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乾徳山(けんとくさん)は、山梨市にある標高2,031mの山です。登山口は徳和と大平高原の2つがあり、どちらから入っても、最後は山頂直下の岩場を通って山頂に立ちます。途中には国師ヶ原や扇平といった開けた草原があり、ひとつの山行のなかで「歩きやすい草原」と「手を使う岩場」の両方が出てくるのがこの山の特徴です。
計画を立てようとすると、情報がばらばらに散っていることに気づきます。登山口と駐車場は山梨市のページ、体力度と難易度は山梨県のグレーディング、鳳岩の高さは県の観光情報、道路の規制は市と県の別々のページ、クマの目撃は市の告知、というように、1つの山の判断材料が5か所以上に分かれています。しかも一部は2024年時点の表示のまま更新が確認できません。
この記事は、2026年9月13日時点で公式に確認できたことと、確認できなかったことを1つにまとめたものです。乾徳山の計画で最初に決めるのは「どちらの登山口から入るか」と「山頂直下の岩場をどう扱うか」の2つです。コースタイムのように自治体の一次情報に数値が見当たらないものは、出典の種類を明記したうえで目安として扱います。
読み終えたときに、自分がどちらの登山口を選び、何時までに山頂を踏むか、どこで引き返すかを決められる状態を目標にしています。
- 乾徳山の標高2,031mは山梨市と山梨県で一致しており、徳和ルートは体力度3・難易度C、大平高原ルートは体力度2・難易度Cと、技術面の区分は同じであること
- 徳和側は乾徳山駐車場20台と徳和駐車場50台、大平側は大平駐車場30台(有料・金額は市公式に記載なし)という受け皿の差
- 歩行時間およそ7時間15分・距離10.6kmは山と高原地図などの二次資料の合計値で、自治体の公式な区間値は見つからないこと
- 鳳岩の「高さ20m」は山梨県の観光情報の記載で、市公式の「頂上直下の鎖場のみ巻き道あり」が鳳岩そのものを指すかは明記がないこと
- 高原ヒュッテは無人の避難小屋で、宿泊を前提にした山小屋ではないこと。水場の飲用可否は公式に記載が見当たらないこと
- 大平高原へ向かう市道の「通行止め解除」は2024年7月時点の表示で、通行禁止の県営林道乾徳山(南)線は別の区間であること
- 2026年9月に徳和の乾徳神社近くで子グマの目撃が公表されており、出発前に市と県のページを見る必要があること
- 休憩を足した行動時間から、歩き始めの時刻と山頂での引き返しの線を決める手順
乾徳山はどんな山か|標高2,031m、草原と岩場が1日のうちに出てくる山梨百名山
乾徳山の標高は2,031mです。この数値は山梨市の観光案内ページと、山梨県の観光ピッチマップ(八ヶ岳・秩父エリア)の両方で同じ値になっています(2026年9月13日確認時点)。山梨県のピッチマップでは山梨百名山の一座として掲載されており、県が整理している登山道のグレーディングにも名前があります。
2,000mを少し超える標高は、関東近郊から日帰りで登る山としては高いほうに入ります。ただ、乾徳山の性格を決めているのは標高の数字そのものより、登山道の途中で景色と足元が大きく変わる点です。下部は樹林帯の登り、中腹には国師ヶ原や扇平といった視界の開けた草原、そして山頂が近づくと岩場が続き、最後に山頂直下の岩場(通称・鳳岩)が待っています。
山梨市の公式案内は、登山道に鎖場が数か所あり注意が必要だと書いています(2026年9月13日確認時点)。つまり鎖が出てくるのは山頂直下の1か所だけとは限りません。扇平から上では、市公式の本文にも名前が出てくる髭剃(ひげそり)岩などの岩場があり、そのうえで山頂直下の岩場に取りつく流れになります。
編集部の見立て:乾徳山は、前半の草原の印象で山の難しさを判断すると、後半で読み違えやすい山です。国師ヶ原や扇平はのびやかで歩きやすい場所として語られることが多いのですが、この山の難易度を決めているのは、そこから上の岩場のほうです。計画の段階では、草原までの時間と、岩場からの時間を分けて考えるほうが安全だと考えています。
登山口は大きく2つです。1つは山の南側の集落にある徳和で、山梨市は「乾徳山登山口(徳和)」「乾徳公園」という表記で案内しています。もう1つは東側の大平高原です。さらに徳和からは、道満尾根という別の尾根を組み合わせて登り下りの道を変えることもできます。山梨市観光協会が掲載している資料には、道満尾根を使って徳和に戻る周回の例が載っています。
2つの登山口は、どちらを選ぶかで前半の性格が大きく変わります。徳和からは樹林帯を長く登って国師ヶ原に出る道で、途中に銀晶水・駒止・錦晶水といった地名が順に現れます。大平高原からは、徳和からの道と上部で合わさり、そこから先の岩場は共通です。どちらから入っても、山頂直下の岩場は避けて通れない前提で計画を組みます。


この山の読み方:乾徳山の計画は「どちらの登山口から入るか」で前半の長さが決まり、「山頂直下の岩場をどう扱うか」で後半の安全が決まります。標高2,031mという数字は、そのどちらも教えてくれません。登山口のグレーディング、駐車場の規模、岩場の情報を分けて見ていくのが、この記事の順番です。
なお、標高の数値として公式に確認できたのは山頂の2,031mだけです。銀晶水・駒止・錦晶水・国師ヶ原・扇平(月見岩)・大平高原の個別の標高は、確認した山梨県のピッチマップと山梨市の公式ページのいずれにも数値が見当たりませんでした(2026年9月13日確認時点)。この記事では、これらの地点は標高ではなく、登山道の上での順番として扱います。
同じ山梨県内で、岩場の通過が難易度を決める山として比べやすいのが瑞牆山です。瑞牆山も体力より地形で判断が分かれる山で、標高差や時間の数字だけでは読み切れない点が乾徳山と共通しています。瑞牆山の標高差と岩場・鎖場の通過で決まる難易度をまとめた記事を合わせて読むと、「数字のわりに手ごわい山」の見分け方がつかみやすくなります。
乾徳山という山の全体像を一文でまとめるなら、「前半は登山口の選択で長さが変わり、後半は誰にとっても同じ岩場が待っている山」です。次の2つの章で、それぞれの登山口の公式情報を並べます。
徳和ルート|体力度3・難易度C、乾徳山駐車場20台と徳和駐車場50台
徳和は乾徳山の南側にある登山口で、昔から乾徳山の表の入り口として使われてきた側です。山梨市の公式案内では「乾徳山登山口(徳和)」と「乾徳公園」という表記が使われています。乾徳公園には公衆トイレがあることも、同じく市の案内から確認できます(2026年9月13日確認時点)。
山梨県のグレーディングでは、徳和からのルートは体力度★★★☆☆(3)・難易度Cに区分されています。山梨市の公式ページも同じく体力度レベル3・難易度Cと書いており、県と市で区分が一致しています(2026年9月13日確認時点)。
グレーディングの見方を簡単に言うと、体力度は数字で「どれだけ長く・高く歩くか」を、難易度はアルファベットで「道がどれだけ技術的に難しいか」を表す、別々の2つの軸です。体力度3は、同じ県の表のなかで、日帰りで歩く山としては中くらいの負荷にあたる位置です。難易度Cは、手を使う箇所や鎖場を含む道を想定しておくべき区分として読むのが現実的です。
体力度と難易度は、片方が低くても、もう片方が高ければその山は「楽な山」になりません。グレーディング表の2つの軸をどう組み合わせて読むかは、山のグレーディング表の見方と体力度・難易度の読み方をまとめた記事で詳しく扱っています。乾徳山のように体力度が中くらいで難易度がCの山は、表のなかで自分の経験と照らし合わせる価値がある組み合わせです。
徳和からの道は、登山口から樹林帯を登り、銀晶水、駒止、錦晶水と地名を順にたどって国師ヶ原に出ます。国師ヶ原には後述する高原ヒュッテがあり、ここから扇平へ登ると視界が開けます。扇平から上が岩場の続く区間で、山頂直下の岩場を越えて山頂に立つ、というのが徳和からの基本の流れです。
駐車場は2か所あります。山梨市の公式案内の表示は、乾徳山駐車場20台、徳和駐車場50台です(2026年9月13日確認時点)。山梨県の観光情報には「70台」という表記もあり、市の2か所を合わせると70台になるため、県の数値は合計とみられます。ただし県のページ自体が「合計」と書いているわけではありません。
編集部の見立て:70台という合計値だけを見ると余裕がありそうに感じますが、実際に使う側から見ると「20台の駐車場と50台の駐車場が別々にある」と覚えておくほうが役に立ちます。片方が埋まっていたときに、もう片方へ回るという判断を到着前に持っておけるからです。1か所に70台並んでいるわけではない、という理解が大事だと考えています。
では何時に着けば停められるのか。これについては、山梨市・山梨県のどちらのページにも、混雑する時刻や満車になりやすい時間帯の記載は見つかりませんでした(2026年9月13日確認時点)。そのため、この記事でも「何時までに着けば入れる」とは書けません。代わりに言えるのは、20台と50台という規模は、紅葉の時期の週末などに登山者が集中すれば埋まりうる規模だ、ということです。
駐車場が満車だったときに、周辺の道路の路肩や集落の空き地に車を置くのはやめてください。徳和は人が暮らしている集落で、登山口までの道は生活道路でもあります。満車の場合に備えて、到着が遅れたら大平高原側へ回るのか、その日は別の山に切り替えるのかを、前夜のうちに決めておくと当日慌てずに済みます。
公共交通については、徳和には路線バスの停留所「乾徳山登山口」があります。一方で、運行日や時刻は季節によって変わるため、この記事には時刻を載せていません。バスで行く場合は、出発前に運行事業者の公式時刻表で、行きの便と帰りの便の両方を確認してください。帰りの便の時刻がわかった時点で、それが下山の締切になります。
- 乾徳山駐車場(20台)と徳和駐車場(50台)が別々にあることを把握したか
- 満車だったときの行き先(大平高原側・別の山・時間をずらす)を決めたか
- バスで行く場合、帰りの便の時刻を運行事業者の公式時刻表で確認したか
- 体力度3という区分が、自分がこれまで歩いた山と比べてどの位置かを確かめたか
徳和ルートは、国師ヶ原までの樹林帯の登りが長い分、体力度が3になっていると読めます。次の章の大平高原ルートと比べると、この「前半の長さ」の差がはっきりします。
大平高原ルート|体力度2・難易度C、大平駐車場30台(有料)
大平高原は乾徳山の東側にある登山口です。山梨市の公式ページでは、大平高原からのルートを体力度★★☆☆☆(2)・難易度Cとしています(2026年9月13日確認時点)。徳和ルートの体力度3より1段階低く、市のページは大平高原からのコースを「比較的短時間」で登れる道として紹介しています。
ここで見落とさないでほしいのが、難易度が徳和と同じCだという点です。体力度が下がっても、道の技術的な難しさの区分は変わっていません。大平高原からの道は上部で徳和からの道と合わさり、扇平(月見岩)付近から上の岩場と、山頂直下の岩場は共通です。大平高原を選んで短くなるのは前半の登りであって、山頂直下の岩場ではありません。
編集部の判断:大平高原ルートは「楽なほうの道」ではなく、「岩場にたどり着くまでの体力を温存できる道」だと捉えるのがいいと考えています。岩場の手前で脚が残っているかどうかは、鎖場を安全に通過できるかどうかに直結します。体力度2という数字を、岩場の難しさが下がったと読み替えないことが大切です。
駐車場は大平駐車場の30台で、山梨市の公式ページでは有料と案内されています。料金の金額は、市の公式ページには記載が見当たりませんでした(2026年9月13日確認時点)。現地で支払う形になると考えて、小銭を含めた現金を用意しておくと安心です。
30台という規模は、徳和側の2か所を合わせた70台と比べると半分以下です。登山口までの時間を短くしたい人が集まりやすい側でもあるため、休日に遅い時刻に到着すると停められない可能性は徳和側より高いと見ておくのが自然です。ただし、これも混雑時刻の公式な記載があるわけではなく、規模から考えた見立てです。
| 項目 | 徳和ルート | 大平高原ルート |
|---|---|---|
| 山梨県・市のグレーディング | 体力度3・難易度C | 体力度2・難易度C(体力度が1段階低い) |
| 駐車場(山梨市公式) | 乾徳山駐車場20台+徳和駐車場50台 | 大平駐車場30台・有料(金額は市公式に記載なし) |
| 路線バス | 停留所「乾徳山登山口」がある | 市の大平高原の案内ページではバスの案内を確認できなかった |
| 途中の施設 | 国師ヶ原の高原ヒュッテを通る | 上部で徳和からの道と合流する |
| 山頂直下の岩場 | 通る | 通る |
大平高原への公共交通は、山梨市の大平高原の案内ページでは定期便の記載が見つかりませんでした(2026年9月13日確認時点)。車を使わずに大平高原から入りたい場合は、最寄りの駅からタクシーを使う方法が考えられます。料金や所要時間は、事前にタクシー会社に問い合わせて確認してください。確認先として、山梨市の案内ページ(https://www.city.yamanashi.yamanashi.jp/soshiki/17/14047.html)を出典節に載せています。
大平高原へ向かう道路には、通行止めの表示とその解除の履歴があります。これは後の章で詳しく扱いますが、結論だけ先に書くと、「解除」の表示は2024年7月時点のもので、2026年の現況は出発前に山梨市へ確認する必要があります。大平高原ルートを選ぶ日は、この道路確認が計画の一部に入ると考えてください。
大平高原ルートの区間ごとのコースタイムや距離は、山梨市の公式ページにも山梨県のページにも数値が見当たりませんでした。「比較的短時間」という市の表現を、具体的な時間に置き換えて計画しないでください。登山地図などで自分で時間を見積もり、その値が公式の数値ではないことを前提に、余裕を持たせた計画にしておきます。
徳和と大平高原のどちらを選ぶかは、次のように分けて考えると整理しやすくなります。体力に不安があり、岩場の手前で脚を残したい人は大平高原。バスで行きたい人、駐車場の受け皿が大きいほうを選びたい人、国師ヶ原の高原ヒュッテや水場のある道を通りたい人は徳和。どちらの場合も、山頂直下の岩場を通る判断は同じだけ必要です。
歩く時間と距離の目安|自治体公式に区間値が見つからず、二次資料の合計で計画する
乾徳山の計画で一番扱いに気をつけたいのが、コースタイムです。2026年9月13日時点で、山梨市・山梨県の公式ページには、徳和ルートと大平高原ルートのどちらについても、区間ごとの距離・標高差・コースタイムの数値が見当たりませんでした。県のグレーディングのページも、評価の方法を説明しているだけで、各ルートの数値までは確認できていません。
そこで目安として使えるのが、出版社などの二次資料です。山と高原地図Webの乾徳山のコースでは、歩行時間7時間15分・距離10.6km・最大高低差1,201mと示されています(2026年9月13日確認時点)。また、山梨市観光協会が掲載しているコース資料(2014年に歩いた記録の転載)でも、区間の時間を合計するとやはり7時間15分になります。
時間の目安の扱い方:山と高原地図などの資料によると、徳和を起点とする日帰りコースは区間の合計がおよそ7時間15分です。これは自治体が総計として出した値ではなく、2つの二次資料で一致した値です。7時間15分は「歩いている時間だけ」の合計なので、実際の行動時間はここに休憩を足した長さになります。
ここで使っている7時間15分は、徳和を出発点にしたコースの値です。観光協会の資料では、下りに道満尾根を使って徳和に戻る周回として組まれています。同じ道を往復する場合や、大平高原から登る場合は、この数値をそのまま当てはめることはできません。
距離10.6kmと最大高低差1,201mについても、読み方に注意が必要です。最大高低差は、コースのなかで一番低い地点と一番高い地点の差で、登り下りの途中で細かく上下する分を足した「累積の登り」とは別の数値です。実際に脚で登る量は、1,201mより多くなる前提で考えておくのが無難です。
編集部の見立て:7時間15分という数字を見て「朝早く出れば余裕」と感じる人は多いと思います。ただ、この数字には休憩が入っていませんし、鎖場で前の人の通過を待つ時間も入っていません。岩場の待ち時間は、その日の人の多さで大きく変わります。計画の段階では、7時間15分を最短の値として扱い、そこから足していく考え方をおすすめします。
休憩をどれだけ足すかは人によりますが、計算のしかたを示すために、仮に休憩と待ち時間の合計を1時間15分と置いてみます。すると行動時間は8時間30分です。この仮の値で、歩き始めの時刻から下山時刻を並べると次のようになります。
| 歩き始め | 休憩なしの合計(7時間15分) | 休憩を足した例(8時間30分) |
|---|---|---|
| 6時00分 | 13時15分 | 14時30分 |
| 7時00分 | 14時15分 | 15時30分 |
| 8時00分 | 15時15分 | 16時30分 |
この表で見てほしいのは、歩き始めが2時間遅れると、下山も同じだけ遅れるという当たり前の関係です。秋が深まるほど日の入りは早くなるので、同じ8時スタートでも、季節によっては最後の区間が薄暗くなります。日の入りの時刻は、出発日の値を国立天文台などで確認し、下山時刻との間に余裕があるかを見てください。
時間の読み方と並んで、長い行程を支える足回りも計画の一部です。乾徳山は樹林帯の登り、草原の歩き、岩場、そして長い下りが1日に続くため、靴は「岩の上で滑りにくいこと」と「長い下りで足が痛くなりにくいこと」の両方で考えます。
メレルのハイキングシューズ「Moab 3 Synthetic Gore-Tex」は、合成素材のアッパーにゴアテックスを組み合わせたローカットのモデルです。足首まわりの動きを妨げたくない人や、これまでもローカットの靴で岩の混じる道を歩いてきた人に向いています。一方、足首を覆う安心感を重視するなら、後の装備の章で扱うミッドカットのほうが合います。
大平高原から登る日に、徳和の7時間15分を「それより短いはず」と引き算して計画しないでください。大平高原ルートの時間は公式の数値が見つかっていないため、引き算の元になる値がありません。登山地図で自分で区間の時間を拾い、その合計に休憩を足す、という手順を別に踏む必要があります。
鳳岩(高さ20m)の鎖場|「頂上直下の鎖場のみ巻き道あり」をどう読むか
乾徳山の核心部は、山頂直下の岩場です。山梨県の観光情報(やまなし観光推進機構)は、この岩場を鳳岩(おおとりいわ)として紹介し、高さ20mの岩場で長い鎖がかけられていると記載しています(2026年9月13日確認時点)。高さ20mは、建物でいえば数階分に相当する高さで、ほぼ垂直に近い岩を鎖と手足で登る場面を想定しておく必要があります。
この岩場について、もう1つ確認しておきたい公式の記載があります。山梨市の公式案内は、登山道に鎖場が数か所あることを注意したうえで、「頂上直下の鎖場(写真の箇所)のみ巻き道あり」と書いています(2026年9月13日確認時点)。
ここで大切なのは、この文が何を言っていて、何を言っていないかを分けることです。市公式が書いているのは、「頂上直下の鎖場には巻き道がある」ということです。一方で、その「頂上直下の鎖場」が県の観光情報でいう鳳岩そのものを指すのか、巻き道の入口がどこにあるのか、道幅や足場がどうなっているのか、そして現在も通行できるのかは、市のページにも県のページにも明記がありません。
「鳳岩は巻き道で避けられる」と決めつけて計画しないでください。山梨市公式は頂上直下の鎖場に巻き道があるとしていますが、それが鳳岩そのものを指すか、現在通行できるかは公式に明記がありません。現地では、案内板と道標の表示に従って進みます。巻き道があてにできない場合でも、自分が引き返せる状態で岩場の手前に立っていることが前提になります。
編集部の判断:巻き道の記載は「逃げ道が保証されている」という意味では読まないほうがいいと考えています。巻き道があるかどうかより先に、「鎖場の手前で登らないと決めたら、そこから来た道を戻れるか」を自分に問うほうが大事です。戻る判断ができる時刻と体力を残して岩場に着くことが、この山のいちばんの安全策です。
では、岩場の手前で何を見て、越えるか戻るかを決めればいいのでしょうか。この記事では、判断の場所を「鳳岩の取りつきの手前」、判断の材料を「岩の状態」「待ち時間」「自分の手足の状態」「時刻」の4つに分けて考えます。
| 見るもの | 越える方向に傾く状態 | 戻る方向に傾く状態 |
|---|---|---|
| 岩の状態 | 乾いていて、手をかけても滑らない | 雨や霧で濡れている、手をかけると滑る感触がある |
| 待ち時間 | 前後に人がいないか、間隔が十分にある | 鎖の上に複数人が連なり、途中で止まっている |
| 手足の状態 | 握力が残っていて、脚に震えがない | ここまでの登りで握力が落ち、脚が重い |
| 時刻 | 自分で決めた山頂到着の予定時刻より前 | 予定時刻を過ぎている、下山が暗くなりそう |
4つのうち1つでも「戻る方向」に当てはまるなら、無理に登らない判断を検討してください。特に岩が濡れているときは、登りより下りのほうが難しくなります。鎖場は登れても、同じ岩を下りで使う場面や、その先の下山路で滑る危険が残ります。
鎖場の通過そのものは、三点支持を基本に、手と足を1つずつ動かしていきます。鎖は体を引き上げるための綱ではなく、バランスを補うための手すりとして使うのが基本です。
- 取りつく前に、前の人が鎖場を抜けきるまで待つ。鎖1本に複数人が同時にぶら下がると、揺れで他の人の足場が崩れる
- 手と足の4点のうち3点で体を支え、残りの1点だけを動かす。次に置く位置を目で決めてから動かす
- 鎖に全体重を預けない。足で立ち、鎖は体が岩から離れないように補う程度に握る
三点支持の具体的な使い方や、鎖に頼りすぎるとかえって危ない場面については、登山の鎖場・岩場の通過で三点支持を使う場面と、鎖に頼ってはいけない場面をまとめた記事で扱っています。乾徳山に行く前に、自分の通過のしかたを一度言葉で確認しておくと、現地で落ち着いて手足を動かせます。
鎖を握る場面が続く山では、手のひらの保護と握りの確かさも考えておきたいところです。ブラックダイヤモンドのトレイル グローブ(BD78520)は、山歩き全般を想定したグローブで、岩や鎖に素手で触れたくない人、手の冷えや擦り傷を避けたい人に向いています。手袋をしたときに鎖の握り心地が変わるので、出発前に指の動かしやすさを確かめておくと現地で戸惑いません。
高原ヒュッテと銀晶水・錦晶水|避難小屋であって、泊まるための山小屋ではない
徳和からの道の途中、国師ヶ原には高原ヒュッテがあります。山梨市の施設カルテによると、高原ヒュッテは乾徳山の登山者の安全確保を目的とした無人の避難小屋で、市が所有し、市の直営で管理しています(2026年9月13日確認時点)。主な役割は休憩所とトイレで、利用料金の制度はありません。
無人の避難小屋というのは、管理人が常駐して食事や寝具を用意する山小屋とはまったく性格が違う施設です。悪天候や体調の急変といった緊急時に身を寄せるための場所で、宿泊を前提に計画に組み込む対象ではありません。高原ヒュッテは「困ったときに逃げ込める場所」であって、「行程の途中で泊まれる場所」ではありません。
編集部の見立て:「ヒュッテ」という名前から、売店や水の補給ができる山小屋を想像する人がいても不思議ではありません。けれど高原ヒュッテは無人の避難小屋です。食料も水も、そこでは手に入らない前提で荷物を組むのが正しい使い方だと考えています。名前ではなく、施設の性格で判断してください。
トイレについて、山梨市の公式案内は高原ヒュッテのトイレを冬期閉鎖としています(2026年9月13日確認時点)。また、市の施設カルテには休館日として12月1日から3月31日という記載がありますが、このカルテは初回の入力が2019年で、更新日の記載がありません。休館期間の詳細が現在もこのとおりかは、現地の表示か山梨市に確認してください。
秋の終わりから春先にかけて乾徳山に行く場合、高原ヒュッテのトイレが使えない可能性を前提にしてください。登山口の乾徳公園の公衆トイレを出発前に使っておくこと、携帯トイレを持っていくことを、計画の段階で決めておきます。
次に水場です。徳和からの道には、銀晶水と錦晶水という水場の名前がついた地点があり、登山口側から銀晶水、駒止を経て錦晶水の順に現れます。ただし、この2つの水場について、山梨市・山梨県の公式ページには水量や飲用に適しているかどうかの記載が見当たりませんでした(2026年9月13日確認時点)。
水場の水は、季節や前の週の雨の量によって出たり細ったりするのが一般的です。公式に水量や飲用可否の記載がない以上、水場で補給できることを前提にした計画は立てないほうが安全です。日帰りで必要な水は、登山口から全量を担いで行く計画を基本にします。
必要な水の量は、自分が過去に同じくらいの行動時間の山を歩いたときに、どれだけ飲んだかを基準にするのが確実です。乾徳山の行程は、二次資料の合計で休憩なし7時間15分と長めです。これまで歩いた山の行動時間と比べて、どのくらい多めに持つかを考えます。夏の終わりのように気温が高い日は、同じ行動時間でも消費が増えます。
- 高原ヒュッテを宿泊先や補給地点として計画に入れていないか
- 水場の水をあてにせず、登山口から必要な量を担いでいく計画か
- 冬期にトイレが閉鎖される前提で、携帯トイレを持っているか
- 悪天候のときに高原ヒュッテまで下りて様子を見る、という選択肢を知っているか
水場を補給地点ではなく「予備」として扱うなら、浄水の道具を1つ持っておく考え方もあります。プラティパスのクイックドロー マイクロフィルター&リザーバは、水をろ過するフィルターと、水をためるリザーバの組み合わせです。水を全量担ぐことを基本にしたうえで、想定より早く水が減ったときの備えを持っておきたい人に向いています。ろ過できる対象と使えない水の条件は、製品の説明書で確認してから持っていってください。
草原の尾根から岩場の鳳岩まで、足回りと両手を空ける荷物をどう揃えるか
乾徳山の装備を考えるときの基準は3つあります。1つ目は、樹林帯の登りから岩場、長い下りまで、足元の条件が1日のなかで大きく変わること。2つ目は、鎖場で両手を使うため、手に物を持たずに済む荷物の持ち方が必要なこと。3つ目は、国師ヶ原や扇平のような開けた草原で、風や雨をさえぎるものがない区間があることです。この3つを満たすかどうかで、靴・ザック・雨具を選びます。
とくに2つ目の「両手を空ける」は、平地の歩きではあまり意識しない条件です。地図やスマートフォン、飲み物を手に持ったまま岩場に近づくと、鎖場の手前でそれらをしまう時間が必要になります。岩場に入る前に、手に持つものをすべてザックに収められる容量と、取り出しやすい配置を考えておきます。
編集部の判断:乾徳山の装備で優先順位をつけるなら、「岩場で滑らない足元」「両手が空く荷物」「草原で体を冷やさない雨具」の順だと考えています。どれも特別な道具ではなく、日帰りの山歩きの基本装備の延長です。この山では、その基本が実際に試される場面が1日に何度も来る、というだけのことです。
| 装備 | 乾徳山で求められること | この章で並べる候補 |
|---|---|---|
| 靴 | 岩の上での足の置きやすさと、長い下りでの足首の安定 | メレル Moab 3 Synthetic Mid Gore-Tex |
| ザック | 手に持つものを全部収められ、岩場で体から揺れにくい | オスプレー ストラトス34/ケストレル36-38 |
| 雨具 | 草原での風と雨、濡れた岩場での体温低下を防ぐ | モンベル サンダーパス ジャケット/レインダンサージャケット |
靴から見ていきます。メレルの「Moab 3 Synthetic Mid Gore-Tex」は、先の章で紹介したローカットと同じMoab 3のシリーズで、足首まで覆うミッドカットのモデルです。長い下りで足首をひねる不安がある人や、岩場で足首まわりの支えを感じながら歩きたい人に向いています。
次にザックです。オスプレーの「ストラトス」は34Lのトレッキング用バックパックで、日帰りの山行に雨具や防寒着、水を全量入れても余裕を持たせたい人に向いています。容量に余裕があると、岩場の手前で手に持っていたものをすぐに収められます。
同じオスプレーの「ケストレル」は36-38Lのテクニカルパックのシリーズです。ストラトスより少し容量が大きく、秋の終わりのように防寒着が増える季節にも同じザックで行きたい人、日帰り以外の山にも使い回したい人に向いています。
雨具は、開けた草原で風と雨を受けたときに体を冷やさないためのものです。モンベルの「サンダーパス ジャケット」は、同社の防水透湿素材ドライテックを使ったレインウェアで、雨具を初めてきちんと揃える人や、日帰りの山で使う頻度が高い人に向いています。
モンベルの「レインダンサージャケット」は、ナイロン素材のレインウェアで、同社の雨具のなかでも山での使用を強く意識したモデルとして展開されています。雨の中を長く歩く可能性がある日にも行きたい人、雨具を長く使い続けたい人に向いています。
靴・ザック・雨具のほかに、乾徳山で持つかどうかを考えたいのがヘルメットです。山頂直下の岩場のように上から人が登ってくる場所や、手をついて通過する場所では、落石や転倒のときに頭を守る道具になります。どの山で必要とされているかは地域によって考え方が違うため、公的な奨励の範囲を確認してから判断するとよいでしょう。
ヘルメットの必要性は、山によって公的な位置づけが違います。富士山や長野県の奨励山域など、ヘルメットの着用が呼びかけられている山の一覧と、軽量なヘルメットの候補は、登山ヘルメットが必要な山の確認方法をまとめた記事で扱っています。乾徳山のように鎖場を含む山に行く前の判断材料にしてください。
ストックを持っていく場合は、岩場の手前でザックに固定してください。ストックを手に持ったまま、あるいは手首にぶら下げたまま鎖場に取りつくと、両手が自由に使えず、ストックが岩に引っかかって体のバランスを崩す原因になります。岩場で両手を空けることは、この山の装備選びの前提です。
大平高原へ向かう道路|市道の「通行止め解除」は2024年7月時点、県営林道乾徳山(南)線の通行禁止は別の区間
大平高原ルートを選ぶ場合、登山口までの道路の状況を確認する必要があります。ここで取り違えやすいのが、名前の似た2つの道路の情報です。1つは山梨市が管理する市道、もう1つは山梨県が管理する県営林道です。どちらも大平高原の周辺にありますが、区間も、決めている主体も、現在の表示も違います。
まず市道です。山梨市の大平高原の案内ページには、国道140号から大平高原へ向かう市道について「通行止め解除」と表示されています。この表示には「令和6年7月12日現在」と書かれており、2024年7月時点で通行止めが解除されていたことがわかります。ただ、それ以降にこの表示が更新されたかどうかは確認できていません(2026年9月13日確認時点)。
2024年7月時点で通行止めは解除されていましたが、2026年現在の状況は、この市のページだけでは判断できません。道路は大雨や台風のあとに再び通行止めになることがあります。大平高原から登る日は、出発前に山梨市へ道路の状況を確認してください。確認先は山梨市の大平高原の案内ページ(https://www.city.yamanashi.yamanashi.jp/soshiki/17/14047.html)です。
次に県営林道です。山梨県の林道規制情報によると、県営林道乾徳山(南)線は、大平を起点にして三富川浦広瀬の方向へ抜ける林道で、路肩の決壊により通行禁止になっています。解除の時期は未定と表示されています(2026年9月13日確認時点)。
この県営林道の通行禁止は、大平高原の駐車場へ向かう道が閉じているという意味ではありません。通行禁止になっているのは、大平を起点にして別の方向へ抜ける区間です。「乾徳山」という名前の林道が通行禁止だからといって、大平高原へ行けないと結論するのは早すぎます。
編集部の見立て:道路の規制情報を探すと、「乾徳山(南)線 通行禁止」という表示が目に入ります。名前だけを見ると、乾徳山の登山口へ行く道が閉じていると読んでしまいがちです。規制情報は、道路の名前ではなく「どこからどこまでの区間か」と「誰が管理している道か」で読むのが、取り違えを防ぐいちばんの方法だと考えています。
| 道路 | 管理・表示している主体 | 区間 | 表示されている状態 |
|---|---|---|---|
| 市道 | 山梨市 | 国道140号から大平高原へ向かう道 | 通行止め解除(令和6年7月12日現在の表示) |
| 県営林道乾徳山(南)線 | 山梨県 | 大平を起点に三富川浦広瀬へ抜ける区間 | 路肩決壊で通行禁止・解除時期未定 |
この2つの道路の違いは、規制の性格の違いでもあります。市道の通行止めや解除は道路を管理する山梨市の判断で、県営林道の通行禁止は林道を管理する山梨県の判断です。どちらも登山道の規制ではなく、道路の管理者による車の通行に関する措置です。登山道そのものの通行については、この2つの情報からは何もわかりません。
出発前の確認は、次の順番で行うと抜けが出にくくなります。
- 山梨市の大平高原の案内ページを開き、市道の表示が「令和6年7月12日現在」のままか、新しい日付に更新されているかを見る
- 表示が古いままなら、山梨市に電話などで現在の通行状況を問い合わせる。大雨や台風のあとは特に確認する
- 山梨県の林道規制情報で、県営林道乾徳山(南)線の表示を見る。ただしこれは大平から別方向へ抜ける区間の情報だと理解して読む
もし市道が通れないとわかった場合は、その日は徳和から登る計画に切り替えるのが現実的です。徳和ルートは体力度が1段階上がる分、歩き始めの時刻を早める必要があります。前の章の時刻表で、歩き始めがどれだけ早くなるかを確かめてから、切り替えるかどうかを決めてください。
道路の情報は、登山の計画のなかでもっとも古くなりやすい情報の1つです。この記事に書いた表示も、2026年9月13日に確認した時点のものです。記事の数字が古くなっていることを前提に、出発の前日と当日の朝に、自分で公式のページを見に行く習慣をつけておくと安心です。
ツキノワグマ|山梨県内の目撃情報と、2026年9月の徳和での子グマ目撃
乾徳山に登る前に、クマの情報も確認しておく必要があります。山梨県の登山・山岳情報のページは、県内でツキノワグマの目撃情報が寄せられているとして、クマへの対策と細心の注意を呼びかけています(2026年9月13日確認時点)。この呼びかけは乾徳山に限った情報ではなく、山梨県内の山全体を対象にしたものです。
乾徳山の登山口に近い場所の情報もあります。山梨市は、三富徳和の乾徳神社の近くで子グマ1頭が目撃されたと公表しています。このお知らせのページは2026年9月2日に更新されています(2026年9月13日確認時点)。徳和は乾徳山の登山口がある集落で、ちょうど秋の登山シーズンに入る時期の情報です。
ここで、クマの種類について書き分けておきます。山梨県内で目撃されているクマがツキノワグマであることは、県の公式ページが明記しています。一方、徳和での目撃を伝える山梨市のお知らせは「子グマ」とだけ書いており、種名の記載はありません。県の情報と市の情報は、対象の範囲も書き方も違うので、分けて読みます。
編集部の見立て:登山口のすぐ近くでの目撃情報は、山の中の話ではなく、車を降りた直後から関係する話です。徳和から登る人は、樹林帯に入る前から対策を始めたほうがいいと考えています。クマの情報は日々更新されるので、この記事の内容より、出発前に市と県のページを直接見ることを優先してください。
クマの目撃情報を見るときは、「どこで」「いつ」「何頭」の3つを確認します。今回の山梨市の公表では、場所が三富徳和の乾徳神社近く、頭数が子グマ1頭です。こうした情報は、同じ地域で続けて出ることもあれば、しばらく出ないこともあります。1件の情報で山全体の危険度を決めるのではなく、出発前に最新の情報が出ていないかを確認する習慣が役に立ちます。
クマの出没情報をどこで調べるか、都道府県ごとの公式マップの探し方と、出発前に確認する手順は、登山前にクマ出没情報を調べる3段階の確認手順をまとめた記事で整理しています。山梨県以外の山にも使える手順なので、乾徳山の前に一度通して読んでおくと、次の山行でも同じ順番で確認できます。
- 出発前日と当日の朝に、山梨市の目撃情報のお知らせを確認したか
- 山梨県の登山・山岳情報のページで、県内の注意喚起を確認したか
- クマ鈴やラジオなど、人の存在を知らせる手段を持っているか
- 子グマを見かけても近づかず、静かにその場を離れる判断を決めているか
- 同行者と、クマに出会ったときの行動をあらかじめ話し合ったか
子グマを見かけて、かわいいからと近づいたり、写真を撮ろうと立ち止まったりしないでください。子グマがいる場所の周辺に、姿の見えない別のクマがいる可能性を考えて行動します。見かけたら、背中を見せて走らず、静かにその場から離れます。
クマへの備えとして、行動する時間帯を考えることも一つの方法です。薄暗い時間帯は、見通しが悪く、クマに気づくのが遅れやすくなります。歩き始めを早めて、明るいうちに下山を終える計画にしておくと、暗い樹林帯を歩く時間を減らせます。
そのうえで、予定より下山が遅れたときの備えとしてヘッドランプは欠かせません。Leproのヘッドライトは、USB-Cで充電できる300ルーメンのLEDヘッドランプです。乾電池の買い置きを管理するより、出発前夜に充電して持っていきたい人に向いています。日帰りの予定でも、下山が遅れて樹林帯が暗くなる場面に備えて、ザックに入れておきます。
遭難事例から考える|2025年9月の鎖場での滑落、2024年4月の下山中の転倒
乾徳山では、実際に山岳遭難が起きています。山梨県警察は、県内で起きた山岳遭難の事例を公表しており、そのなかに乾徳山の事例が含まれています。この記事では、個人が特定されうる情報は載せず、事故の起き方だけを取り上げます。
1つ目は、2025年9月に鎖場を通過している最中に足を滑らせて滑落し、負傷者が出た事例です(山梨県警察の山岳遭難ファイル、2026年9月13日確認時点)。救助の要請につながっています。まさにこの記事で扱ってきた、鎖場の通過で起きた事故です。
2つ目は、2024年4月に下山している最中に足を滑らせて転倒し、重傷者が出た事例です(山梨県警察の春山期間の資料、2026年9月13日確認時点)。こちらは鎖場ではなく、下りの途中で起きています。
編集部の見立て:この2つの事例を並べると、乾徳山の危険は山頂直下の鎖場だけにあるわけではないことがわかります。登りの鎖場で起きた事故と、下りの途中で起きた事故です。岩場を越えて山頂に立ったあと、気持ちが緩んだ下りで足を滑らせることは、どの山でも起こりえます。山頂は折り返し地点であって、ゴールではないと考えています。
2つの事例に共通しているのは、「足を滑らせた」という点です。滑る原因は、濡れた岩、落ち葉、砂の浮いた道、疲れて足が上がらなくなったこと、と人によってさまざまです。乾徳山の行程は二次資料の合計で休憩なし7時間15分と長く、下りに入るころには脚の疲れがたまっています。事故を防ぐうえで、登りの岩場と同じくらい、疲れた状態で迎える下りに注意を向けます。
事例から引き出す判断:鎖場での滑落と下山中の転倒は、どちらも「足を滑らせる」ことから始まっています。対策は、岩が濡れている日は鎖場の手前で戻ることを選択肢に入れること、そして下りでは歩幅を小さくして、足を置く場所を1歩ずつ確かめることです。どちらも、時間の余裕があって初めてできる判断です。
万が一のときに備えて、登山届を出しておくことも大切です。山梨県警察は、登山計画をオンラインで提出する方法として、コンパスとYAMAPからの提出を案内しています(2026年9月13日確認時点)。コンパスとは2015年4月24日に協定を締結しており、コンパスからは全国の山域への届出や、家族・友人との計画の共有ができるとしています。YAMAPで登山計画を作って提出すると、協定を結んでいる自治体へ自動で提出されます。
山梨県の登山・山岳情報のページでは、登山計画書に書く項目として、氏名・住所・年齢・性別・電話番号、期間と行程、装備・飲料水・食糧、緊急連絡先、通信手段などを挙げています。行程の欄には、徳和と大平高原のどちらから入るか、どちらへ下りるかを具体的に書いておくと、万が一のときに捜索の範囲を絞りやすくなります。
登山届を出したことで安心して、計画を家族や知人に伝えないまま出かけないでください。登山届は警察に計画を伝える手段で、下山が遅れたことにいち早く気づくのは身近な人です。何時までに下山の連絡がなければ通報してほしいか、その時刻も合わせて伝えておきます。
足を滑らせる事故を減らすには、濡れた岩や道で体を冷やさず、動きを妨げない服装も関係します。雨の日の下りで、濡れたズボンが脚にまとわりつくと、足の運びが重くなります。ミレーの「ティフォン ストレッチ トレック パンツ」は、名前のとおり伸縮性を持たせた防水のパンツです。雨具のズボンも脚の動きやすさで選びたい人、岩場で脚を大きく上げる場面を想定する人に向いています。
紅葉の時期|乾徳山単独の公式な見頃情報は見つからず、周辺の目安は9月下旬〜10月上旬
乾徳山は、国師ヶ原や扇平の草原があることから、秋に登りたいと考える人も多い山です。ただ、紅葉の見頃については、2026年9月13日時点で、乾徳山だけを対象にした公式な見頃の情報は見つかりませんでした。
参考になるのは、山梨市観光協会が出している広域の紅葉情報で、周辺の目安として9月下旬から10月上旬という情報が載っています。これはあくまで周辺の地域を含めた広い範囲の目安で、乾徳山のどの標高で、いつ色づくかを示したものではありません。
「乾徳山の紅葉は9月下旬から10月上旬」と決めて日程を組まないでください。9月下旬〜10月上旬は周辺の目安で、乾徳山単独の見頃ではありません。紅葉の時期は年によって前後し、同じ山でも標高によって色づく時期が違います。「今年は何日が見頃」という断定はできないので、直前の情報で判断します。
紅葉の時期を読むときに役立つのが、標高という考え方です。一般に、紅葉は標高の高いところから始まり、だんだん低いところへ下りてきます。乾徳山は山頂が2,031mで、登山口との間に大きな高低差があるため、山頂付近と登山口付近では色づく時期がずれると考えるのが自然です。
編集部の判断:紅葉を目当てにするなら、「見頃の日を当てる」より「見頃の前後の幅のなかで、天気と混雑の条件がいい日を選ぶ」ほうが現実的だと考えています。乾徳山は鎖場を含む山なので、紅葉がきれいでも雨の日に岩場を越える計画は立てないほうがいい。見頃と天気のどちらを優先するかと聞かれたら、天気を優先します。
関東周辺の山の紅葉は、標高から見頃を読むと日程を決めやすくなります。見頃の読み方と、秋に日が短くなることを踏まえた下山時刻の決め方は、関東の紅葉登山で日帰りの山を標高から選ぶ方法をまとめた記事で扱っています。乾徳山のように標高差の大きい山を秋に計画するときの考え方の土台になります。
紅葉の時期の週末は、登山者が増えることを前提に計画を立てます。徳和側の駐車場は20台と50台、大平高原側は30台です。登山者が集中する日は、これらの駐車場が早い時間に埋まる可能性があります。混雑時刻の公式な記載はないため、紅葉の時期は、ふだんより早く到着する計画にしておくのが安心です。
混雑は、山頂直下の岩場の待ち時間にも影響します。鎖場は1人ずつ通過するのが基本なので、人が多い日は取りつきの手前で順番を待つことになります。歩行時間の7時間15分に待ち時間は入っていないため、紅葉の時期の週末は、休憩と待ち時間を多めに見積もってください。
秋の山では、服装の調整も欠かせません。登りの樹林帯では汗をかき、開けた草原や山頂では風で体が冷えます。汗をかいたまま冷たい風を受けると、体温が一気に奪われます。肌に触れる1枚目の服を、汗を吸っても乾きやすい素材にしておくことが、秋の山での体温管理の土台になります。
モンベルの「ジオライン L.W. Tシャツ」は、同社の化学繊維の肌着ジオラインのなかで、薄手(L.W.)にあたるTシャツです。登りで汗をかきやすい人、汗が冷えて体温を奪われるのを避けたい人に向いています。この上に、気温に合わせて保温着や雨具を重ねていく使い方を想定しています。
日帰りで組めるかの最終判断|体力度・合計時間・岩場・当日の天気を1枚にまとめる
ここまでの情報を踏まえて、乾徳山を日帰りで計画できるかどうかを最終的に判断します。判断の材料は、体力度、行程の合計時間、山頂直下の岩場、そして当日の天気と道路・クマの情報です。これらを1つずつ自分に当てはめていきます。
体力度は、徳和ルートが3、大平高原ルートが2です。自分がこれまで歩いた山のグレーディングと比べて、どのくらいの位置にあるかを確かめます。行程の合計時間は、徳和を起点とする日帰りコースで、二次資料の合計がおよそ7時間15分です。これに休憩と待ち時間を足した行動時間を、自分がこれまでに通しで歩いた時間と比べます。
| 判断の材料 | 日帰りで組める状態 | 組み直したほうがいい状態 |
|---|---|---|
| 体力度 | 体力度3前後の山を、後半もペースを落とさず歩いた経験がある | 体力度2までの山しか歩いたことがない(まず大平高原ルートを検討する) |
| 行動時間 | 休憩込みで8時間を超える行程を、通しで歩いた経験がある | 行動時間5〜6時間の山で、後半に脚が止まった経験がある |
| 岩場 | 鎖場のある山を通過した経験があり、三点支持の手順を説明できる | 鎖場の経験がなく、高さのある場所で体が固まった経験がある |
| 当日の条件 | 天気が安定し、道路とクマの最新情報を確認済み | 雨の予報、または道路・クマの情報が確認できていない |
編集部の見立て:この表で「組み直したほうがいい状態」に1つでも当てはまるなら、乾徳山を諦めるのではなく、計画の組み方を変えるのがいいと考えています。体力に不安があるなら大平高原から、岩場が初めてなら先に鎖場の短い山で練習してから、雨の予報なら日を改めて。条件を1つずつ解消していけば、この山は十分に目標にできる山です。
日帰りの計画で決めておきたいのが、引き返しの線です。この記事では、2つの線を持つことをすすめます。1つ目は「時刻の線」で、山頂に到着する予定の時刻をあらかじめ決めておき、その時刻を過ぎたら山頂を踏まずに戻る、というものです。
山頂到着の予定時刻は、登山地図の区間の時間から自分で決めます。たとえば計画上の山頂到着を12時と置いた場合、12時30分を過ぎても山頂直下の岩場の手前にいるなら、その日は戻る、と決めておきます。これは計算のしかたを示すための仮の値で、12時という時刻に公式の根拠があるわけではありません。自分の歩き始めの時刻と、下りにかかる時間から逆にたどって、自分の値を決めてください。
2つ目は「状態の線」で、岩が濡れている、鎖場で渋滞している、脚や握力が残っていない、のいずれかに当てはまったら、時刻に関係なく戻る、というものです。鳳岩の章の表で整理した4つの材料が、この状態の線にあたります。
引き返しの線は2本持つ:時刻の線(予定の山頂到着時刻を一定時間過ぎたら戻る)と、状態の線(岩の濡れ・渋滞・手足の疲れ)の2本です。どちらか1本に触れた時点で戻る、と出発前に決めておくことが、現地で迷わないための準備です。
天気による判断では、雨の扱いがとくに大切です。乾徳山は山頂直下に鎖場があり、濡れた岩は滑りやすくなります。出発前の予報で雨が見込まれる日は、日程をずらすことを第一に考えます。歩き始めてから雨が降り出した場合は、鎖場に取りつく前に戻る判断を検討してください。国師ヶ原の高原ヒュッテは、天気の急変時に身を寄せる場所として頭に入れておきます。
雨の中を下る可能性がある日は、上下の雨具で体を濡らさないことが大切です。ミレーの「ティフォン ストレッチ トレック パンツ(Typhon 50000 ST Trek Pant)」は、ティフォンのシリーズの防水パンツで、伸縮性を持たせたトレッキング向けのモデルです。雨具の上着だけでなくズボンも、脚の動きを妨げないものを選びたい人に向いています。
体力度2の山で、長い行程の時間をどう見積もるかを練習したい場合は、大菩薩嶺の体力度と往復の時間を上日川峠から考える記事が参考になります。同じ山梨県の山で、グレーディングと時間の読み方を身につけてから乾徳山に向かう、という順番もあります。
よくある質問
Q. 乾徳山の標高は何メートルですか?
2,031mです。山梨市の公式案内と、山梨県の観光ピッチマップの両方で同じ値になっています(2026年9月13日確認時点)。途中の地点(銀晶水・国師ヶ原・扇平など)の個別の標高は、確認した公式ページには数値が見当たりませんでした。
Q. 徳和と大平高原、どちらから登るのがいいですか?
体力に不安があり、岩場の手前で脚を残したいなら大平高原ルート(体力度2)、バスで行きたい人や駐車場の受け皿が大きいほうを選びたい人は徳和ルート(体力度3)が合います。どちらも難易度はCで、山頂直下の岩場は共通して通ります。大平高原を選ぶ場合は、出発前に道路の状況を山梨市に確認してください。
編集部の判断:迷ったときは、「山頂直下の岩場に着いたときに、どれだけ体力が残っているか」で選ぶのがいいと考えています。岩場の難しさはどちらの登山口でも変わらないので、その手前での余力の差が、登山口の違いのいちばん大きな意味です。
Q. 鳳岩の鎖場は巻き道で避けられますか?
山梨市の公式案内は「頂上直下の鎖場(写真の箇所)のみ巻き道あり」と書いていますが、それが鳳岩そのものを指すのか、現在も通行できるのかは公式に明記がありません(2026年9月13日確認時点)。巻き道で避けられる前提で計画せず、現地の案内板と道標に従ってください。鎖場の手前で戻る判断ができる時刻と体力を残しておくことが大切です。
Q. 高原ヒュッテに泊まることはできますか?
高原ヒュッテは、山梨市が所有・直営する無人の避難小屋で、主な役割は休憩所とトイレです(山梨市の施設カルテ、2026年9月13日確認時点)。宿泊を前提にした山小屋ではないため、泊まる計画には組み込まず、悪天候などの緊急時に身を寄せる場所として考えてください。トイレは冬期閉鎖と案内されています。
Q. 日帰りでどのくらいの時間がかかりますか?
自治体の公式ページには区間ごとのコースタイムの数値が見当たりませんでした。山と高原地図などの資料によると、徳和を起点とする日帰りコースは区間の合計がおよそ7時間15分、距離は10.6kmです。実際の行動時間は、ここに休憩と鎖場での待ち時間を足した長さになります。
編集部の見立て:時間の質問には、つい1つの数字で答えたくなります。けれど乾徳山の7時間15分は、休憩も待ち時間も入っていない最短の目安です。この数字に自分の休憩の取り方を足した値こそが、その人にとっての本当の所要時間だと考えています。
まとめ:今日やることは1つ
乾徳山は、標高2,031mの山梨百名山で、徳和と大平高原の2つの登山口から登れます。徳和ルートは体力度3、大平高原ルートは体力度2で、難易度はどちらもCです。登山口の選択で前半の長さが変わり、山頂直下の岩場はどちらから入っても共通して通ります。
計画で押さえておきたいのは、公式に確認できることと、確認できないことを分けることでした。駐車場の台数、グレーディング、高原ヒュッテの性格は公式に確認できます。一方、区間ごとのコースタイム、鳳岩の巻き道の現況、水場の飲用可否、大平高原へ向かう市道の2026年の状況は、公式に明記がないか、表示が古いままです。
編集部の判断:この山の計画でいちばん大切なのは、登れるかどうかを決めることより、どこで戻るかを出発前に決めておくことだと考えています。時刻の線と状態の線の2本を持って出かければ、現地で迷う場面はぐっと減ります。
そして今日やることは1つです。山梨市の乾徳山の案内ページを開き、自分が使う登山口と駐車場の表示を、自分の目で確認してください。この記事の情報は2026年9月13日時点のもので、道路やクマの情報は日々変わります。
- 山梨市の乾徳山(徳和)または大平高原の案内ページを開き、使う登山口・駐車場・道路の表示を確認する
- 山梨市のクマ目撃情報と、山梨県の登山・山岳情報のページで、最新の注意喚起が出ていないかを見る
- 歩き始めの時刻と山頂到着の予定時刻を決め、コンパスかYAMAPで登山届を出し、家族に下山予定時刻を伝える
編集部の見立て:乾徳山は、草原の開放感と岩場の緊張感を1日で味わえる、計画しがいのある山です。情報がばらばらに散っている分、出発前に自分で確かめる手間はかかりますが、その手間が当日の安全に直結します。確認を終えたら、あとは天気のいい日を選んで出かけてください。
出典
- 山梨市「乾徳山」(徳和・標高・グレーディング・駐車場・巻き道・高原ヒュッテのトイレ)https://www.city.yamanashi.yamanashi.jp/soshiki/17/14049.html(2026年9月13日確認)
- 山梨市「大平高原」(グレーディング・大平駐車場・市道の通行止め解除の表示)https://www.city.yamanashi.yamanashi.jp/soshiki/17/14047.html(2026年9月13日確認)
- 山梨県 観光ピッチマップ(八ヶ岳・秩父エリア)https://www.pref.yamanashi.jp/kankou-sgn/pitchmap/04_yatsugatake_chichibu.html(2026年9月13日確認)
- 山梨県 山のグレーディング https://www.pref.yamanashi.jp/kankou-sgn/shintyaku/grading.html(2026年9月13日確認)
- やまなし観光推進機構「鳳岩」https://www.yamanashi-kankou.jp/kankou/spot/p1_4716.html(2026年9月13日確認)
- 山梨市 施設カルテ(高原ヒュッテ)https://www.city.yamanashi.yamanashi.jp/uploaded/attachment/3889.pdf(2026年9月13日確認)
- 山と高原地図Web 乾徳山のコース https://yamachizu.jp/course/331(2026年9月13日確認)
- 山梨市観光協会 乾徳山コース資料 https://www.yamanashishi-kankou.com/wp/wp-content/uploads/2017/01/7eeb20090653e33f03acf945055a572c.pdf(2026年9月13日確認)
- 山梨県 登山・山岳情報 https://www.pref.yamanashi.jp/kankou-sgn/tozan_sangakujouhou.html(2026年9月13日確認)
- 山梨市 クマの目撃情報 https://www.city.yamanashi.yamanashi.jp/soshiki/7/20803.html(2026年9月13日確認・ページ更新2026年9月2日)
- 山梨県警察 山岳遭難ファイル https://www.pref.yamanashi.jp/police/p_tiiki/sangaku/sounanfile3709.html(2026年9月13日確認)
- 山梨県警察 春山期間の山岳遭難資料 https://www.pref.yamanashi.jp/documents/26740/haruyama.pdf(2026年9月13日確認)
- 山梨県警察 山岳情報(登山届の提出方法)https://www.pref.yamanashi.jp/police/sangaku/(2026年9月13日確認)
- 山梨県 林道規制情報(県営林道乾徳山(南)線)https://www.pref.yamanashi.jp/rindoujyouhou/kisei.php?id=89(2026年9月13日確認)
