、山頂の滞在時間の質は大きく変わる。写真を撮るために15分立ち止まる、その15分を耐えられるかどうか、という話でもある。保温ボトルは中身も含めて500mlペットボトル1本分ほどの荷物が増えるが、増えるのはその程度で、削られずに済む体温のほうがはるかに大きい。
保温ボトルの定番がサーモスの山専用ステンレスボトル FFX-502だ。公式値は容量0.5L・本体重量0.28kg・保温効力6時間で77℃以上・口径3.6cm(2026年8月9日にサーモス公式で確認)。朝に熱湯を入れれば、昼の休憩でまだ湯気が立つ温度が残る計算になる。
手袋と替えの靴下は、荷物の中で最も軽い保険
末端の冷えは、判断力と手先の細かい作業に直結する。ザックのファスナーが開けられない、地図が畳めない、という状態は、寒い山では珍しくない。薄手の手袋1組と替えの靴下1足は、重量あたりの効果が大きい装備として最初に入れておきたい。
この選び方が向かない人・当てはまらないケース
当てはまらないケースとは、ここまでの逆算手順が前提としている条件(日帰り・標高で気温が下がる・日の入りが行動の上限)から外れる状況のことである。
- 山小屋泊やテント泊で複数日を歩く人:日の入りを行動の上限にする前提が変わる。夜間の冷え込みや小屋の営業期間など、日帰りとは別の検討事項が主役になる。
- 紅葉そのものより山頂到達が目的の人:色づきに日程を合わせる意味が薄く、天候と体調で日を選ぶほうが合理的である。
- ロープウェイやケーブルカーで展望台まで上がる観光目的の人:歩行のコースタイム計算が不要なので、逆算は運行時刻表を見るだけで足りる。
- 海沿いや南西諸島など、標高差の小さい地域で紅葉を探している人:標高で気温を稼ぐ考え方が使えず、緯度と平地の気温推移で判断することになる。
- 持病がある方、小さな子ども連れ、体力に不安がある方:気温差や行動時間の負荷は個人差が大きい。参加の可否については、かかりつけ医や公的機関の情報、経験のあるガイドの判断を優先してほしい。この記事は医学的・専門的な助言に代わるものではない。
秋の山行は「天気・体力・装備」の3本で外堀を埋める
外堀を埋めるとは、当日の現場で判断に迷う場面を、事前に読める情報で減らしておく作業のことである。
ここまでの逆算を実行に移すとき、下調べの中身は次の4本に整理できる。行き先を絞る段階では岐阜県の紅葉登山の地域編、当日の気温を読む段階では山の天気予報の見方、自分に登れるかを測る段階では山のグレーディング表。そして装備は秋の登山の服装とヘッドライトの選び方、秋のリスク管理として登山の熊対策を押さえておけば、当日に慌てる要素はかなり減る。
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よくある質問に答える
Q. 今年の紅葉の見頃はいつですか?
A. 特定の山の見頃日を、シーズン前に言い当てることはできません。色づきは気温で進むためです。判断材料としては、麓の最低気温が8℃を下回り始めたか(日本気象協会 tenki.jp、2020年)、行き先の観光協会が直近の実況を出しているか、の2点を見てください。過去の傾向としては、涸沢カールが9月下旬〜10月上旬、高尾山が11月中旬〜12月上旬というように、標高の高い順に見頃が降りてきます。
Q. 現地に着いたら紅葉が終わっていました。どうすればよかったですか?
A. 標高を下げるのが基本の対処です。谷川岳のように、山頂が9月20日頃・麓が10月中旬頃と、同じ山の中で3週間以上の差がある例もあります。山頂で散っていても、中腹や登山口周辺ではこれから、という状況は普通に起こります。行く前に「上がダメなら下、下がダメなら隣の谷」と代替案を1つ用意しておくと、移動が無駄になりません。
Q. 初心者でも紅葉登山はできますか?
A. できます。ただし秋は日没が早く、11月中旬の東京の日の入りは16:35(国立天文台、2026年)で、9月中旬より1時間14分も早くなります。まずコースタイムの短い山を選び、この記事の逆算式で出発時刻を計算し、その時刻に間に合うかどうかで判断してください。なお警察庁の統計では、2025年に高尾山だけで106人が遭難しています。観光地として知られる山でも準備は必要です。
Q. どのくらい前に予定を決めればいいですか?
A. 山と日付は早めに仮決めして構いませんが、最終確定は直前の気温を見てからにするのが現実的です。交通や宿の予約が必要な場合は、候補を標高違いで2つ持っておき、直前の実況で近いほうを選ぶ形にすると外しにくくなります。
Q. 山の上の気温は、どうやって見積もればいいですか?
A. 「麓の気温 − 0.6℃ ×(標高差÷100)」で概算します。標高差1,000mならおよそ6℃低い計算です。国際標準大気の正式な値は0.65℃/100m(日本気象学会「天気」2017年)で、0.6℃は暗算しやすいように丸めた目安です。実際の気温は湿度・風・天候で変わるため、当日は気象庁の実況値と山岳向けの予報を必ず確認してください。
まとめ:今日やることは「日の入り時刻を調べる」1つでいい
紅葉登山で失敗する原因の多くは、山選びのセンスではなく、時間と気温の見積もりにある。逆に言えば、この2つを数字で押さえた人は、有名な山を知らなくても外さない。
今日やることは1つだけ。行きたい日の日の入り時刻を調べることだ。そこから1時間引けば下山完了の目標が決まり、コースタイム×1.2を引けば出発時刻が決まる。その時刻に間に合わない計画は、そもそも成立していない、と先にわかる。
編集部
紅葉は待ってくれませんが、山は来年もあります。「今年はここまで」と決められる人が、いちばん長く山を楽しんでいる、というのが編集部の見立てです。
- 行ける日を1つ決め、その日の日の入り時刻を国立天文台のページで調べる(下山完了=日の入り−1時間)
- 早見表でその時期の標高帯を選び、自宅から通える候補の山を2つ挙げる(標高違いで2つ)
- 候補の山の観光協会・自治体の公式サイトをブックマークし、出発の3日前に実況を確認して最終決定する
秋の山をもっと絞り込む
参考・出典
- 日本気象学会「天気」64巻3号(2017年)木村龍治「対流圏の気温減率はなぜ6.5K/kmなのか」 https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2017/2017_03_0015.pdf(2026年8月6日確認)
- 日本気象協会 tenki.jp「季節・暮らしの話題」徳野大地(2020年10月15日)紅葉と最低気温の関係 https://tenki.jp/suppl/d_tokuno/2020/10/15/30023.html(2026年8月6日確認)
- 国立天文台 暦計算室「日の出入り@東京」2026年9月 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/2026/s1309.html(2026年8月6日確認)
- 国立天文台 暦計算室「日の出入り@東京」2026年10月 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/2026/s1310.html(2026年8月6日確認)
- 国立天文台 暦計算室「日の出入り@東京」2026年11月 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/2026/s1311.html(2026年8月6日確認)
- 気象庁「生物季節観測の情報」(かえで紅葉・いちょう黄葉の観測継続について) https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/(2026年8月6日確認)
- 警察庁「令和7年における山岳遭難の概況等」(令和8年6月18日公表) https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/r07_sangakusounan_gaikyou.pdf(2026年8月6日確認)
- 上高地公式ウェブサイト(一般財団法人自然公園財団運営)涸沢の紅葉について(2019年9月2日掲載) https://www.kamikochi.or.jp/enjoy/feature/3213/(2026年8月6日確認)
- 八王子観光コンベンション協会「高尾山もみじまつり」(2025年) https://www.hkc.or.jp/takaosan/momiji_fes/(2026年8月6日確認)
- みなかみ町観光協会「紅葉情報」(谷川岳の見頃目安・2025年シーズンの掲載内容) https://www.enjoy-minakami.jp/koyo(2026年8月6日確認)
- 大山観光局「大山秋色週間」(2025年10月24日〜11月9日) https://tourismdaisen.com/info/kanko/daisen-kouyou2024-copy/(2026年8月6日確認)
- 那須町観光協会 公式X 投稿(2025年10月8日/牛ヶ首〜姥ヶ平の紅葉実況) https://x.com/nasukankou/status/1975804932864549028(2026年8月6日確認)
