登山の塩分補給|公的目安0.1〜0.2%食塩水から、塩タブレットと飲料の配分を決める

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夏の登山で「水だけでは足りない、塩分も摂れ」と言われます。ところが、その先の「何を、どれだけ、いつ足すのか」になると、案内は急に曖昧になります。検索して出てくる記事の多くは、塩タブレットの商品紹介に着地していて、量の根拠までは書かれていません。持ち物は決まるのに、判断の基準は手元に残らないという状態です。

この記事は、そこを埋めるために書いています。結論から書くと、環境省・厚生労働省・日本スポーツ協会の公的資料が示しているのは「1日に何グラム摂れ」という総量ではなく、飲むものの濃度と、飲む間隔です。0.1〜0.2%の食塩水、またはナトリウム40〜80mg/100mLの飲料を、20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度。この形なら、いま自分のザックに入っている飲料が当てはまるかどうかを、その場で判定できます。

もうひとつ、先に断っておきたいことがあります。「汗を1L かくとナトリウムを◯mg失う」という一律の数値は、2026年9月1日時点で確認した公的資料の範囲では確定できませんでした。厚生労働省の資料は汗中のナトリウム濃度と発汗量の関係を図で示していますが、登山者全員に当てはめられる単一の値は示していません。ですからこの記事は、喪失量の推定から入る組み立てを取りません。公的に示されている濃度と間隔を軸にして、その日の条件で足す・足さないを決める形にします。

そして、これが一番大事なところです。塩分は摂れば摂るほど良いものではありません。高血圧・腎臓病・心疾患などで塩分制限を受けている人が、この記事を読んで自己判断で塩分を増やすことは避けてください。厚生労働省は、塩分摂取が制限される疾患がある場合には主治医・産業医等への相談が必要だと記載しています。飲む水の量そのものの計算は登山に必要な水の量の計算式と経口補水液の使い分けで扱っているので、そちらと往復しながら読んでください。

  • 公的資料が示すのは総量ではなく濃度と間隔。0.1〜0.2%食塩水(水1Lに食塩1〜2g)、ナトリウム40〜80mg/100mL、20〜30分ごとにカップ1〜2杯という目安の出どころ
  • 「汗1L=ナトリウム◯mg」という一律値が公的資料で確定できない理由と、それでも判断できる代わりの物差し
  • 「食塩相当量」と「ナトリウム量」を同じ数字として扱ってはいけない理由と、公表値の読み替え方
  • その日の行動時間・暑さ・食事の内容で、足す/足さないを分けるための条件表
  • 粉末・液体・固形という3つの形態の違いと、荷物と行動時間による選び分け
  • 経口補水液とスポーツドリンクの公表値がどれだけ違うか(オーエスワンとポカリスエットの製品表示を同じ100mL基準で比較)
  • 塩分制限を受けている人の注意、低ナトリウム血症(水だけを大量に飲む危険)、症状が出たときに補給ではなく行動を止める判断

汗で失うのは水だけではない。ただし「1Lで◯mg」は公的資料に書かれていない

汗は真水ではありません。環境省の熱中症環境保健マニュアルは、大量に発汗した状態で水だけを飲み続けると、体内のナトリウム濃度が下がり、低ナトリウム血症や熱けいれんにつながる場合があることを記載しています(2026年9月1日確認)。つまり「水分を摂っているのに調子が悪くなる」という状態が、条件によっては起こりうる、というのが公的資料の立場です。

ではその汗に、どれだけのナトリウムが含まれているのか。ここが多くの記事で数字が独り歩きしているところです。厚生労働省の資料は、汗中のナトリウム濃度が発汗量に応じて変わることを図で示しています。加えて、汗のナトリウム濃度は血液より薄いこと、発汗量や暑熱順化(暑さへの慣れ)の影響を受けることも説明されています。変数が3つ以上あるものを、1つの定数に丸めることはできません。

編集部の見立て:ここで「汗1Lにつきナトリウム◯mg」という数字を出せば、記事としては読みやすくなります。ただ、その数字の原典を2026年9月1日時点で公的資料に確認できていません。確認できないものを書かない方針を取ります。代わりに、公的に確認できる濃度の目安を判断の軸にします。

この違いは実務上も大きいものです。喪失量を推定して同じ量を足すという考え方は、推定が外れたときに過不足の両方向へ振れます。一方、飲むものの濃度を目安の範囲に合わせるという考え方は、飲んだ量が多くても少なくても、入ってくる水と電解質の比率が大きく崩れません。個人差の影響を受けにくいのは後者です。

この記事の立て方:①汗で失うナトリウム量の一律値は、2026年9月1日時点で確認した公的資料の範囲では確定できない。②だから喪失量の推定からは入らない。③代わりに、環境省・厚生労働省が示す「0.1〜0.2%食塩水、またはナトリウム40〜80mg/100mL」という濃度と、「20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度」という間隔を軸に置く。④その上で、その日の条件によって足す・足さないを分ける。

暑熱順化についても触れておきます。厚生労働省の説明にあるとおり、暑さに慣れているかどうかで汗の性質は変わります。シーズン初めの登山と、真夏に何度も歩いたあとの登山では、同じ人でも条件が同じではないということです。「去年これで足りたから今年も同じ」という組み立てが崩れる余地は、ここにあります。

暑熱順化という言葉は、熱中症の話でよく出てきます。この記事では塩分側の話に絞りますが、暑さ指数(WBGT)そのものの読み方や、症状が出たときの見分け方は別記事にまとめています。判断の入口が「暑さ」なら、先にWBGTの基準値と登山での熱中症対策を読んでから、この記事に戻ってくる順番のほうが噛み合います。

もう一点。汗で失われるのはナトリウムだけではありません。カリウムやマグネシウム、塩素なども含まれます。ただし公的な目安として明確に数値が示されているのは、食塩相当量とナトリウム量です。他の電解質については、製品の栄養成分表示を見て比較することはできますが、「登山中にこれだけ足せ」という公的な数値目安は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。

編集部の見立て:カリウムやマグネシウムを強調する説明は多いのですが、公的資料が数値で示しているのは食塩相当量とナトリウムのほうです。書けるところと書けないところを混ぜないほうが、読者が自分で判断できる余地は広がります。

公的な目安は「量」ではなく「濃度と間隔」で示されている

ここが記事の中心です。環境省の熱中症環境保健マニュアルは、汗を多くかく場合の飲料として0.1〜0.2%の食塩水を挙げ、これは水1Lに対して食塩1〜2gにあたると記載しています。飲料で言えばナトリウム40〜80mg/100mLが目安です(2026年9月1日確認)。厚生労働省の職場向け熱中症予防情報も、暑さ指数の基準値を超える場合の目安として、同じ0.1〜0.2%食塩水またはナトリウム40〜80mg/100mLの飲料を示しています。

間隔についても数字があります。厚生労働省のページは、こうした飲料を20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度という目安で案内しています。同時に、必要量は作業強度などによって異なるという注記も置かれています。一律の量ではない、と公的側が明記している点は、読み落とさないでください。

編集部の見立て:職場の作業と登山は同じではありません。ただ「暑い環境で長時間動き続ける」という条件は重なります。登山者向けに数値化された公的目安が見つからない以上、条件が近い公的目安を、条件の違いを承知の上で借りる。これが現実的な折り合いだと考えています。

日本スポーツ協会の資料も並べておきます。運動時の飲料について、0.1〜0.2%の食塩と糖質を含むものが効果的とし、糖質は4〜8%という範囲を示しています。食塩相当量で言えば0.1〜0.2g/100mLが0.1〜0.2%食塩水に相当するという説明もあります。なお同協会の「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」は第6版が令和7年6月発行で、第5版の冊子販売は2025年6月30日に終了しています(2026年9月1日確認)。

出どころ 示している目安 単位の形 前提条件
環境省 熱中症環境保健マニュアル 0.1〜0.2%食塩水(水1Lに食塩1〜2g)、ナトリウム40〜80mg/100mL 食塩の濃度/ナトリウム量 汗を多くかく場合
厚生労働省 職場の熱中症予防情報 0.1〜0.2%食塩水またはナトリウム40〜80mg/100mLを、20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度 濃度+間隔+1回量 暑さ指数の基準値を超える作業。必要量は作業強度等で異なると注記
日本スポーツ協会 食塩0.1〜0.2%、糖質4〜8%を含む飲料 食塩の濃度+糖質の濃度 運動時。食塩相当量0.1〜0.2g/100mLが相当すると説明
環境省 マニュアル(水分量側) 運動前後の体重減少を2%以内に収めるよう水分を摂る 体重の減少率 運動前後で体重を測れる場合

この表を眺めると、3者が示しているものが同じ形をしていることが分かります。総量ではなく濃度です。濃度で示されているということは、飲む量が人によって違ってよい、という設計だということです。たくさん汗をかく人はたくさん飲む。その結果、入ってくるナトリウムも比例して増える。個人差を吸収する仕組みがあらかじめ組み込まれています。

編集部の見立て:「◯g摂れ」と言われると守れているか分からなくなりますが、「この飲み物でよいか」なら現物のラベルを見れば判定できます。判断の負荷が全く違います。この記事が濃度を軸に置くのは、そこが理由です。

体重の項目にも一言添えます。環境省のマニュアルは、運動前後の体重減少を2%以内に収めるよう水分を摂る、という目安を示しています。体重60kgなら1.2kgが上限にあたる計算です。山では毎回体重計に乗れませんが、日帰り登山を何度か繰り返す人なら、出発前と帰宅後の体重を数回測るだけで、自分の発汗の傾向がおおまかにつかめます。

体重の測定は、水をどれだけ持つかという計画側の話にも直結します。持っていく水の量そのものの決め方、水場やハイドレーションの扱いは水分補給の必要量の計算の側にまとめてあります。この記事では、その水に何を溶かすか・何を一緒に摂るかだけを扱います。

「食塩相当量」と「ナトリウム量」を同じ数字として読まない

ここでつまずく人が多いので、独立した節にします。公的資料と製品表示では、塩分の表し方が2種類あります。ひとつは食塩相当量(g)、もうひとつはナトリウム量(mg)です。この2つは同じものを指していますが、数字は一致しません。「0.2%」と「80mg/100mL」を並べて、どちらが多いかを直感で比べようとすると間違えます。

実務的な扱い方はこうです。日本の食品表示では、栄養成分表示に食塩相当量が書かれているのが一般的です。したがって、手元の飲料を公的目安と突き合わせるときは、まず食塩相当量の側で見るのが早い。日本スポーツ協会の資料が説明しているとおり、食塩相当量0.1〜0.2g/100mLが0.1〜0.2%食塩水に相当します。つまりラベルの100mLあたり食塩相当量が0.1〜0.2gの範囲に入っていれば、公的目安の濃度に収まっている、と読めます。

編集部の見立て:この読み替えを1回覚えるだけで、コンビニの棚の前で判定ができるようになります。100mLあたり食塩相当量0.1〜0.2g。この12文字を覚えて帰るだけでも、この記事を読んだ価値はあります。

逆方向の換算、つまりナトリウム量から食塩相当量を計算する式も存在しますが、この記事では計算式を持ち出しません。理由は単純で、メーカーが公表していない換算値を記事側で作ると、それがメーカー公表値であるかのように読まれてしまうからです。製品ごとに公表されている形をそのまま引くほうが、誤解が起きません。

ラベルの見方でもうひとつ注意があります。栄養成分表示は「100mLあたり」で書かれている製品と、「1本あたり」「1袋あたり」で書かれている製品が混在しています。500mLのペットボトルで1本あたりの表示を見て、それを100mLの目安と比べてしまうと、5倍ずれます。単位が何あたりの数字かを、必ず先に確認してください。

粉末製品の場合はさらに一段あります。粉末は溶かす水の量で濃度が変わるため、製品が指定している希釈量を守らないと、目安の濃度から外れます。少なめの水で濃く作れば濃度は上がり、多めの水で薄めれば下がる。当たり前のことですが、山で目分量になりやすい場面です。ボトルの容量が製品の指定量と合っているかを、家で一度確認しておくと安全です。

ボトルの側の話は登山用の水筒・ハイドレーションの選び方にまとめています。粉末を使うなら、口径が広くて粉を入れやすいか、溶かすときに振れるか、糖分が入った液体を入れたあとに洗いやすいかが選択の分かれ目になります。ハイドレーションのチューブに糖分入りの液体を通すかどうかは、洗浄の手間と直結する判断です。

その日の条件で「足す/足さない」を決める

ここからが実際の判断です。塩分は毎回同じだけ足すものではありません。行動時間が短く、汗をあまりかかず、しっかり食事を摂っている日に、さらに塩分を上乗せする理由は薄い。逆に、真夏の低山を長時間歩いて、朝食を軽く済ませているような日は、条件が重なります。判断すべきなのは「持つか持たないか」ではなく「今日は足す条件が揃っているか」です。

編集部の見立て:塩タブレットを毎回ザックに入れておくこと自体は、重さも体積もわずかなので合理的です。問題は「入れてあるから食べる」になってしまうこと。持つ判断と、食べる判断は分けたほうがよいと考えています。

足す条件として、公的資料から拾えるものを整理します。厚生労働省の目安は、暑さ指数の基準値を超える環境という前提を持っています。日本スポーツ協会・登山研修所の資料には、行動時間が3時間を超える場合の電解質補給に触れた記載が確認できます(ただし本文全体は開けておらず、検索表示での確認にとどまります)。環境省は、汗を多くかく場合という条件を置いています。共通しているのは、暑さ・時間・発汗量という3つの軸です。

その日の条件 当てはまるとき 当てはまらないとき 出どころの前提
暑さ 暑さ指数が高い日、風の通らない樹林帯、無風の稜線 気温が低く、汗が乾く前に冷える日 厚生労働省は暑さ指数の基準値超えを前提に目安を示している
行動時間 行動が長時間に及ぶ計画、コースタイムを大きく超えそうな日 2時間程度で下山する予定の低山 登山研修所資料に3時間超で電解質補給に触れた記載(検索表示での確認)
発汗の量 シャツが絞れるほど濡れる、乾いたあとに白い跡が残る 汗をほとんどかいていない 環境省は「汗を多くかく場合」を条件に置いている
食事の入り方 朝食を抜いた、行動食が甘いものだけ 塩気のある食事を普通に摂れている 公的な数値目安はないが、飲料以外からもナトリウムは入る
汗の量から補給する物を決める。左にその日の条件、右に足す物を並べた対応表の図解。行動2時間以内・涼しい=水だけでよい。塩分は食事から足りる/行動4時間以上・汗が乾く=塩タブレットを一定間隔で。水と一緒に/大量に汗をかいた=電解質入りの飲料に切り替える/足がつり始めた=水だけを足さない。塩分と一緒に摂る/持病で塩分制限がある=自己判断で増やさない。主治医に確認する。図の下部に「公的機関の熱中症予防資料による(2026年9月1日確認)」と注記。
汗の量から補給する物を決める。左にその日の条件、右に足す物を並べた対応表の図解。行動2時間以内・涼しい=水だけでよい。塩分は食事から足りる/行動4時間以上・汗が乾く=塩タブレットを一定間隔で。水と一緒に/大量に汗をかいた=電解質入りの飲料に切り替える/足がつり始めた=水だけを足さない。塩分と一緒に摂る/持病で塩分制限がある=自己判断で増やさない。主治医に確認する。図の下部に「公的機関の熱中症予防資料による(2026年9月1日確認)」と注記。

この表は「4つのうち何個当てはまったら」という点数式にはしていません。点数化すると根拠がないものを根拠があるように見せてしまうからです。使い方としては、当てはまる欄が複数並んだ日は濃度のある飲料と塩分を含む固形物を意識的に組み込み、当てはまらない日は無理に上乗せしない、という程度の粗さで十分です。

編集部の見立て:粗い判断でよい、というのが実はこの記事の主張です。細かく計算しても、汗の量も濃度も測れないのだから精度は上がりません。粗い判断を毎回きちんとやるほうが、精密な計算を1回だけやるより効きます。

持ち物としての最小構成も書いておきます。塩分を含む固形物を個包装で数個、これが一番かさばらない形です。カバヤの塩分チャージタブレッツは、スポーツドリンク味・塩レモン味・梅味の3種類が各81g×3袋という構成で、いずれも個包装になっています。味が3種類あるのは、汗をかいたあとに同じ味が続くと手が伸びなくなる、という現実的な問題への答えでもあります。個包装なので、ザックのウエストベルトのポケットに数個だけ移しておく使い方ができます。

固形の塩分は「足す条件が揃った日に開ける保険」として置く位置づけです。行動時間が長くなりそうな日や、想定より汗が出ている日に、飲料だけでは間に合わないと感じたときに手が届く場所へ移す。この次の見出しで、粉末・液体・固形という3つの形態の違いを整理するので、そちらも合わせて見てください。

粉末・液体・固形。3つの形態を荷物と行動時間で選び分ける

塩分・水分・糖は別々に効きます。だから、どれが足りていないかによって持つ物が変わります。そしてもうひとつ、同じ中身でも形態が違えば、山での使い勝手が変わります。ここを整理しておくと、買い物の前に「自分に要るのはどれか」が決められます。

形態 強いところ 弱いところ 向く場面
粉末 水さえあれば現地で作れる。持ち運びの重さがほぼ袋の重さだけ 溶かす水の量を守らないと濃度が変わる。溶かす手間と容器が要る 行動が長い日、水場や山小屋で給水できる計画、複数日
液体 開けてすぐ飲める。濃度が決まっているので判断が要らない 水の重さごと背負うことになる 行動が短い日、下山後や車中、家に置いておく備え
固形 かさばらない。歩きながら口に入れられる 水分は別に要る。水がない状態で摂ると喉が渇く 飲料は足りているが塩分だけ足したい場面

粉末の利点は、荷物を「水の重さ」から切り離せることです。1L分の飲料を最初から液体で持てば1kgですが、粉末で持てば数十グラムで済み、水は現地で確保する形にできます。逆に言えば、水の確保が読めない山域では成立しません。粉末は水場の計画とセットの選択肢だと考えてください。

編集部の見立て:粉末が便利なのは事実ですが、山で袋を開けて粉をこぼす人は毎年います。風がある稜線ではやらない、ボトルの口径を確認しておく、この2つだけで事故はかなり減ります。

粉末の実物を2つ、性格が違うものとして挙げます。ひとつは大塚製薬の経口補水液オーエスワンのパウダーで、1袋15gで500mL分を作る形の10袋入りです。1袋がそのまま500mLボトル1本分に対応しているので、作る量を迷いません。もうひとつは五洲薬品の経口補水パウダー ダブルエイドで、こちらは50包入りという入数の多さが特徴です。1回あたりの単位で持ち出しやすく、家庭と山で兼用する備蓄の形になります。どちらも溶かす水の量は製品の指定に従ってください。

この2つの違いを言い換えると、オーエスワンのパウダーは「500mLボトル1本=1袋」という対応関係が決まっているぶん、山での運用が単純になります。ダブルエイドは50包という入数なので、ザックに数包、車に数包、自宅に残りという分散した置き方がしやすい。行動中に迷いたくないなら前者、家と山をまたいで数を確保したいなら後者、という分け方になります。

経口補水液は「脱水症のときの水・電解質の補給を目的とした食品」という位置づけの製品です。スポーツドリンクの代わりに日常的に飲むものとして設計されているわけではありません。消費者庁は、経口補水液は一般的なスポーツドリンクよりナトリウム・カリウムが多く、日常的・大量の飲用では血圧や心臓への負荷が懸念されるとし、必要性については医師等へ相談するよう案内しています(2026年9月1日確認)。粉末で安価に作れるからといって、行動中の主飲料として大量に飲む使い方は、この案内と噛み合いません。

経口補水液とスポーツドリンクは、公表値がここまで違う

前の節の注意を数字で確かめます。メーカーが公表している栄養成分を、同じ100mL基準で並べてみます。数字が並ぶと、両者を「似たようなもの」として扱えないことがはっきりします。

項目(100mLあたり) オーエスワン(OS-1) ポカリスエット 公的な目安
食塩相当量 0.292g 0.12g 0.1〜0.2g(0.1〜0.2%に相当)
カリウム 78mg 20mg 数値目安は確認できず
マグネシウム 2.4mg 0.6mg 数値目安は確認できず
炭水化物 2.5g 6.2g 糖質4〜8%(日本スポーツ協会)
エネルギー 10kcal 25kcal
製品の位置づけ 軽度〜中等度の脱水症における水・電解質の補給・維持に適した病者用食品 スポーツドリンク(清涼飲料水)

読み方を書きます。ポカリスエットの食塩相当量0.12g/100mLは、そのまま濃度に読み替えると約0.12%で、公的な目安である0.1〜0.2%の範囲に入っています。一方、オーエスワンの0.292g/100mLは約0.29%にあたり、運動時の飲料として示されている目安の範囲より上です。炭水化物も逆で、日本スポーツ協会が示す糖質4〜8%の範囲に入るのはポカリスエット側(6.2g/100mL)になります。

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編集部の見立て:この表で言いたいのは「オーエスワンのほうが優れている」でも「劣っている」でもありません。用途が違うから組成が違う、それだけです。運動中の飲料としての公的な濃度目安に合っているのはスポーツドリンク側だ、という事実だけを持ち帰ってください。

もうひとつ注記があります。オーエスワンについては、メーカーの製品ページでは食塩相当量0.292g/100mLという形で表示されており、別のFAQページではナトリウム115mg/100mLという記載が確認できます。ポカリスエットも同様に、製品ページでは食塩相当量0.12g/100mLと電解質濃度(ナトリウム21mEq/Lなど)、FAQページではナトリウム49mg/100mLという形になっています。ページによって表示の形が違うので、比較するときは同じ形式の数字どうしを並べてください(いずれも2026年9月1日確認)。

オーエスワンには、メーカーが公表している摂取目安もあります。学童〜成人(高齢者を含む)で1日あたり500〜1000mLという記載です(2026年9月1日確認)。1日分の目安が公表されている製品を、行動中の主飲料として無制限に飲む使い方は想定されていない、と読むのが妥当でしょう。

そのうえで、液体の経口補水液を持つ選択肢も挙げておきます。コカ・コーラのアクエリアス 経口補水液 ORS は500mLペットボトルで、24本入りの箱という形があります。粉末と違って溶かす手間も容器も要らず、開けてすぐ飲める点が液体の強みです。箱で買う形なので、山に持ち出す1本だけでなく、車に置く・自宅に備える・下山後に飲むといった使い分けができます。

粉末と液体、どちらを選ぶかは「重さを取るか、手間を取るか」の一択です。行動が長く水場が計算できるなら粉末、短時間の行動や下山後の1本なら液体。両方を少しずつ持つのが悪い選択というわけではありませんが、同じ役割の物を2形態持つと荷物が増えるだけになりやすい、という点は覚えておいてください。

塩だけでは動けない。糖と一緒に入れる理由

ここまで塩分の話を続けてきましたが、塩分だけを足しても登山は成立しません。日本スポーツ協会は、運動時の飲料について食塩0.1〜0.2%と併せて糖質4〜8%を挙げています。塩と糖が同じ推奨の中に並んでいるのは、水分の吸収と、動くためのエネルギーの両方に関わるからです。

編集部の見立て:塩分の記事なのに糖の話をするのは寄り道に見えるかもしれません。ただ、公的な推奨が「食塩0.1〜0.2%と糖質4〜8%」というセットで書かれている以上、片方だけ切り出すほうが原典から離れます。

実際の場面でも、この2つは同時に足りなくなります。長時間歩けば汗もかくし、エネルギーも減ります。ところが症状の出方は違うので、対処を取り違えることがあります。手足がつるのと、力が入らなくなるのは別の現象です。足りていないものを取り違えると、正しいものを食べているのに立て直せません。

足がつるという現象については、原因が一つに定まらないため、この記事では「塩分を摂れば治る」という書き方をしません。実際の対処と原因の切り分けは登山で足がつる原因とその場での対処にまとめています。エネルギー側が枯れたときの症状はハンガーノックの前触れと立て直し方のほうが詳しいので、症状から入る人はそちらを先に読んでください。

糖を足す手段として、もっとも単純なのがブドウ糖のタブレットです。エブリサポートのブドウ糖100%タブレットは160粒入りで、40粒×4袋という個包装の構成になっています。ブドウ糖100%という表示のとおり、余計なものが入っていない点が分かりやすい。個包装で袋が分かれているので、開封した1袋だけをザックに移して、残りは自宅に置くという持ち方ができます。塩分を含む製品とは役割が別なので、塩タブレットの代わりにはなりません。

ブドウ糖のタブレットは水分を含みません。汗を多くかいている状態で固形物だけを口に入れると、口の中が乾いて飲み込みにくくなります。固形の糖も固形の塩分も、水と一緒に摂るのが前提です。水が残り少ないときに固形物で埋め合わせようとするのは、逆方向の判断になります。

行動食全体の組み立て方は別記事に譲ります。この記事の範囲で言えるのは、塩分の枠と糖の枠を別々に数える、ということです。甘い行動食をたくさん持っていても塩分の枠は埋まらないし、塩タブレットを何粒食べてもエネルギーは戻りません。登山の行動食の組み立て方と、登山の消費カロリーの計算を合わせて見ると、その日どれだけのエネルギーが要るのかという枠の側が決まります。

行動中に開けられるか。ゼリーと液体の使い分け

形態の話をもう一段だけ細かくします。山で物を口に入れる場面は、実は限られています。急な登りでは息が上がって固形物が入りません。鎖場では手が塞がっています。休憩を取れる場所まで我慢するという判断が積み重なると、補給のタイミングは後ろへずれていきます。

編集部の見立て:補給の失敗の多くは「持っていなかった」ではなく「持っていたが開けなかった」です。厚生労働省の目安が20〜30分ごとという短い間隔を示しているのも、まとめて摂るのではなく細かく入れる形が前提だからだと読めます。

この観点で使いやすいのがゼリー飲料です。片手で開けられて、噛まずに飲み込めて、息が上がっていても入る。ここではアミノ酸系の製品を2つ、容量の違うものとして挙げます。アミノバイタルのアミノショット パーフェクトエネルギーは45g×4本という構成で、アミノ酸2500mgを含む表示です。1本が45gなので、ポケットに複数入れても厚みが出ません。

もう一方のアミノバイタル ゼリードリンク パーフェクトエネルギーは130g×6個で、アミノ酸5000mgという表示です。1個あたりの容量が45gと130gで約3倍違い、アミノ酸量も2500mgと5000mgで2倍違います。歩きながら片手で入れるなら45g、休憩でまとめて摂るなら130gという分け方が、容量の差からそのまま導けます。行動中に何度も小さく入れたい人は前者、休憩を区切って摂る人は後者です。

この2つはアミノ酸とエネルギーの製品であって、塩分補給の製品ではありません。塩分の枠をこれらで埋めることはできません。この記事の主題である「0.1〜0.2%食塩水またはナトリウム40〜80mg/100mLの飲料」という濃度目安は、別に満たす必要があります。製品を混ぜて考えると、どちらの枠も中途半端になります。

  • 行動中に片手で開けられる形の物を、最低ひとつは手の届く場所に入れているか
  • 塩分の枠と糖の枠を、別々の製品として数えているか
  • 固形物を摂るときに一緒に飲む水が残っているか
  • 粉末を使うなら、製品の指定する希釈量とボトルの容量が合っているか
  • ザックの奥にしまい込んでいて、休憩まで開けられない配置になっていないか

飲料以外から入るナトリウムを勘定に入れる

ここまでは飲料と行動食の話でした。実際には、その日に食べたものからもナトリウムは入ってきます。朝食に味噌汁を飲んだか、昼にパンだけで済ませたか、山小屋で食事を摂るのか。これらは全部、その日のナトリウムの入り方を変えます。

ただし、ここで具体的な食品の食塩相当量を並べることはしません。食品ごとの数値は製品や調理法で大きく変わり、記事側で代表値を置くと、それが基準のように読まれてしまうからです。確認するなら、その日に食べた物のパッケージの栄養成分表示を見るのが唯一確実な方法です。

編集部の見立て:面倒に見えますが、やるのは最初の数回だけで十分です。自分がよく持っていく行動食の食塩相当量を一度確認しておけば、次からは「あれと同じくらい」で見当がつきます。毎回計算する必要はありません。

一方で、上限側の物差しは公的資料にあります。厚生労働省は一般成人の1日の食塩摂取目標量として、男性7.5g未満、女性6.5g未満という数値を示しています(2026年9月1日確認)。これは日常生活の目標であって「登山の日はこれを超えてよい」という意味でも「登山の日もこれを守れ」という意味でもありません。ただ、自分が普段どのくらいの水準にいるかを知る材料にはなります。

厚生労働省のe-ヘルスネットは、食塩の摂り過ぎが高血圧に影響することを記載しています。同時に、腎臓病と医師に言われている人は医師の指示に従うよう案内しています(2026年9月1日確認)。登山の日の塩分補給は、この日常の枠組みの外にあるわけではありません。増やす側の判断をするなら、普段の水準も一緒に見る必要があります。

配分の決め方:①その日の飲料を、100mLあたり食塩相当量0.1〜0.2gの範囲に収める(または、水に対して製品の指定どおりに粉末を溶かす)。②20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度という間隔で、少量ずつ入れる。③飲料でこの濃度を作れない日(真水しか持っていない、水場の水を汲んだ)は、固形の塩分で補う。④食事から塩気が入っている日は、上乗せの量を減らす。⑤塩分制限を受けている人は、この配分を自己判断で適用せず、事前に主治医へ相談する。

この5つのうち、山で判断が要るのは③と④だけです。①と②は出発前に決めておけます。判断を家に前倒しできるものは、家で済ませておく。これは塩分に限らず、登山の準備全般に通じる考え方でもあります。

足してはいけない人がいる。塩分制限と低ナトリウム血症

この節が、この記事でもっとも重要なところです。ここまで「足す」側の話をしてきましたが、塩分は摂れば摂るほど良いものではありません。方向を間違えると危険になる領域があります。

高血圧・腎臓病・心疾患などで塩分制限を受けている人は、この記事の内容を自己判断で適用しないでください。厚生労働省の職場向け熱中症予防情報は、塩分摂取が制限される疾患がある場合には主治医・産業医等に相談させる必要があるとし、高血圧・心疾患や腎不全で治療中の場合は十分な注意が必要と記載しています(2026年9月1日確認)。夏山に行く予定があるなら、その予定を含めて事前に主治医へ相談してください。この記事に、その相談の代わりになる数値はありません。

製品側にも同じ趣旨の記載があります。オーエスワンの案内には、食事指導を受けている場合は医師へ相談するようにという記載があります。ポカリスエット側にも、高血圧などで食事制限を受けている場合は成分を考慮するようにという記載があります(いずれも2026年9月1日確認)。メーカー自身が「全員に勧めているわけではない」と書いているという事実は、そのまま受け取るべきものです。

編集部の見立て:この記事を書くにあたって一番迷ったのが、この節をどこに置くかでした。最後に置くと読まれません。かといって冒頭に長く置くと、必要な人にだけ届く話が全員の障害物になります。結局、リードで短く触れて、本文の後半で詳しく書き、FAQでもう一度書く形にしました。3回書いてちょうどよいと考えています。

もう一方向の危険も書きます。低ナトリウム血症です。環境省の熱中症環境保健マニュアルは、大量に発汗した状態で水だけを飲み続けると、低ナトリウム血症や熱けいれんにつながる場合があることを記載しています。塩分を足すという話は、この裏返しでもあります。「水をたくさん飲めば安全」は成り立ちません。

とくに注意が要るのは、暑い日に長時間歩き、喉が渇いたからと真水だけを何リットルも飲むという行動です。汗で塩分が出ていく一方で、入ってくるのが水だけという状態が続きます。これは「水分補給を頑張っている」ように見えるだけに、本人も周囲も気づきにくい形です。真水しか持っていない日は、水の量ではなく、塩分の入り口があるかどうかを先に確認してください。

  • 塩分制限を受けている持病があるか。あるなら、夏山の予定を含めて主治医に相談済みか
  • 同行者に塩分制限を受けている人がいないか。全員に同じ物を勧めていないか
  • 今日持っている飲料は、真水だけになっていないか
  • 経口補水液を、行動中の主飲料として大量に飲む計画になっていないか
  • 体調がいつもと違う日に、いつもと同じ配分をそのまま当てはめようとしていないか

持病がある人の登山を否定する記事ではありません。書いているのは「一般向けの数値目安をそのまま当てはめてはいけない人がいる」ということだけです。個別の量は、公的資料にも製品表示にも書かれていません。書かれていない以上、記事が代わりに決めることはできません。

症状が出たときは、補給ではなく行動を止める

最後に、判断の出口を書きます。ここまで説明してきたのは全部、予防の話です。何かが起きてからの対処ではありません。この線を引かないと、「塩分を摂れば治る」という誤った期待につながります。

手足がつる、頭が痛い、吐き気がする、まっすぐ歩けない、汗が出なくなる。こうした変化が出たときにまずやるのは、補給を増やすことではなく、行動を止めて、日陰に入り、体を冷やすことです。そのうえで、状態が改善しないなら引き返す、それも難しいなら救助を要請する、という順番になります。

編集部の見立て:「あと少しで山頂だから、塩タブレットを食べて登り切る」という判断が、一番危ないところです。補給は歩き続けるための許可証ではありません。止まる判断を先に、補給はそのあとです。

  1. 異変を感じたらその場で行動を止める。日陰や風の通る場所へ移り、体を冷やす
  2. 意識がはっきりしていて自分で飲めるなら、塩分を含む飲料を少量ずつ摂る。無理に大量に飲ませない
  3. 改善しない、意識がはっきりしない、自力で歩けないなら、その時点で下山ではなく救助要請の判断へ移る

症状の見分け方そのものは、この記事の範囲を超えます。熱中症の段階の判定や、どこからが救急要請かという線引きはWBGTの基準値と登山での熱中症対策のほうに整理してあります。夏山に行く前に、両方に目を通しておいてください。

電波の入らない場所での要請手段、同行者への引き継ぎ、下山ルートの選び直しは、その場の判断になります。ただ、判断を早める材料は事前に用意できます。エスケープルートの確認、携帯の電波が入る場所の見当、登山届の提出。これらは塩分の話とは別ですが、症状が出たときに効いてくるのは結局そちらです。

編集部の見立て:塩分補給の記事に救助の話が出てくるのは唐突に見えるかもしれません。ただ、補給の話は「うまくいかなかったとき」の出口とセットでないと、読者を無理な行動へ押し出す方向にしか働きません。出口を書いてこそ、予防の話が安全に使えます。

よくある質問

Q. 登山中の飲み物は、食塩0.1〜0.2%を目安に選べばよいですか

環境省・厚生労働省・日本スポーツ協会が示しているのは、その範囲です。飲料でいえばナトリウム40〜80mg/100mL、食塩相当量では100mLあたり0.1〜0.2gにあたります(2026年9月1日確認)。ただし厚生労働省は、必要量が作業強度などによって異なるとも注記しています。目安の範囲に入る飲料を選ぶことと、その日に必要な量が人によって違うことは、別の話として扱ってください。なお、これらの目安は暑い環境で作業・運動する場合を前提にしたもので、登山者向けに個別に数値化された公的目安は、今回確認した範囲では見つかっていません。

Q. 汗を1Lかくとナトリウムを何mg失いますか

2026年9月1日時点で確認した公的資料の範囲では、この数値を一律に断定できる記載は見つかりませんでした。厚生労働省の資料は汗中のナトリウム濃度と発汗量の関係を図示していますが、登山者全員に適用できる単一の値は示していません。汗のナトリウム濃度は発汗量・運動強度・暑熱順化の影響を受けるためです。喪失量を推定して同量を足すという組み立てではなく、飲むものの濃度を目安の範囲に合わせるという組み立てのほうが、個人差の影響を受けにくくなります。

Q. 塩タブレットは何粒まで食べていいですか

登山中の摂取上限を示した公的な数値は、今回確認した範囲では見つかっていません。判断材料になるのは2つです。ひとつは製品のパッケージに記載されている1日あたりの目安量。もうひとつは、厚生労働省が示す一般成人の1日の食塩摂取目標量(男性7.5g未満、女性6.5g未満、2026年9月1日確認)です。後者は日常生活の目標であって登山時の上限ではありませんが、自分が普段どの水準にいるかを知る材料になります。塩分制限を受けている人は、この質問の答えを主治医に確認してください。

Q. 高血圧や腎臓病で治療中でも、塩分や経口補水液を摂ってよいですか

この記事では答えを出せません。厚生労働省は、塩分摂取が制限される疾患がある場合には主治医・産業医等への相談が必要とし、高血圧・心疾患や腎不全で治療中の場合は十分な注意が必要と記載しています。消費者庁も、経口補水液は一般的なスポーツドリンクよりナトリウム・カリウムが多く、日常的・大量の飲用では血圧や心臓への負荷が懸念されるとして、必要性は医師等へ相談するよう案内しています(いずれも2026年9月1日確認)。夏山の予定があるなら、その予定を伝えたうえで事前に相談してください。自己判断で増やすことは避けてください。

Q. 水だけをたくさん飲むのは危ないと聞きました。本当ですか

環境省の熱中症環境保健マニュアルは、大量に発汗した状態で水だけを飲み続けると、低ナトリウム血症や熱けいれんにつながる場合があることを記載しています(2026年9月1日確認)。「水分をたくさん摂っているから安全」とは言えない、というのが公的資料の示すところです。真水しか持っていない日は、水の量を増やすことより先に、塩分の入り口があるかどうかを確認してください。ただし、水を飲まないほうがよいという意味では一切ありません。必要な水の量そのものの計算は水分補給の必要量の記事を参照してください。

Q. 経口補水液を毎回持っていったほうがよいですか

経口補水液は、脱水症のときの水・電解質の補給を目的とした食品として位置づけられている製品です。オーエスワンには、学童〜成人(高齢者を含む)で1日あたり500〜1000mLというメーカー公表の摂取目安もあります(2026年9月1日確認)。行動中の主飲料として常用する使い方は、この位置づけとは噛み合いません。持っていくかどうかは「毎回」ではなく、暑さ・行動時間・発汗量の条件が重なる日に備えとして入れる、という形が公表されている位置づけに沿います。

まとめ:今日決めるのは「濃度」と「間隔」の2つだけ

この記事は長くなりましたが、持ち帰るものは2つです。飲むものの濃度を、100mLあたり食塩相当量0.1〜0.2gの範囲に合わせること。そして、20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度という細かい間隔で入れること。この2つは出発前に決められます。山の上で計算する必要はありません。

編集部の見立て:塩タブレットを買い足すより先に、いま冷蔵庫にある飲料のラベルを見るほうが早いです。100mLあたりの食塩相当量が0.1〜0.2gの範囲に入っているなら、その飲料は公的目安に沿っています。買い物は、その確認のあとで構いません。

そして、この記事全体を通じて外してはいけない線がもうひとつあります。塩分制限を受けている人にとっては、ここに書いた目安がそのまま当てはまらないということです。増やす方向の判断は、必ず主治医に確認してから行ってください。公的資料にも製品表示にも、その人向けの数値は書かれていません。

  1. いま持っている飲料のラベルで、100mLあたりの食塩相当量を確認する(0.1〜0.2gの範囲に入っているか)
  2. 範囲から外れている、または真水しか持たない日なら、固形の塩分か粉末を1つだけザックの手の届く場所に入れる
  3. 塩分制限を受けている持病があるなら、今日の判断はここで止めて、次の受診時に夏山の予定を伝えて相談する

編集部の見立て:3手順のうち、多くの人にとって実際に必要なのは1番だけです。すでに範囲に入っている飲料を持っているなら、何も足さなくて構いません。足さない判断ができることが、この記事のゴールです。

出典

  • 環境省「熱中症環境保健マニュアル」 https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf (2026年9月1日確認)
  • 環境省「熱中症環境保健マニュアル」第3章第4節 https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/envman/3-4.pdf (2026年9月1日確認)
  • 環境省 熱中症予防情報サイト「熱中症予防のポイント」 https://www.wbgt.env.go.jp/sp/heatillness_three_points.php (2026年9月1日確認)
  • 環境省 参考資料(水分・塩分補給の目安) https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/sg_pcm/R0603/ref06.pdf (2026年9月1日確認)
  • 厚生労働省「職場における熱中症予防情報/暑さ指数」 https://neccyusho.mhlw.go.jp/heat_index/ (2026年9月1日確認)
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「食塩・ナトリウム」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-02-002 (2026年9月1日確認)
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「塩分の摂り過ぎ」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-024.html (2026年9月1日確認)
  • 厚生労働省 発汗と塩分に関する資料 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/hojokin/dl/28_14020201-01_So.pdf (2026年9月1日確認)
  • 日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」案内ページ https://www.japan-sports.or.jp/publish/tabid776.html (2026年9月1日確認)
  • 日本スポーツ協会 熱中症予防リーフレット https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/heatstroke/heatstroke_leaflet202007.PDF (2026年9月1日確認)
  • 日本スポーツ振興センター 登山研修所資料 https://www.jpnsport.go.jp/tozanken/Portals/0/images/contents/chousa/kensyu/vol-28.pdf (2026年9月1日確認・検索表示での確認)
  • 消費者庁「経口補水液」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/oral_rehydration_solution (2026年9月1日確認)
  • 大塚製薬「オーエスワン」製品ページ https://www.otsuka.co.jp/nutraceutical/products/os-1/ (2026年9月1日確認)
  • 大塚製薬「オーエスワン」FAQ https://www.os-1.jp/faq/03/ (2026年9月1日確認)
  • 大塚製薬「ポカリスエット」製品ページ https://www.otsuka.co.jp/nutraceutical/products/pocarisweat/ (2026年9月1日確認)
  • 大塚製薬「ポカリスエット」FAQ https://pocarisweat.jp/products/faq/ (2026年9月1日確認)
  • 長野県「山岳遭難防止・登山相談所」 https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangakusounan/sangaku_tozansoudansyo.html (2026年9月1日確認)

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