「うちのジムの3級、よそだと4級くらいらしい」——そんな話を、壁の前で一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。数字が並んでいるのに、その数字がジムをまたいだ瞬間にぐらつく。ここが、ボルダリングのグレードでいちばん混乱しやすいところです。名古屋市港区のボルダリングジム「カラフルロック」編集部が、級・段とVグレード・フォンテーヌブローグレードのおおよその並び、そしてジムによって難易度が違って感じられる仕組みを整理しました。

先に結論

級・段とVグレード、フォンテーヌブローグレードをきっちり対応づける公式な換算表は存在しません。世の中に出回っている対応表は、あくまで「おおむねこのあたり」という目安です。

ジムが違えばグレード感は前後します。多くの場合、1〜2段階ほどずれることがあるとされます。これは誰かのミスではなく、セットの考え方が違えば当然そうなる、という性質のものです。

だからこそ、比べる相手は他人でも他ジムでもなく、先月の自分。この記事では対応の並びを示したうえで、グレード以外で伸びを測る方法まで整理します。

そもそもグレードは「測定値」ではなく「見立て」

体重や身長には物差しがあります。ボルダリングのグレードにはありません。課題を作ったセッターが、自分で登り、他のスタッフに登ってもらい、「だいたいこのくらいだろう」と判断して数字を貼る。つまりグレードは測定の結果ではなく、人間の見立てです。

見立てである以上、誰が見立てたか、どんな課題群の中で見立てたかによって数字は動きます。ここを理解しておくと、「あのジムは甘い」「ここは辛い」という会話が、実はあまり生産的でないことも見えてきます。数字がずれること自体は、システムの欠陥ではなく仕様に近い。

グレードは「この課題は、この壁のこの課題群の中では、このくらいの位置にある」という相対的な位置づけです。絶対的な難易度の単位ではありません。ジムをまたいだ瞬間に基準となる課題群ごと入れ替わるため、数字だけが一人歩きするとかみ合わなくなります。

日本のジムのグレード表記(級・段)の読み方

日本の多くのジムでは、柔道や将棋と同じ「級」と「段」でグレードを表します。ルールはシンプルです。

  • 級は、数字が小さくなるほど難しい。10級前後が入門、そこから9級・8級……と進み、1級がいちばん難しい級になります。
  • 級の上が段。1級の上が初段、その上が二段、三段と上がっていきます。
  • ジムによっては級ではなく色分け(テープやホールドの色)で難易度帯を示す場合もあります。表記の形式は統一されていません。

入門の級がどこから始まるかもジム次第です。10級から始めるジムもあれば、8級スタートのジムもある。始まりの位置が違えば、同じ「6級」でも指し示す位置がずれます。これが、ジム間の差が生まれる最初のポイントです。

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編集部初めて来た方によく聞かれるのが「私のレベルって何級ですか」。正直なところ、その質問には壁の前でしか答えられません。数字より先に、まず何本か登ってもらう。そのほうが早いんです。

Vグレード・フォンテーヌブローグレードとのおおよその対応

海外のボルダリングでは、主に2つの表記が使われます。ひとつは北米発のVグレード(Vスケール)で、V0から数字が大きくなるほど難しくなります。もうひとつがフランスのフォンテーヌブロー発祥のフォンテーヌブローグレード(Fontスケール)で、6A・6B・6C・7A……と進みます。

以下は、一般に流通している対応のおおよその並びです。公式なものではなく、出典によって前後します。参考の枠を出ないものとしてご覧ください。

日本の級・段 Vグレード(目安) フォンテーヌブロー(目安) おおまかな位置づけ
10級〜8級 V0未満〜V0前後 3+〜4前後 入門。まずホールドを持って壁に乗る段階
7級〜6級 V0〜V1前後 4〜5前後 足を使って登る感覚がつかめてくる帯
5級 V1〜V2前後 5〜5+前後 初級者の目標として置かれやすい帯
4級 V2〜V3前後 5+〜6A前後 ムーブを選ぶ必要が出てくる
3級 V3〜V4前後 6A〜6B前後 中級。保持力と体幹の両方が問われる
2級 V4〜V5前後 6B〜6C前後 課題の意図を読む力が要る
1級 V5〜V6前後 6C〜7A前後 級の最上位。ここで長く止まる人も多い
初段 V7〜V8前後 7A+〜7B前後 段の入口
二段以上 V9前後〜 7C前後〜 上級。ジムでの設定本数自体が少なくなる

この表を「換算表」として使わないでください。ある課題を「3級=V4=6C」と断定できる根拠はどこにもありません。特に外岩とジムの課題では、同じ数字でも要求される内容が大きく変わります。表を見るときは「近いのはこのあたり」という帯の感覚だけ持ち帰るのが安全です。

なぜジムによってグレードが違って感じるのか

ここが本題です。ジム間の差は、感覚の問題ではなく、いくつかの具体的な要因の積み重ねで生まれます。編集部の整理では、大きく4つに分けられます。

1. セッターの意図と、その月のセット

課題を作るのは人です。ある月のセットは足で立ち込む課題が多く、別の月は指の保持を試す課題が多い——こうした偏りは普通に起こります。カラフルロックでも定期的にホールド替え(課題の入れ替え)を行っており、ゲストセッターを招く回もあります。作り手が変われば、同じ級の中身も当然変わる。

つまり「グレード感」は、ジム単位で固定された性格というより、その時期のセットに紐づくものです。同じジムでもセット替えの前後で「今回は辛い」「今回は登りやすい」と体感が動くのは、そのためです。

2. 壁の傾斜の構成

垂壁が多いジムと、強傾斜(前傾した壁)が多いジムでは、同じ級でも要求されるものが違います。垂壁中心なら足の置き方とバランスが効きます。強傾斜が多ければ、体を壁に引きつける力が先に必要になる。

自分が慣れている傾斜が少ないジムに行くと、いつもの級が急に重く感じられます。これは実力が落ちたのではなく、相性の問題です。傾斜ごとの足の使い方についてはスメアリングの記事で扱っている、面で立つ感覚が効いてきます。

3. ホールドの種類と持ちやすさ

同じ級を作るとき、大きくて持ちやすいホールドを遠くに配置するのか、小さいホールドを近くに置くのか。どちらでも級は成立しますが、体感はまったく別物になります。ガバ・カチ・スローパーといったホールドの種類と持ち方への慣れ具合によって、得意・不得意がはっきり出るところです。

さらにホールドは消耗品です。使い込まれた表面と、新品の摩擦は違います。同じ課題でも、時間が経つと少しずつ難しくなっていくことがある。

4. 課題の本数配分

ジムの壁に何本の課題を張るか、どの級に何本ずつ割り振るかも、体感を左右します。入門帯を厚くしているジムでは、級と級の間隔が細かく刻まれ、一段上がるのが軽く感じられます。逆に、限られた本数で入門から上級までをカバーするジムでは、一段の幅が広くなる。

この「刻みの細かさ」の違いが、他ジムの人と話したときの「ここは1級分ずれてる」という感覚の正体であることは、少なくありません。

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編集部「よそで3級が登れたのに、ここでは4級で落ちた」。これ、まったく珍しい話ではありません。むしろ、いろんな壁で試して初めて自分の得意・不得意が見えてくる。ずれは情報です、落ち込む材料ではなく。

同じジムの中でも、同じ級で難易度が変わる理由

ジム間の差だけではありません。同じジムの同じ級でも、Aは一撃できたのにBには何度も跳ね返される、ということが起こります。理由はシンプルで、課題ごとに問われている能力が違うからです。

課題のタイプ 主に問われるもの 苦手だと起きること
強傾斜のガバ課題 持久力・体を引きつける力 手数の後半で腕が終わる
垂壁のカチ課題 指の保持・足の精度 足が滑る、指が開く
スラブ(前に傾いた壁) バランス・面で立つ意識 足を信じきれず腰が引ける
ランジ・飛びつき系 タイミング・思い切り 手が届いても止められない
コーディネーション系 動きの順序を体で覚える力 個々の動きはできても繋がらない

得意なタイプで揃った月は「今月は調子がいい」と感じ、苦手なタイプが並んだ月は「壁にぶつかった」と感じる。実際には、単に出題範囲が変わっただけということも多いのです。どの動きが自分に足りていないかを言葉にできると、練習の狙いが定まります。ボルダリングのムーブとテクニックを一通り知っておくと、「今の課題は何を試されていたのか」を自分で言語化しやすくなります。

グレードの話は、壁の前でするといちばん早い

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グレード以外で上達を測る5つの指標

グレードは分かりやすい反面、更新が止まると途端に自信を削ってきます。数字が動かない時期にも伸びは起きているので、それを拾える指標を持っておくと精神衛生がまるで違います。

指標1. 登れた課題の「種類」

先月は強傾斜ばかりだったのが、今月はスラブでも同じ級が登れた。級は同じでも、これは明確な前進です。登れた課題を傾斜やタイプで分けて数えてみると、自分のレンジが広がっているかが分かります。

指標2. 初見で触れる級

何度も打ち込んで登れる級と、初見で手をつけて形になる級は違います。後者が一段上がったなら、それは実力の底が上がった証拠。オンサイト(初見での完登)に近い体験は、数字以上に手応えがあります。

指標3. 1本にかかるトライ数

同じ3級でも、20回で登ったのか5回で登ったのかでは意味が違います。トライ数が減っているなら、動きを読む力と再現性が上がっています。ノートやスマホのメモに残しておくと、後で効きます。

指標4. 疲れ方の質

以前は腕だけがパンパンになっていたのに、最近は体幹や足にも疲れが来る。これは、腕に頼った登りから全身を使う登りに変わってきたサインであることが多いです。逆に前腕だけが極端に張るうちは、まだ引きつけに寄っている可能性があります。

指標5. 動きの再現性

一度登れた課題を、翌週にもう一度登れるか。まぐれで抜けた1本と、身についた1本の差はここに出ます。再現できる課題が増えていくことが、本当の意味での積み上げです。

この5つは、どれも他人と比べようがない指標です。だから比較で消耗しません。グレードが3か月動かなくても、この5つのうちどれかは必ず動いています。数字が止まったときに見る場所を持っておくことが、続けるうえでの現実的な保険になります。伸び悩みの構造そのものについてはボルダリングのグレードが上がらない5つの理由と停滞期の抜け方で詳しく整理しています。

初心者が最初に目指す目安の考え方

「何か月で何級」という約束は、誰にもできません。通う頻度、体格、運動歴、そして通うジムのセットによって、進み方はまったく違うからです。期間を切った目標より、順序で考えるほうが現実的でしょう。

  1. いちばん易しい級を、複数本登る。1本ではなく複数本というのが大事です。同じ級を何本も登ると、その級の「相場」が体に入ります。
  2. 足を見る癖をつける。手より先に足を置く場所を決める。ここができると、次の級が一気に近づきます。
  3. 苦手な傾斜を1本だけ混ぜる。得意な壁だけで固めると、級は上がってもレンジが広がりません。
  4. 一段上を「触るだけ」で終わらせる日を作る。登れなくてよい。触っておくと、次に本気で取り組むときの入り方が変わります。
  5. 登れた課題を記録する。級だけでなく、傾斜とトライ数も。1か月後に見返すと、自分の変化が数字で見えます。

周りの人のグレードは、あなたの進度の物差しになりません。同じ日に始めた人が先に上がっていくことは普通に起こりますし、その逆も起こります。骨格も、これまでやってきたスポーツも違うのですから、比べる意味が薄い。見るべきは、先月の自分の記録だけです。

ムーンボードという「共通の物差し」もある

ジムごとに差が出る、という話をしてきましたが、例外的に基準が揃いやすい壁もあります。カラフルロックに設置しているムーンボードは、ホールドの配置と傾斜が世界共通の規格で決まっており、同じ課題を世界中の人が同じ条件で登れる仕組みになっています。

だから「自分の位置」を知りたいときの参考にはなります。ただし、ムーンボードは強傾斜で保持力を強く問う性格の壁なので、ここでの結果がそのままジムの級と一致するわけではありません。あくまで、ものさしのひとつと考えるのが健全です。

よくある質問

Q. ボルダリングのグレードに公式な換算表はありますか?

ありません。日本の級・段、Vグレード、フォンテーヌブローグレードのいずれも、統一機関が定めた公式の対応表は存在しないとされています。書籍やウェブで見かける対応表は、広く使われている目安をまとめたもので、出典によって前後します。参考の範囲にとどめてお使いください。

Q. ジムによってグレードが違うのは、どちらかが間違っているのですか?

どちらも間違っていません。グレードは課題を作ったセッターの見立てであり、そのジムの課題群の中での相対的な位置づけだからです。壁の傾斜構成、使うホールド、級ごとの本数配分が違えば、同じ表記でも体感は変わります。1〜2段階ほど前後することは珍しくありません。

Q. 同じジム・同じ級なのに、登れる課題と登れない課題があるのはなぜですか?

課題ごとに問われている能力が違うからです。強傾斜のガバ課題は引きつける力と持久力を、垂壁のカチ課題は指の保持と足の精度を、スラブはバランスを主に要求します。得意なタイプが並んだ月は調子がよく感じられ、苦手なタイプが並ぶと停滞したように感じられます。実力ではなく相性の問題であることが多いです。

Q. 初心者は最初にどのグレードを目指せばいいですか?

期間を区切った目標より、順序で考えることをおすすめします。まずはいちばん易しい級を複数本登り、その級の相場を体に入れること。次に手より先に足を置く癖をつけること。そのうえで苦手な傾斜を少しずつ混ぜていくと、無理なくレンジが広がります。何か月で何級という約束は、通う頻度も体格も違う以上、誰にもできません。

Q. Vグレードやフォンテーヌブローグレードは覚える必要がありますか?

国内のジムに通うだけなら必須ではありません。ただし外岩の情報や海外の動画に触れるときには、V0やV5、6Aや7Aといった表記が出てきます。おおよその位置関係を知っておくと理解が早くなります。細かい換算を暗記する必要はありません。

Q. グレードが上がらないときは何を見直せばいいですか?

まずグレード以外の指標を確認してください。登れた課題の種類、初見で触れる級、1本にかかるトライ数、疲れ方の質、動きの再現性。この5つのうちどれかは動いているはずです。数字が止まっている時期でも、苦手な傾斜やムーブに手をつけていれば、土台は確実に厚くなっています。


まとめ:物差しは、自分の中に置く

対応表は便利です。海外の動画を見るときにも、外岩の情報を読むときにも役立ちます。ただ、それは地図であって、あなたの現在地を測る装置ではありません。

ジムが違えば数字はずれる。同じジムでもセットが変われば動く。得意な傾斜かどうかでも変わる。そういう揺れの大きいものを唯一の指標にしてしまうと、伸びているのに落ち込む、という損な状態が生まれます。

登れた課題の種類が増えているか。初見で触れる級は上がったか。同じ課題を来週も登れるか。この3つを見ているだけで、グレードが止まっている月にも前進を見つけられます。数字は後からついてきます。

名古屋市港区のボルダリングジム カラフルロック

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〒455-0072 愛知県名古屋市港区須成町3丁目14番
電話 052-387-8897
営業時間 平日10:00〜22:30/土日祝10:00〜21:00(最終入館は閉店45分前)
定休日なし(臨時休業あり)

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参考情報

本記事に記載の料金・営業時間は2026年8月9日時点のものです。最新の情報は当ジム公式サイトおよび店頭のご案内をご確認ください。