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稜線から見下ろす紅葉、雲海の上に頭を出した峰、朝日に染まる雪面。ドローンがあれば撮れる、と考えたことのある登山者は少なくないはずです。ところが「登山 ドローン 飛ばせる」で検索を始めると、航空法の解説だけで終わっているページと、国立公園の話だけで終わっているページに分かれていて、読み終えても自分の行き先について結論が出ません。
結論が出ない理由ははっきりしています。登山でドローンを飛ばせるかどうかは、ひとつの法律だけでは決まらないからです。航空法が決めているのは「日本の空をどう飛ぶか」であって、「その土地に入ってよいか」「そこで機材を使ってよいか」までは決めていません。逆に国立公園の案内は土地の使い方についての話で、空域や飛行方法の話はしていません。両方を見て、はじめて答えが出ます。
この記事では、確認すべきことを①機体の重さ②空域③飛行の方法④土地の管理者の4つに分解します。4つは互いに独立していて、どれかひとつでも引っかかれば飛ばせません。逆に言えば、4つを順に潰していけば、自分の行き先について「誰に聞けば決着がつくのか」までは必ずたどり着けます。なお本記事は、個別の山について飛ばしてよい・だめという断定をしません。書けるのは制度の形と、確認の順番までです。
- 登山でドローンを飛ばせるかを決める4つの軸(機体の重さ/空域/飛行の方法/土地の管理者)と、確認する順番の理由
- 航空法上の無人航空機の定義(第2条第22項)と、国土交通省の運用で規制対象とされる100g以上という基準の関係
- 飛行禁止空域の根拠条文(第132条の85第1項第1号・第2号)と、150m以上・空港周辺・緊急用務空域・人口集中地区という具体例
- 飛行の方法の原則(第132条の86第1項第1〜4号)と、目視外・30m未満などで地方航空局長の承認が要る仕組み
- 国立公園は法律で一律禁止ではないこと、そのうえで日光・大雪山松仙園・小谷村・高尾など公園や自治体ごとに個別の禁止・許可制がある実例(2026年8月29日確認)
- 機体登録・リモートIDの制度がDIPS2.0で扱われていることと、変わりやすい部分を自分で最新確認する導線
- 飛ばせない・確認が取れない場面で、地上から撮るために持ち替える道具の考え方
- 出発前に誰へ・いつまでに・何を聞くかのチェックリストと、当日に中止を決める基準
登山でドローンを飛ばせるかは、4つを別々に確認して決まる
最初に全体像を置きます。ドローンを山で飛ばそうとするとき、あなたの前には性質のまったく違う4種類のルールが同時に立っています。ひとつは国が定めた航空法で、これは日本全国の空に一律にかかります。もうひとつは自然公園法などの土地の制度で、これは場所ごとにかかります。さらにその上に、土地の所有者や施設の管理者が独自に定めているルールが乗ります。最後に、機体そのものが登録済みかという、モノの側の要件があります。
この4つは上下関係ではなく、並列の関門だと考えてください。航空法をすべてクリアしていても、その土地の管理者が禁止していれば飛ばせません。逆に、管理者が「うちは構いません」と言ったとしても、そこが空港周辺の禁止空域なら航空法違反になります。片方の許可がもう片方を免除することはありません。
編集部の見立て:上位に出てくる記事が読みにくいのは、書き手がこの4つを混ぜて書いているからだと考えています。混ざったまま読むと「結局どっちなの」で終わります。分けて読めば、それぞれの確認先が違うことが分かり、調べる相手がはっきりします。
確認の順番にも意味があります。おすすめは、①機体の重さ→②空域→③飛行の方法→④土地の管理者、の順です。①と②は機材と地図さえあれば自宅で完結し、しかも早い段階で「そもそも無理」が判明します。④は電話や問い合わせフォームを使うため、相手の営業時間に左右され、返事に日数がかかることがあります。自分だけで潰せるものを先に潰し、人に聞くものを最後に回すと、無駄な問い合わせをせずに済みます。
| 軸 | 何が決まるか | 根拠の出どころ | 確認先 | 確認のタイミング |
|---|---|---|---|---|
| ① | 機体の重さ。登録・登録記号表示・リモートIDの要否 | 航空法第2条第22項、第132条の2ほか。具体的な重量基準は国土交通省令・国交省の運用解説 | 国土交通省の無人航空機ページ、DIPS2.0、機体の仕様表 | 機体を買う前・買った直後 |
| ② | その場所の上空が飛行禁止空域かどうか | 航空法第132条の85第1項第1号・第2号 | 国土交通省の飛行ルールページ、地方航空局・空港事務所 | 行き先を決めた時点 |
| ③ | どう飛ばすか。日中・目視内・30m・催し場所上空の原則 | 航空法第132条の86第1項第1〜4号 | 国土交通省の飛行ルールページ、地方航空局長への承認申請 | 撮影プランを立てる時点 |
| ④ | その土地で機材を使ってよいか。離着陸してよいか | 自然公園法の制度、国有林の入林手続き、自治体の条例・要綱、土地所有者のルール | 国立公園の担当事務所、森林管理署、市町村、施設・土地の管理者 | 出発の数日〜2週間前 |


4分解の原則:①重さ・②空域・③方法・④土地の管理者は、それぞれ別の制度から出てきています。①〜③は航空法の系統で、確認先は国土交通省とDIPS2.0。④は土地の制度と管理者の系統で、確認先は環境省の各事務所・森林管理署・市町村・所有者です。1か所に聞けばすべて分かる窓口は存在しません。
「面倒だ」と感じたなら、その感覚は正しいです。ただ、面倒なのは最初の1回だけで、2回目からは②と③はほとんど使い回せます。毎回ゼロから調べ直すことになるのは④だけです。秋の撮影を目的に山を歩く計画そのものの立て方は、秋の紅葉を撮りに行く登山の時間配分と装備の記事でまとめています。ドローンを持つかどうかにかかわらず、撮影目的の山行は行動時間の組み方が普通の登山と変わります。
編集部の見立て:ドローンの話は「禁止か、禁止でないか」の二択で語られがちですが、実際に多いのは「禁止でもないが、管理者が確認を求めている」という中間の状態です。この中間をどう処理するかが、実際には一番よく出てくる場面だと考えています。
①機体の重さで変わること:100g未満と100g以上
最初の関門は機体そのものです。航空法第2条第22項は無人航空機を、航空の用に供することができる機器であって、構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるものと定義しています。ただし条文には、国土交通省令で定めるものを除く、という書き方が入っています。つまりどこからが無人航空機かという線は、法律本文ではなく省令の側に置かれています。
その省令にもとづく現行の運用では、規制の対象となるのは100g以上の機体です。国土交通省の公表資料では、この100gの判定は機体本体とバッテリーの合計で行い、他の取り外し可能な付属品は含めないとされています(国土交通省の公表資料、2026年8月29日確認)。カメラ用のフィルターやプロペラガードを外して量れば軽くなる、といった話ではありません。
100gという数値そのものは航空法の条文に書かれているわけではなく、法律が基準を国土交通省令に委ねた結果として運用上の線になっています。だから条文を引くときは「航空法第2条第22項の定義+省令の基準」という二段構えで理解しておくと、制度が改正されたときに何が変わったのかを追いやすくなります。
編集部の見立て:ここを「航空法に100gと書いてある」と覚えてしまうと、基準が動いたときに気づけません。数値は運用側にある、と覚えておくほうが安全です。
では100g未満なら何をしてもよいのかというと、そうではありません。100gという線が効くのは、あくまで航空法の無人航空機に関する規制の入口の話です。土地の管理者が定めているルールは、機体の重さを条件にしていないことがほとんどです。国立公園の担当事務所が「園地や歩道での飛行は自粛してほしい」と案内しているとき、その案内は99gの機体を除外していません。
「100g未満のトイドローンだから登録も要らないし、どこで飛ばしても問題ない」という理解は、4つの軸のうち①だけを見た結論です。④の土地の管理者のルールは重量と無関係に効きます。軽い機体を選んだことで免除されるのは登録などの手続きであって、その場所で飛ばしてよいかどうかの判断ではありません。
| 確認項目 | 100g未満の機体 | 100g以上の機体 | 出どころ |
|---|---|---|---|
| 航空法の無人航空機に当たるか | 国交省の運用解説では規制対象外とされている | 規制対象 | 航空法第2条第22項+国土交通省の公表資料 |
| 重さの数え方 | ― | 機体本体+バッテリーの合計。取り外し可能な他の付属品は含めない | 国土交通省の公表資料(2026年8月29日確認) |
| 飛行前の登録 | 無人航空機としての登録義務の対象外 | 登録原簿への登録が必要。オンライン窓口はDIPS2.0 | 航空法第132条の2、国土交通省ドローン情報基盤システムの案内 |
| 土地の管理者のルール | 重さと無関係にかかる | 重さと無関係にかかる | 各公園・自治体・所有者の案内 |
山に持って入る機体を選ぶ段階でもうひとつ考えておきたいのが、重さの負担です。100g未満の機体は登録の手間が減るぶん、風に弱い傾向があります。稜線は風が抜ける場所で、地上の予報が穏やかでも吹き上げが強いことは珍しくありません。手続きの軽さだけで機体を選ぶと、現地で結局飛ばせない、ということが起こります。この点はあとの当日判断の節でもう一度扱います。
編集部の見立て:重量区分は「手続きが要るか」を決めるだけで、「安全に飛ばせるか」は何も保証しません。軽い機体ほど気象条件に対する余裕が小さい、という別軸があることは押さえておきたいところです。
②空域で変わること:航空法が定める飛行禁止空域
2つ目の軸は空域です。航空法第132条の85第1項は、無人航空機を飛行させてはならない空域を定めています。第1号が、航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域。第2号が、人または家屋の密集している地域の上空です。ここでも具体的な範囲は省令に委ねられています。
国土交通省の飛行ルールの説明では、この禁止空域の具体例として、空港等の周辺の上空、緊急用務空域、地表または水面から150m以上の高さの空域、そして人口集中地区の上空が挙げられています(2026年8月29日確認)。登山者にとって関係が深いのは、このうち150mと緊急用務空域の2つです。
編集部の見立て:150mという数字は、山では思っているより早く到達します。稜線から谷へ向けて機体を出すと、機体の高度計が示す値と、真下の地表からの高さは一致しません。ここを軽く見ている解説記事が多いと感じています。
高さの基準は地表または水面から150m以上と書かれています。海抜高度でも、離陸地点からの相対高度でもありません。山の斜面の上を飛ばすとき、機体の直下の地面は刻々と下がっていきます。稜線に立って高度50mまで上げ、そのまま水平に谷側へ移動させれば、機体の位置は変わらなくても直下の地表との差は数百メートルに広がります。禁止空域に入るかどうかは、この直下との関係で決まります。
山岳地形では、離陸地点を基準にした高度表示だけを見て飛ばすと、意図せず地表から150m以上の空域に入ることがあります。稜線から谷側へ機体を出す動きは、水平移動しかしていないつもりでも、直下の地表からの高さを一気に増やす操作です。谷へ出す動きを含むプランは、高さの管理が難しくなることを前提に組む必要があります。
緊急用務空域は、災害が発生した際などに、捜索や救助といった緊急用務を行う航空機の飛行が想定される場合に設定される空域です。山では、遭難者の捜索でヘリコプターが飛ぶ状況がこれにあたりえます。設定は状況に応じて行われるため、前日に調べた情報が当日そのまま使えるとは限りません。出発前と、可能であれば現地でも、国土交通省の公表を確認する必要があります。
人口集中地区は、国勢調査の結果から一定の基準にもとづいて設定される地区です。国勢調査は5年ごとに行われるため、区域も更新されます(国土交通省の飛行ルール説明、2026年8月29日確認)。登山口が集落の中にある場合、山の上ではなく登山口の駐車場のほうが該当する、という順序になることがあります。
| 禁止空域 | 内容 | 登山での出方 | 例外の取り方 |
|---|---|---|---|
| 空港等の周辺 | 空港等の周辺の上空として設定される空域 | 低山・里山で空港が近い地域では該当しうる | 国土交通大臣の許可。申請先は飛行エリアを管轄する地方航空局・空港事務所 |
| 緊急用務空域 | 緊急用務を行う航空機の飛行が想定される場合に設定される空域 | 遭難・災害の発生時に設定されうる。当日変わる | 同上。ただし性質上、設定中は飛ばさない判断が現実的 |
| 地表または水面から150m以上 | 高さの基準は直下の地表・水面からの差 | 稜線から谷側へ出す動きで超えやすい | 同上 |
| 人口集中地区の上空 | 人または家屋の密集している地域の上空(第2号) | 登山口の集落・駐車場側で該当することがある | 同上 |
これらの空域で飛ばすには、原則として国土交通大臣の許可が必要になります。申請先は、飛行させようとするエリアを管轄する地方航空局または空港事務所です。登山の撮影のために許可を取ることが不可能というわけではありませんが、申請から結論までには時間がかかります。週末の思いつきで取れる性質のものではない、という前提で計画してください。
編集部の見立て:登山でドローンを使うなら、禁止空域は「許可を取って入るところ」ではなく「行き先の候補から外すところ」と考えるほうが実務的です。許可申請の手間に見合う撮影は、山ではそう多くありません。
③飛行の方法で変わること:日中・目視内・30mの原則
3つ目の軸は、どこで飛ばすかではなく、どう飛ばすかです。航空法第132条の86第1項は、飛行の方法についての原則を定めています。第1号から第4号までの内容は、日出から日没までの間に飛行させること、無人航空機とその周囲を目視により常時監視して飛行させること、地上または水上の人または物件との間に国土交通省令で定める距離を保って飛行させること、催し場所の上空での飛行を避けること、です。
3つ目の「省令で定める距離」が、一般に30mとして知られている基準です。ここでも数値そのものは省令の側にあり、条文には距離の数字が書かれていません。国土交通省の説明では原則30mとされています(2026年8月29日確認)。30mは人との距離だけでなく、物件との距離でもある点は、山では見落とされやすいところです。
編集部の見立て:登山道でこの3つを同時に満たすのは、思っているより難しいと考えています。目視内で常時監視しながら、人と物件から30m離し、しかも日没前に片づける。稜線でこれを成立させるには、場所の条件がかなり限られます。
目視内の要件から順に見ていきます。目視により常時監視するとは、飛行させている人が自分の目で機体と周囲を見続けるということです。カメラの映像をモニター越しに見ている状態は、これに当たりません。山では、尾根の陰、樹林、ガスによって機体が見えなくなる場面が頻繁に発生します。谷を挟んだ向こう側の斜面を狙う構図は、距離的にも地形的にも目視の維持が難しくなります。
日出から日没までという時間の条件も、山では扱いが独特です。朝日や夕景を狙うと、条件のよい光の時間帯は日出・日没の前後に寄ります。撮りたい時間と飛ばしてよい時間が、必ずしも重なりません。行動計画を組むときは、日出後・日没前のどちら側に寄せるかを先に決めておくと、現地で迷いません。
人と物件から30mという条件は、混み合う登山道では成立しません。紅葉の週末に展望地で機体を出せば、30m以内に人がいない状態を保つのは現実的でないでしょう。物件についても、山小屋、標識、電波塔、送電線、避難小屋などが対象になりえます。「人がいないから大丈夫」ではなく、周囲に人工物があるかどうかも合わせて見る必要があります。
登山道は不特定の人がいつ来るか分からない場所です。飛ばし始めた時点で30mが確保できていても、5分後に登ってきた人が範囲に入ることがあります。人と物件の距離は、飛行開始時点の状態ではなく飛行中ずっと満たし続ける条件です。すぐ降ろせる高さ・位置で飛ばすか、そもそも人の来ない時間帯・場所を選ぶかの判断になります。
重要なのは、これらの原則から外れる飛ばし方が一律に禁止されているわけではない、という点です。目視外の飛行、30m未満の距離での飛行、催し場所の上空での飛行などは、原則として地方航空局長の承認を受けることで可能になります。技能証明や機体認証の制度による例外もあります。「絶対に飛ばせない」ではなく「原則として不可、承認があれば可能」という構造です。
| 原則 | 条文の内容 | 山で崩れやすい場面 | 外れる場合の手続き |
|---|---|---|---|
| 日中の飛行 | 日出から日没までの間に飛行させる(第1号) | 朝焼け・夕景を狙うと時間帯が外れる | 原則として地方航空局長の承認 |
| 目視内飛行 | 無人航空機とその周囲を目視により常時監視する(第2号) | 尾根の陰・樹林・ガス、谷を挟んだ構図 | 原則として地方航空局長の承認 |
| 人・物件と30m | 地上または水上の人・物件との間に省令で定める距離を保つ(第3号)。国交省の説明では原則30m | 展望地の混雑、山小屋・標識・送電線の近く | 原則として地方航空局長の承認 |
| 催し場所上空の回避 | 催し場所の上空での飛行を行わない(第4号) | 山開き・登山イベント・山岳マラソンの会場 | 原則として地方航空局長の承認 |
②と③の違い:②の空域は「そこに入れるかどうか」を場所で決める話で、許可の相手は国土交通大臣(申請先は地方航空局・空港事務所)。③の方法は「どう飛ばすか」を行為で決める話で、承認の相手は地方航空局長です。似た手続きに見えますが別の制度なので、片方だけ済ませても、もう片方は満たされません。
④土地の管理者で変わること:国立公園・国有林・自治体・私有地
ここからが、航空法の解説記事では触れられない領域です。空を飛ぶ許可が下りていても、その土地に立ち入って離陸させる行為、そこで機材を使う行為は別の話になります。山では、ひとつの登山ルートの上に複数の管理主体が重なっていることが普通です。
まず自然公園法の側から確認します。環境省関東地方環境事務所の案内によれば、国立公園内でのドローンの飛行や離着陸そのものは、自然公園法上、許可申請や届出が必要な行為ではないとされています(2026年8月29日確認)。これが制度の土台です。法律のレベルでは、国立公園だから一律に禁止という規定は置かれていません。
編集部の見立て:ここが最も誤解されている箇所だと考えています。「国立公園はドローン禁止」と書いてある解説は珍しくありませんが、環境省の事務所の案内はそうなっていません。禁止しているのは法律ではなく、その上に乗る管理者側のルールです。
ただし同じ案内は、続けて重要なことを書いています。土地や施設の管理者等が独自に飛行を禁止している場合があるため事前の確認が必要であること。そして、利用者が集中する場所、宿泊施設、露天風呂の周辺などでは飛行の自粛を要請していることです。つまり法律の側に規定がないぶん、判断は管理者側に委ねられている、という構造になっています。
同じ案内では、国有林での活動には入林届が必要であること、環境省が所管する国有地については管理規則や個別の措置を確認する必要があることも示されています(2026年8月29日確認)。国立公園の区域と国有林の区域は重なっていることが多く、「国立公園の事務所に聞いたから終わり」にはなりません。
土地の管理者を先に特定してから聞く、という順序は、山でのルールを調べるときに共通して使える型です。同じ考え方は採取のルールにも当てはまります。山で山菜やきのこを採るときの法律と土地の管理者の調べ方では、行き先の土地が誰のものかを特定してから窓口に当たる手順を扱っています。ドローンで確認する相手は、そこで説明している相手とほぼ同じです。
- 行き先が国立公園・国定公園・都道府県立自然公園のいずれかの区域に入っているかを地図で確かめたか
- そのルート上に国有林が含まれるかを確かめ、含まれるなら所管の森林管理署を調べたか
- 登山口の駐車場・園地・歩道の管理者が、公園の事務所とは別の主体になっていないかを確かめたか
- 市町村が独自の条例・要綱でドローンを扱っていないかを、行き先の市町村サイトで検索したか
- 山頂や特定区間の土地が私有地・社寺の所有になっていないかを確かめたか
最後の項目は見落とされやすい部分です。山の土地は必ずしも国や自治体のものではありません。社寺や個人、企業が所有している区間があり、その所有者が定めたルールは法令とは別に効きます。所有者のルールに従わなかった場合、航空法違反にはならなくても、立入りや利用をめぐる別の問題になります。
④で効いているものの正体:「法律で禁止されていないのだから飛ばしてよい」という理屈は、④の軸を無視しています。土地の管理者が求めているのは法令上の許可ではなく、その土地の使い方についての合意です。法令の話に持ち込んでも、そこで飛ばしてよいことにはなりません。
編集部の見立て:④は電話が一番早いです。サイトを探し続けても書かれていないことが多く、書かれていない=許されている、とは読めません。管轄の事務所に一本かけたほうが、30分の検索より確実だと考えています。
国立公園は一律ではない:公園ごとの案内を確認する
前の節で、法律のレベルでは一律禁止ではないと書きました。ではどうなっているのか。ここでは、2026年8月29日時点で公表を確認できた実例を、公園名と窓口つきで並べます。同じ「国立公園」でも扱いがまったく違うことが見て取れるはずです。なお以下は確認できた範囲の例であって、全国の一覧ではありません。
日光国立公園では、那須平成の森について、原則としてドローンの使用を禁止する旨が示されています。同じ日光国立公園でも、日光湯元や光徳については、国立公園の管理上必要な個別の措置を要する場合があるとして、事前の問い合わせを求める案内になっています(環境省の日光国立公園の掲載、2026年8月29日確認)。ひとつの国立公園の中で、地区ごとに扱いが分かれている例です。
編集部の見立て:この一例だけでも「国立公園ではドローン禁止」という一般化が成り立たないことが分かります。逆に「国立公園は禁止されていない」という一般化も同じくらい危ういです。単位は公園ではなく地区です。
中部山岳国立公園、上信越高原国立公園、妙高戸隠連山国立公園の3公園については、飛行しようとする場所の担当事務所へ事前に連絡し、飛行できる区域、日時、地域ごとのルールを確認するよう案内されています(環境省中部地方環境事務所信越自然環境事務所の掲載、2026年8月29日確認)。あわせて、宿泊施設・露天風呂・園地・歩道などでの飛行の自粛と、希少な野生生物の営巣が確認されている場所とその周辺での飛行の自粛が要請されています。
営巣地への配慮は、季節によって重みが変わります。繁殖期に営巣地の近くで機体を飛ばせば、親鳥が巣を離れる原因になりえます。区域が公表されていない場合もあるため、事前連絡の際に「この時期にこの区域で配慮すべき場所はあるか」を具体的に聞くと、公表資料からは分からない情報が得られます。
自治体が独自に踏み込んでいる例もあります。長野県小谷村は、中部山岳国立公園および妙高戸隠連山国立公園の村内区域について、原則としてドローンの飛行を禁止するとし、許可の手続きの窓口を村の観光農林課観光商工係としています(村の掲載、ページ更新日2026年3月31日、2026年8月29日確認)。国の案内が「事前連絡を」と言っている区域について、村が「原則禁止・許可制」を敷いているという重ね方です。
レイヤーの重なり方:土台に自然公園法(飛行そのものに許可・届出の規定はない)があり、その上に環境省の各事務所による自粛要請・事前連絡の案内が乗り、さらにその上に自治体の禁止・許可制や土地所有者のルールが乗ります。上の層は下の層を打ち消すのではなく、追加でかかります。一番上まで確認して、はじめて答えが出ます。
大雪山国立公園では、松仙園について、ドローンの飛行が望ましくないとしたうえで、学術研究等で必要な場合には上川総合振興局南部森林室への連絡や林野庁の承認申請といった手続きを案内する資料が公表されています(環境省の公表資料、2026年8月29日確認)。ここで注意したいのは、これが松仙園という地点についての案内であって、大雪山国立公園全体を一律に規制するものではないという点です。地点の案内を公園全体の規制として読み替えないでください。
編集部の見立て:この松仙園の例は、窓口が環境省ではなく森林室・林野庁の側に案内されている点が示唆的です。公園の中でも、土地の所管が違えば聞く相手が変わります。「国立公園だから環境省」で止まると、たどり着けません。
国定公園・都道府県立自然公園の側にも例があります。東京都の高尾陣場地区自然公園(明治の森高尾国定公園と都立高尾陣場自然公園)については、公共目的・防災目的以外でのドローンの使用の自粛が要請されており、目的に当てはまる場合であっても地権者や管理者等の了解を求める案内になっています(東京都の掲載、2026年8月29日確認)。首都圏から近く、登山者の多い山域での対応例です。
| 場所 | 公表している主体 | 案内の内容 | 窓口・手続き | 確認日 |
|---|---|---|---|---|
| 日光国立公園・那須平成の森 | 環境省 | 原則としてドローンの使用を禁止 | 公表ページの案内による | 2026年8月29日 |
| 日光国立公園・日光湯元/光徳 | 環境省 | 公園の管理上必要な個別措置を要する場合があり、事前の問い合わせが必要 | 事前問い合わせ | 2026年8月29日 |
| 中部山岳・上信越高原・妙高戸隠連山の3国立公園 | 環境省(信越自然環境事務所) | 担当事務所へ事前連絡し区域・日時・地域ルールを確認。宿泊施設・露天風呂・園地・歩道、希少種の営巣地周辺は飛行自粛の要請 | 飛行場所の担当事務所 | 2026年8月29日 |
| 長野県小谷村(上記2国立公園の村内区域) | 小谷村 | 当該区域内は原則としてドローンの飛行を禁止(ページ更新日2026年3月31日) | 村観光農林課観光商工係 | 2026年8月29日 |
| 大雪山国立公園・松仙園 | 環境省 | 飛行は望ましくないとし、学術研究等で必要な場合の連絡・承認申請の手続きを案内 | 上川総合振興局南部森林室ほか | 2026年8月29日 |
| 高尾陣場地区自然公園(明治の森高尾国定公園+都立高尾陣場自然公園) | 東京都 | 公共・防災目的以外は使用自粛を要請。目的内でも地権者・管理者等の了解を求める | 地権者・管理者等 | 2026年8月29日 |
| 北海道内の市町村立公園 | 北海道 | 可否は自治体ごとに異なる。札幌市・旭川市等の10市町村等は禁止、美瑛町は町内全域で許可制 | 各市町村 | 2026年8月29日 |
私有地の例として挙げておきたいのが富士山です。富士山の八合五勺以上については、土地の所有者である富士山本宮浅間大社がドローンの使用を禁止しており、山頂や登山道でも使用の自粛が要請されています(富士登山オフィシャルサイトの掲載、2026年8月29日確認)。これは航空法でも自然公園法でもなく、私有地の管理者が定めたルールです。法令を調べただけでは絶対に出てこない層になります。
この表は、2026年8月29日時点で公表を確認できた例です。全国の国立公園を網羅したものではありませんし、記載内容はいつでも変わります。行き先が表に載っていないからといって、制限がないという意味にはなりません。載っている場所についても、出発前に自分で該当ページを開いて最新の記載を確かめてください。
国立公園そのものの入園や利用のルールについては、国立公園で登山するときに守るルールと禁止事項で全体像を扱っています。ドローン以外にも、区域ごとに扱いが変わる項目があります。
飛ばせない・迷う場面はどうする:地上から撮る道具を使い分ける
ここまで読んで、多くの行き先では確認の手間が撮影の価値を上回る、と感じた人もいると思います。実際、日帰りの山行に合わせてドローンの可否を毎回詰めるのは、時間の使い方として割に合わないことが多いです。そのとき現実的な選択は、地上から撮るほうに寄せることです。
編集部の見立て:ドローンで撮れる絵の多くは、真上からの俯瞰でなければ成立しないものです。逆に言えば、俯瞰でなくても成立する構図は、地上の機材で十分に撮れます。飛ばせるかどうかを確認する前に、その絵は本当に空からでなければ撮れないのかを一度考えてみる価値があります。
地上から撮ると決めたときに効いてくるのが、カメラを固定する方法です。山では手持ちの限界が早く来ます。稜線の風、疲れた腕、そして日没前後の暗さ。この3つが重なると、シャッター速度を落とせないまま感度を上げることになり、絵が荒れます。固定できれば、感度を下げて粘れます。
ただし、山で三脚を広げられる場所は限られます。痩せ尾根、岩場、階段状の登山道、木道。脚を3本広げるだけの平らな面がない場所は珍しくありません。ここで形の違う2つの道具が候補になります。
ひとつがJOBYのゴリラポッド 3Kキットです。耐荷重3kgで雲台が付属し、脚が曲がる構造になっているのが特徴で、平らな面に立てるだけでなく、岩の出っ張りや柵、木の枝に脚を巻きつけて固定できます。三脚を広げるスペースがない痩せ尾根や岩場で、カメラを置ける面を探すのではなく、掴めるものを探せばよくなるのが、この形の利点です。場所を選ばずに固定したい人に向きます。
もうひとつがK&F Concept のカーボン三脚 B210です。5段で全高153cm、一脚に変えられる構造になっています。ゴリラポッドが「掴んで固定する」道具なのに対して、こちらは「立てて高さを取る」道具です。全高153cmは立ったままファインダーをのぞける高さで、開けた展望地で構図を詰めたいときや、風のある稜線で低く構えたいときに、脚の伸ばし方で調整できます。一脚に変えられるので、混雑した展望地で三脚を広げられない場面にも逃げ道があります。
使い分けの目安はこうです。足場を選ぶ岩場・痩せ尾根・柵のある展望台ではゴリラポッド。平らな面が取れて、高さと安定を優先したい開けた展望地ではB210。両方を持つ必要はなく、行き先の地形で先に決めるのが現実的です。
三脚は重さと高さが背反する道具です。軽くすれば風に弱くなり、高くすれば重くなります。行動時間の長い山行では、この背反をどちら側に倒すかで持ち物が変わります。選び方の詳細は登山で使う三脚の選び方と重さの目安で扱っています。
カメラ本体をどう身につけて歩くかも、撮れる枚数を左右します。ザックの中にしまうと、結局出さないまま下山することになりがちです。登山でカメラを持ち歩く方法とホルダーの使い分けでは、携行方法ごとの向き不向きを整理しています。
編集部の見立て:道具の話をしましたが、この記事の本題は道具ではありません。飛ばせるかどうかは手続きと確認の問題で、機材を買っても解決しません。地上の機材は「飛ばさないと決めたあとの選択肢」であって、確認を省略する手段ではないと考えています。
機体登録とリモートIDは制度が変わる:DIPSの公式で最新を確認する
機体の側の手続きに戻ります。航空法第132条の2は、無人航空機は登録原簿への登録を受けたものでなければ飛行させてはならない、と定めています(ただし書きによる例外があります)。あわせて第132条の4第1項・第3項では登録記号の表示について、第132条の5では登録の有効期間について定められており、有効期間は3年とされています。原則としてリモートID機能の搭載についても案内されています。
手続きのオンライン窓口は、ドローン情報基盤システム2.0(DIPS2.0)です。国土交通省の案内では、100g以上の機体は飛行させる前に事前の登録が必要とされています(2026年8月29日確認)。登録は購入後ではなく飛行前までに済ませておくものなので、山行の直前に思い出しても間に合わないことがあります。
編集部の見立て:この節については、記事に書かれた内容を信じないでください、というのが率直な見立てです。登録やリモートIDの要否・免除条件は制度改正で変わる部分で、本記事の記載も2026年8月29日時点のものにすぎません。手続きの直前にDIPSの公式で見てください。
機体登録・リモートIDの制度は変わりやすい領域です。免除の条件、必要な手続きの流れ、対象となる機体の範囲は改正の対象になります。本記事に書いた内容は2026年8月29日時点で確認したもので、それ以降の変更は反映されていません。実際に手続きをする前に、必ず国土交通省の無人航空機ページとDIPS2.0の案内で最新の記載を確認してください。
有効期間が3年であるという点も、登山者にとっては注意が要ります。年に数回しか飛ばさない使い方だと、前回の登録から時間が空き、気づかないうちに期間を過ぎていることがあります。撮影に行こうと決めた日ではなく、山行計画を立てた日に一度確認しておくと、当日に慌てません。
登録記号の表示については、機体に記号を表示する義務が定められています。表示の方法や大きさについての要件も公表されているため、表示のやり方を自己流で決めず、国土交通省の案内に沿って確認してください。表示していない状態での飛行は、登録そのものは済んでいても要件を満たしません。
- 山行計画を立てた日に、DIPS2.0で自分の機体の登録状況と有効期間の残りを確認する
- 国土交通省の無人航空機ページで、登録・リモートID・飛行ルールの記載に変更がないかを見る
- 変更があれば、その内容を反映したうえで、②空域と③方法の確認をやり直す
登山当日に飛ばすのをやめる判断をどう決めるか
手続きがすべて整い、管理者からも問題なしと返ってきたとしても、当日に飛ばさないほうがよい場面があります。ここを事前に決めておかないと、せっかく手続きをしたのだからという気持ちが働いて、無理をすることになります。中止の基準は、家で決めて紙に書いておくのが確実です。
判断の材料は大きく4つあります。風、視程、バッテリー、そして周囲の状況です。順に見ていきます。
編集部の見立て:山でドローンを失う原因の多くは、法令違反ではなく気象条件と操作環境だと考えています。手続きの話ばかりしていると、この部分が抜け落ちます。飛ばしてよい場所であることと、飛ばして安全な状態であることは別の判断です。
風は、地上の予報と稜線の実態が最も食い違う要素です。谷から吹き上げる風、鞍部で加速する風、山頂直下で巻く風は、麓の観測値からは読めません。機体の耐風性能は仕様表に書かれていますが、その数値は定常風に対するもので、突風や乱流に対する余裕を示すものではありません。仕様の上限に近い状況では、飛ばさないほうが妥当です。
視程は、目視内飛行の要件と直結します。ガスが上がってくる山では、飛ばし始めた時点で見えていても、数分後に機体を見失うことがあります。第132条の86第1項第2号が求めているのは常時の目視監視ですから、見失う可能性が高い状況で機体を上げること自体が、要件を満たせなくなる方向に向かいます。
バッテリーは低温で性能が落ちます。秋以降の稜線や、標高の高い場所での朝は、想定より早く残量が減ることを前提にしてください。加えて、帰りの登山道でスマートフォンの地図を使うなら、機体だけでなく手元の電源にも余裕が要ります。撮影のために電源を使い切ると、下山の道具を失うことになります。
周囲の状況は、人と野生生物の両方を指します。人については、③の30mの条件が飛行中ずっと必要である以上、いつ人が来るか読めない場所では、そもそも成立しません。野生生物については、中部山岳・上信越高原・妙高戸隠連山の3国立公園の案内が、希少な野生生物の営巣が確認されている場所とその周辺での飛行の自粛を要請している通りです。営巣地が公表されていない場合もあるため、繁殖期の高山帯では慎重に判断する必要があります。
- 稜線の風が機体の仕様上の耐風性能に近いと感じたら、上げない
- ガスが動いていて、数分後に機体を見失う可能性があるなら、上げない
- バッテリーが下山用の電源と競合する状況なら、撮影を切る
- 30m以内に人が入ってくる可能性が読めない場所なら、上げない
- 繁殖期の高山帯で、営巣の有無が確認できていないなら、上げない
編集部の見立て:この5つのうちどれかに当たったら中止、と決めておけば、現地で悩む時間がなくなります。悩んでいる時間そのものが行動時間を削るので、判断を前倒しする意味は撮影以外にもあります。
もうひとつ、機体を落とした場合のことも考えておく必要があります。山で機体が墜落すれば、回収のために登山道を外れることになりかねません。斜面に入って滑落する、藪に入って道を見失う、といった二次的な危険が生じます。回収できない場所には飛ばさない、という制約を自分に課しておくと、飛行できる範囲は自然に狭くなります。
回収できない範囲に落ちた機体は、そのまま山に残ります。バッテリーを含む機材が自然の中に残ることは、それ自体が問題です。飛ばす前に、この機体が落ちたらどこに落ちるかを一度考えて、回収可能な範囲に収まるようにコースを組んでください。
出発前チェックリスト:誰に・いつまでに・何を確認するか
ここまでの内容を、時系列の作業に並べ替えます。ポイントは、④の土地の管理者への確認だけは相手の都合に左右されるため、最も早く着手する必要があるという点です。①〜③は前日でも間に合いますが、④は間に合いません。
| いつまでに | 誰に | 何を確認するか | 手段 |
|---|---|---|---|
| 2週間前 | 行き先の国立公園・国定公園の担当事務所 | 該当区域でのドローンの扱い、事前連絡の要否、自粛が要請されている区域 | 電話または問い合わせフォーム |
| 2週間前 | 市町村(観光・環境の担当課) | 条例・要綱による禁止や許可制の有無、許可が要る場合の申請期限 | 市町村サイトの検索と電話 |
| 1〜2週間前 | 森林管理署/土地所有者・施設管理者 | 国有林の入林届の要否、私有地・社寺地の扱い、園地や駐車場の管理者ルール | 電話。所有関係が不明なら市町村に照会 |
| 1週間前 | 国土交通省・DIPS2.0 | 機体登録の有効期間、リモートIDの要件、飛行ルールの記載変更 | 公式サイトとDIPS2.0 |
| 前日 | 自分 | 禁止空域(空港周辺・人口集中地区)と、緊急用務空域の設定状況 | 国土交通省の公表と地図 |
| 当日朝 | 自分・現地 | 風、視程、通行止め、登山口の掲示、緊急用務空域の再確認 | 予報、登山口の掲示、ビジターセンター |
編集部の見立て:2週間前という数字は余裕を見た値です。許可制を敷いている自治体では申請期限が設定されていることがあり、直前では受け付けてもらえません。逆に、連絡だけで済む区域なら数日前でも間に合います。まず相手に聞いて、必要な前倒し量を確かめるのが最短です。
この確認作業は、ドローンを持たない登山でも走らせている出発前の確認と、かなりの部分が重なります。通行止めや登山道の状況は、ドローンの可否とは別に必ず見るものです。登山道の通行止めと林道の閉鎖を出発前に調べる手順で扱っている手順を、そのまま同じタイミングで走らせてください。窓口が同じことも珍しくありません。
入山料や協力金を集めている山では、支払いの窓口が土地の管理者と重なっていることがあります。登山の入山料・協力金がかかる山と支払い方法で扱っている窓口に問い合わせるとき、ドローンの扱いもあわせて聞けば、電話の回数を減らせます。
- ①機体の重さと登録状況を確認し、有効期間が残っているかを見たか
- ②行き先が禁止空域に当たらないかを、空港周辺・人口集中地区・150mの3点で確認したか
- ③その日の撮影プランが、日中・目視内・30m・催し場所回避の原則で成立するかを検討したか
- ④土地の管理者を特定し、担当事務所・市町村・所有者に連絡して回答を得たか
- 当日に中止を決める条件を、出発前に文字にして持ったか
なお、この記事は法令と手続きに絞って書いています。他の登山者への配慮や、音・視線に関する現地でのふるまいといったマナー面については、登山のマナーと山でのふるまい方の中に「ドローンを飛ばす前に確認しておきたいこと」という節があります。手続きが整っていることと、周囲に受け入れられることは別なので、そちらもあわせて読んでください。
編集部の見立て:手続きを全部通した人ほど、現地で「なぜ文句を言われるのか」と感じがちです。許可は周囲の合意ではありません。ここを混同しないことが、山でドローンを続けられるかどうかを分けると考えています。
よくある質問
Q. 国立公園ではドローンは禁止ですか
一律に禁止されているわけではありません。環境省関東地方環境事務所の案内では、国立公園内での飛行や離着陸そのものは自然公園法上の許可申請・届出が必要な行為ではないとされています(2026年8月29日確認)。ただし、その上に管理者側のルールが乗ります。日光国立公園の那須平成の森のように原則禁止としている地区もあれば、中部山岳・上信越高原・妙高戸隠連山のように事前連絡を求めている公園もあり、長野県小谷村のように自治体が区域内を原則禁止・許可制としている例もあります。行き先ごとに確認するしかありません。
Q. 100g未満のドローンなら登録も許可も要りませんか
航空法の無人航空機としての規制については、国土交通省の運用解説で100g未満は対象外とされています(2026年8月29日確認)。ただし、これは4つの軸のうち①の話だけです。土地の管理者が定めているルールは機体の重さを条件にしていないことがほとんどで、100g未満でも自粛要請や禁止の対象になります。また100gの判定は機体本体とバッテリーの合計で行い、取り外し可能な他の付属品は含めません。
Q. 山頂から150m以上の高さで飛ばすと違法になりますか
航空法第132条の85第1項が定める飛行禁止空域には、地表または水面から150m以上の高さの空域が含まれます(国土交通省の飛行ルール説明、2026年8月29日確認)。基準は直下の地表または水面からの高さで、海抜高度や離陸地点からの相対高度ではありません。山では、稜線から谷側へ機体を出す動きで、水平移動しかしていないつもりでも直下の地表からの高さが大きく増えることがあります。禁止空域で飛ばすには原則として国土交通大臣の許可が必要で、申請先は飛行エリアを管轄する地方航空局または空港事務所です。
Q. 目視外や30m未満の飛行は絶対にできませんか
絶対にできないわけではありません。航空法第132条の86第1項が定める飛行の方法の原則によらない飛行、つまり目視外の飛行、人や物件から30m未満での飛行、催し場所上空での飛行などは、原則として地方航空局長の承認を受けることで可能になる制度です。技能証明や機体認証による例外もあります。ただし山の撮影のためにこの承認を毎回取るのは現実的でないことが多く、原則の範囲で成立するプランに寄せるほうが実務的です。
Q. 富士山ではドローンを飛ばせますか
富士登山オフィシャルサイトの案内では、八合五勺以上について土地の所有者である富士山本宮浅間大社がドローンの使用を禁止しており、山頂や登山道でも使用の自粛が要請されています(2026年8月29日確認)。これは航空法や自然公園法による規制ではなく、私有地の管理者が定めたルールです。法令だけを調べても出てこない層なので、行き先の土地が誰のものかを先に確かめる必要があります。
Q. どこにも「禁止」と書かれていない場合は飛ばしてよいですか
書かれていないことを許可と読むのは危険です。土地の管理者がドローンについてページを用意しているとは限らず、単に想定していないだけということもあります。環境省関東地方環境事務所の案内も、土地や施設の管理者等が独自に飛行を禁止している場合があるとして事前の確認を求めています。サイトに記載が見当たらない場合こそ、担当事務所や市町村に直接聞いてください。
まとめ:今日やることは1つ
登山でドローンを飛ばせるかは、①機体の重さ②空域③飛行の方法④土地の管理者の4つを別々に確認して決まります。①〜③は航空法の系統で、国土交通省とDIPS2.0を見れば自分で潰せます。時間がかかるのは④だけです。そして④は、電話を1本かけるところから始まります。
編集部の見立て:今日やることは、行き先の土地の管理者が誰かを1つ特定することです。それさえ決まれば、聞くべき相手が決まり、残りは相手の回答待ちになります。逆にここが決まらないまま検索を続けても、答えは出てきません。
- 行き先の山を地図で開き、国立公園・国定公園・都道府県立自然公園のどの区域に入るか、国有林が含まれるかを確かめる
- その区域の担当事務所と、山がまたがる市町村の担当課を調べ、ドローンの扱いと事前連絡・許可の要否を電話で聞く
- 回答を得たら、国土交通省の飛行ルールとDIPS2.0で②空域・③方法・機体登録の状況を確認し、当日の中止条件を書き出す
本記事に書いた個別の公園・自治体の記載は、いずれも2026年8月29日時点で確認したものです。制度も現地の運用も変わります。出発前に、行き先の公式ページを自分で開いて最新の記載を確かめてください。
出典
- e-Gov法令検索「航空法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC0000000231 (2026年8月29日確認)
- 国土交通省「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」 https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000041.html (2026年8月29日確認)
- 国土交通省 無人航空機に関する公表資料 https://www.mlit.go.jp/koku/content/001860311.pdf (2026年8月29日確認)
- 国土交通省「無人航空機の登録制度」 https://www.mlit.go.jp/koku/drone/index.html (2026年8月29日確認)
- 国土交通省「ドローン情報基盤システム(DIPS2.0)」 https://www.mlit.go.jp/koku/koku_ua_dips.html (2026年8月29日確認)
- ドローン情報基盤システム2.0 ポータル https://www.ossportal.dips.mlit.go.jp/portal/top/?lang=ja (2026年8月29日確認)
- 環境省 関東地方環境事務所「国立公園内でのドローンの使用について」 https://kanto.env.go.jp/nature/mat/m_5_drone.html (2026年8月29日確認)
- 環境省 日光国立公園「ドローンの使用について」 https://www.env.go.jp/park/nikko/topics/post_18.html (2026年8月29日確認)
- 環境省 中部地方環境事務所 信越自然環境事務所「ドローンの使用について」 https://chubu.env.go.jp/shinetsu/nature/drone.html (2026年8月29日確認)
- 長野県小谷村「ドローンの飛行について」 https://www.vill.otari.nagano.jp/soshiki/kankochiikishinko-kankoshoko/gyomu/4/1/112.html (ページ更新日2026年3月31日、2026年8月29日確認)
- 環境省 大雪山国立公園 松仙園に関する資料 https://www.env.go.jp/park/daisetsu/data/files/daisetsu2020_05_06.pdf (2026年8月29日確認)
- 東京都「高尾陣場地区自然公園でのドローン使用について」 https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/natural_park/rule/information/takaosan (2026年8月29日確認)
- 北海道「ドローンに関するルール」 https://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/dxs/drone/rule.html (2026年8月29日確認)
- 富士登山オフィシャルサイト「登山前に知っておきたいこと」 https://www.fujisan-climb.jp/things-to-know-before-climbing/ (2026年8月29日確認)
