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登山用の座布団を探すと、多くの商品ページには「軽量」「クッション性抜群」としか書かれていません。ですが実際に比べるべき数字は3つあります。重量(今回比較した7商品で20g〜約160g)、厚み(5mm〜20mm)、そして断熱性能を示す「R値」です。
このR値、今回7商品の公式ページ・販売ページを確認したところ、数値を公表していたのはわずか1商品でした。座布団は小さな道具ですが、休憩のたびに繰り返し使うものだからこそ、何を根拠に選ぶかが結果に効いてきます。
この記事では、なぜ座布団が必要なのか(地面から体温を奪う「伝導」という仕組み)から説明したうえで、R値の意味、素材別の特徴、7商品の公式スペック比較、そして「買わない」という選択肢まで、数値の伴わない一般論を避けて整理します。数値はすべて2026年8月13日時点で各公式ページ・販売ページに掲載されているものです。
結論:座布団選びで見るべき3つの数字
- 重量:もっとも軽いのはEVERNEW コンパクト折りたたみマット(20g)。もっとも重いNEMOチッパーでも約160gで、大きな差ではない
- R値(断熱性能):7商品中、公式に公表しているのはNEMOチッパー(R値2.0)のみ。あとは「非公表」というのが実態
- 厚み:5mm〜20mmの範囲。厚いほど断熱と座り心地は有利だが、重量とかさばりが増える
- 迷ったら「地面からの冷えを断つ」という座布団の役割から逆算する。防寒より座り心地優先なら薄手・軽量で十分
- 頻度が低いなら、持っている道具で代用するという選択肢もある(後述)
なぜ登山に座布団が必要なのか
地面や岩は、空気より速く体温を奪う
登山中の低体温症を扱う山岳医の解説では、体から熱が奪われる経路として伝導・対流・輻射・蒸発の4つが挙げられています。このうち伝導は、低温の物質に接していれば熱が低温側へ移動するという単純な物理現象です。
問題は、地面の熱伝導率が空気のおよそ10〜100倍とされている点です。とくに岩はこの中でも熱を奪う速度が速いとされます。汗をかいた体で岩に直接座れば、体感以上のスピードで体温が奪われることになります。
休憩は「歩いていないのに消耗する」時間
行動中は筋肉が熱を作り続けますが、休憩に入るとその発熱が止まります。ここで地面と接する面積が増えると、伝導によって奪われる熱の量も増加します。座って休んだつもりが、かえって体が冷えて後半の行程がつらくなるのは、このためです。
座布団の役割は、防寒具のように体を温めることではありません。地面からの熱伝導を断ち、休憩中に奪われる熱を減らすことです。厚みと素材によってこの断熱力が変わるため、次の章で数値の見方を整理します。


断熱性能を数値にした「R値」とは
R値の測定方法とASTM F3340という統一基準
R値(熱抵抗値)は、マットが地面への熱の流出をどれだけ止めるかを示す数値です。数値が高いほど断熱性が高いことを意味します。
現在の業界標準はASTM F3340という規格です。地面を模した5℃の冷たいプレートと、体温を模した35℃の暖かいプレートでマットを挟み、上から荷重をかけたうえで、暖かいプレート側の温度を一定に保つのに必要なエネルギー量を測定します。NEMOは他の主要ブランドとともに、この統一規格の策定に協力したメーカーの一つです。
本格的なスリーピングマットでは、R値2〜7程度の幅で製品が並びます。参考までに、モンベルのラインナップではU.L.サーモエアパッドがR値4.9、キャンプパッド50がR値6.5です。フルサイズのマットと比べることで、座布団クラスの断熱力がどの程度の位置づけかが見えてきます。
座布団クラスでR値を公表しているのは7商品中1つだけ
座布団やシートクッションのような小型・薄型の製品は、フルサイズのスリーピングマットほど厳密にR値が測定・公表されているわけではありません。今回、7商品の公式ページ・販売ページを確認したところ、R値を明記していたのはNEMOチッパー(R値2.0)だけでした。
THERMARESTのZシートソル、EVERNEWの2商品、CAPTAIN STAGの2商品には、いずれもR値の記載がありませんでした。これは断熱性能が無いという意味ではなく、ASTM F3340に基づく数値としては公表されていないということです。R値が非公表の製品を選ぶ場合は、次章で扱う「素材」と「厚み」を断熱力の代わりの目安にするのが現実的です。
素材で比較する:クローズドセルフォーム・エア注入式・ウレタン
座布団やスリーピングマットに使われる素材は、大きく3種類に分けられます。今回比較する7商品はすべて1番目のクローズドセルフォーム(発泡素材)タイプです。
| 素材タイプ | 厚み | 重量 | 畳んだサイズ | 濡れへの強さ |
|---|---|---|---|---|
| 発泡素材 (クローズドセル) |
薄手が中心。今回の7商品は5〜20mm | 軽量。今回の7商品は20g〜約160g | アコーディオン状・板状に折りたたむ方式。厚みの分だけかさは残る | 気泡が独立しているため水を吸いにくい |
| エア注入式 | 息を吹き込む量で厚みを調整できる | 空気を抜けば発泡素材より軽くなる製品もある | 空気を抜けば3タイプの中でもっとも小さく畳める | 表面素材次第。パンクすると断熱・クッション性を失う |
| ウレタン (セルフインフレータブル) |
バルブを開けると内部のウレタンフォームが復元し、自然に厚みが出る | 発泡素材・エア注入式より重くなりやすい | 空気を抜いて丸めるため中間的な大きさになる | 表面素材次第。ウレタン自体は水を吸うため生地の防水加工が重要 |
エア注入式・ウレタン(セルフインフレータブル)は、いずれもパンクのリスクを抱えるぶん、主にテント泊用のフルサイズマットで使われる方式です。岩の上に直接座る座布団用途としてはあまり流通しておらず、今回調べた7商品もすべて発泡素材(クローズドセルフォーム)でした。
表面加工で断熱を底上げする「アルミ蒸着」
クローズドセルフォームの座布団の多くは、表面にアルミを蒸着させています。熱を反射させ、輻射による放熱を抑える加工です。THERMARESTのZシートソルは「ThermaCapture」という名称のアルミ蒸着技術を採用しており、EVERNEWの深山座布団も同様にアルミを蒸着させて輻射熱を得る構造になっています。素材そのものの厚みに加えて、この表面加工の有無も断熱力を左右します。
登山に持っていきたい座布団7選

軽いものから順に、公式ページ・販売ページで確認できた数値とともに紹介します。
EVERNEW コンパクト折りたたみマット EBY462 - 20g
発泡ポリエチレン製で、厚さ5mm・使用時335×265mm・収納時130×90×50mm・重量20g。7商品の中でもっとも軽く、生産国は韓国です。薄いぶん断熱力は控えめですが、行動食を広げる下敷きや、荷物の隙間に入れる予備の1枚として持つには十分な軽さです。
EVERNEW 深山座布団 EBA560 - 49g
発泡ポリエチレン製で、厚さ12mm・390×310mm・重量49g。表面にアルミを蒸着し、輻射熱を得る構造になっています。折りたたむと横幅約10cmになり、ザックのサイドポケットに収まるサイズ感です。クローズドセル構造で水を吸いにくく、販売ページでは防水性をうたう製品として案内されています。EBY462より厚みがあるぶん、地面の凹凸を拾いにくいのが利点です。
CAPTAIN STAG アプリール FDザブトン UT-1019 - 約50g
表面ポリエステル・内面発泡ポリエチレンの2層構造で、厚さ1cm・36×27.5cm・重量約50g。収納袋付きで、収納サイズは9×27.5×厚さ4cmです。表裏で異なる花柄のリバーシブルデザインで、価格は1,650円(税込)、生産国は中国です。
THERMAREST Zシートソル 30947 - 60g
架橋ポリエチレン製のクローズドセルフォームに、アルミ蒸着(ThermaCapture)を施した座布団です。厚さ2cm・41×33cm・重量60g。アコーディオン状に折りたためる構造で、7商品の中では厚みがあるぶん、岩の凹凸をもっとも拾いにくいタイプです。原産国はアメリカで、R値の記載は日本の販売ページにはありません。
NEMO チッパー NM-CPR-WS - 約160g・R値2.0
NEMOのスリーピングパッド「スイッチバック」の製造時に出るフォームの端材を再利用した座布団で、7商品で唯一R値2.0を公式に表示しています。厚さ2cm・42×32cm・重量約160g、収納サイズ32×10.5×5.7cm。端材の組み合わせ次第で一つひとつ柄が異なります。価格は2,640円(税込)。7商品の中でもっとも重量がありますが、そのぶん断熱性能を数値で確認できる唯一の選択肢でもあります。
CAPTAIN STAG FDザブトン M-3333
表面ポリエステル・内面発泡ポリエチレンの2層構造で、厚さ1cm・34×27.5cm、収納サイズ9×27.5×厚さ4cmです。価格は990円(税込)で、7商品の中でもっとも手に取りやすい価格帯です。重量は公式サイト・販売ページのいずれにも記載がなく、確認できませんでした。サイズと厚みはUT-1019とほぼ共通しているため近い数値と推測されますが、本記事では確認できた数値のみを掲載しています。
Mozambique アウトドアマット
表面にアルミ加工を施したクローズドセルタイプの座布団マットです。重量・厚み・折りたたみ時のサイズは、公式ブランドサイトおよび販売ページのいずれにも仕様として記載されておらず、確認できませんでした。アルミ加工による断熱と照り返しを訴求する製品として販売されています。数値で比較して選びたい場合は、他の6商品を優先して検討することをおすすめします。
厚み・重量・価格を数値で比較する
| 商品 | 重量 | 厚み | R値 | 価格(税込) |
|---|---|---|---|---|
| EVERNEW EBY462 | 20g | 5mm | 非公表 | 1,430円 |
| EVERNEW EBA560 | 49g | 12mm | 非公表 | 1,650円 |
| CAPTAIN STAG UT-1019 | 約50g | 10mm | 非公表 | 1,650円 |
| THERMAREST Zシートソル | 60g | 20mm | 非公表 | 確認できず |
| NEMO チッパー | 約160g | 20mm | 2.0 | 2,640円 |
| CAPTAIN STAG M-3333 | 非公表 | 10mm | 非公表 | 990円 |
| Mozambique | 非公表 | 非公表 | 非公表 | 確認できず |
表を縦に見ると、厚みが増えるほど重量も増える傾向がはっきり出ます。厚さ5mm・20gのEBY462に対し、厚さ20mmのチッパーは約160gと8倍です。薄く軽いものは補助的な下敷き、厚いものは断熱そのものを目的にする、という住み分けで考えると選びやすくなります。
座布団を買わない、という選択肢
ザックの背面パッドを使う
一部のバックパックは、背面のクッション材(フレームシートやパッド)が取り外せる構造になっています。取り外して座布団代わりに使い、歩き出す前に戻せば、荷物を増やさずに済みます。ただし外した状態で背負うと背中が痛くなりやすいため、休憩のたびに外す・戻すという手間が発生する点は理解しておく必要があります。ザック自体の選び方は登山用ザックの選び方で扱っています。
レインウェアや衣類を地面に敷く
短時間の休憩であれば、脱いだレインウェアやウィンドシェルを畳んで地面に敷くだけでも、直接座るより伝導による冷えを抑えられます。ただし本来は雨や風から体を守るための装備なので、汚れや摩耗が気になる人は避けたほうが無難です。レインウェアそのものの選び方はレインウェアの選び方で詳しく扱っています。
手持ちのレジャーシートで代用する
登山専用でなくても、家にあるレジャーシートや100円ショップのアルミシートで代用すること自体は可能です。ただし多くは登山向けの耐久性を想定しておらず、岩場で繰り返し使うと破れやすい点は割り切って使う必要があります。荷物を少しでも減らしたい人向けの考え方は日帰り登山の軽量化にまとめています。
それでも専用品を選ぶ価値がある場面
毎回の休憩で使う、テント泊で就寝時の下敷きにも使う、岩場や雪渓など地面が冷たい場所を歩く機会が多い、といった条件が重なるほど、専用の座布団を持つ価値は上がります。逆に、年に数回の日帰り登山で休憩時間も短いなら、代用品で十分まかなえる場面のほうが多いはずです。
登山用座布団の選び方 - 使うシーンから逆算する

休憩・ランチタイムがメインなら、厚み優先
座って過ごす時間が長いほど、地面との接地面積・接地時間が増え、伝導で奪われる熱の総量も増えます。休憩やランチでの使用が中心なら、薄い5mm前後のタイプより、10mm以上の厚みがあるタイプのほうが体感差が出ます。休憩のたびに水分補給もセットで行うことになるので、登山用水筒の選び方もあわせて見直しておくと、休憩の質そのものが上がります。
テント泊の下敷きにも使うなら、面積と防水を確認
就寝時の下敷きとして使う場合は、お尻だけでなく腰回りまでカバーできるサイズかどうかを確認してください。地面からの湿気も伝わるため、水を吸いにくい素材かどうかも重要になります。テント泊での夜間の過ごし方はテント泊の夜の装備で扱っています。
収納力を優先するなら、折りたたみ後のサイズで選ぶ
ザックのサイドポケットに入れて使う頻度が高い人は、広げたときのサイズより折りたたんだ後のサイズを基準に選んだほうが失敗しません。EBA560のように「横幅約10cmでサイドポケットに入る」と公式ページに明記されている製品は、収納場所を具体的にイメージしやすくなります。

出典:Amazon.co.jp
行動中にすぐ座りたい場面が多いなら、サコッシュのような小物入れに畳んで入れておくと、休憩のたびにザックを下ろさずに済みます。ザックのショルダー部分に取り付けるショルダーハーネスポーチも、薄手の座布団なら収納先の候補になります。
専用の収納ケースが付属するタイプも多く、ベルトやフックが付いていればザックの外側に取り付けて携行することもできます。ただし外側に付けると枝などに引っかかりやすいため、基本的にはザックの中に収納するほうが安定して歩けます。荷物全体の詰め方は登山の持ち物リストもあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 登山用座布団は本当に必要ですか?買わなくても大丈夫ですか?
なくても登山はできます。ただし休憩のたびに地面や岩へ直接座ると、伝導によって体温を奪われます。ザックの背面パッドやレインウェアで代用することもできるので、まずは手持ちの道具で試し、頻度が高いようなら専用品の購入を検討する、という順番でも遅くはありません。
Q. R値が非公表の製品は、断熱性能が低いということですか?
そうとは限りません。R値はASTM F3340という規格に基づく測定値で、メーカーが任意に取得・公表するものです。今回比較した7商品のうちR値を公表していたのはNEMOチッパーだけでしたが、他の製品もアルミ蒸着や一定の厚みを備えており、断熱の工夫自体はされています。数値で比較したい場合は選択肢が限られる、というのが実態です。
Q. 登山用座布団と一般的なレジャーシートは何が違いますか?
主な違いは厚みと携行性です。登山用は数mm〜2cm程度の厚みで断熱を確保しつつ、折りたたんで20g〜160g程度に収まるよう作られています。一般的なレジャーシートは面積が広い一方、断熱を目的にしていない製品が多く、岩場での耐久性も考慮されていません。
Q. 軽さを最優先するなら、どれを選べばいいですか?
今回比較した7商品では、EVERNEWのコンパクト折りたたみマットEBY462が20gでもっとも軽量です。ただし厚さ5mmと薄いため、断熱そのものよりも「地面の汚れ・湿気よけ」を主目的にする使い方に向いています。
Q. 座布団はテント泊の寝袋の下にも使えますか?
補助的には使えますが、就寝用のスリーピングマットの代わりにはなりません。座布団は体の一部(お尻や腰)をカバーするサイズで作られており、全身をカバーするスリーピングマットとは断熱の設計が異なります。テント泊装備はテント泊の夜の装備で別途扱っています。
Q. 防水の座布団を選べば、雨の日の休憩でも安心ですか?
素材が水を吸いにくいクローズドセルフォームであれば、濡れた地面に直接置いても中まで水が染みることはほとんどありません。ただし雨そのものを防ぐわけではないので、雨天時は座布団と合わせてレインウェアなどで体を濡らさない対策も必要です。
Q. 座布団の重さは、登山全体の荷物の中でどれくらいの割合ですか?
20g〜約160gという範囲は、日帰り登山の総重量(おおむね5〜10kg程度)からすると1%に満たない程度です。座布団単体の軽さにこだわるより、休憩の質を上げる価値のほうを優先して選んでも、全体の負担にはほとんど影響しません。疲労のケア全般は登山とマッサージガンの記事も参考にしてください。
まとめ

登山用座布団を選ぶときに見るべきなのは、重量・厚み・R値という3つの数字です。今回確認した7商品では、もっとも軽いのがEVERNEW EBY462(20g)、もっとも断熱を意識した作りなのがNEMOチッパー(R値2.0・約160g)でした。R値を公表している製品は少数派で、非公表だからといって断熱力が劣るとは限りません。
座布団の役割は、地面から奪われる熱を断つことです。専用品を買わなくても、ザックの背面パッドやレインウェアで代用できる場面もあります。休憩の頻度や、テント泊で就寝時にも使うかどうかを基準に、必要な厚みと重量を先に決めてから選ぶと失敗しにくくなります。
出典
- 登山×医療ブログ「体から熱が奪われる4つの仕組み」(伝導による熱喪失のメカニズム・地面の熱伝導率)
- NEMO Equipment Japan「NEMOのR値(ASTM F3340)への関わりとアプローチ」(R値の定義・ASTM F3340の測定方法)
- モンベル公式「スリーピングパッドの選び方」(素材3タイプの分類・R値の数値例)
- NEMO Equipment Japan公式 チッパー製品ページ(重量約160g・R値2.0・価格2,640円)
- EVERNEW公式 コンパクト折りたたみマットEBY462製品ページ(重量20g・厚さ5mm・価格1,430円)
- EVERNEW公式 深山座布団EBA560製品ページ(重量49g・厚さ12mm・価格1,650円)
- キャプテンスタッグ公式 アプリールFDザブトンUT-1019製品ページ(重量約50g・価格1,650円)
- キャプテンスタッグ公式 FDザブトンM-3333製品ページ(サイズ・価格990円。重量記載なし)
- ヒマラヤ サーマレストZシートソル30947 販売ページ(重量60g・厚さ2cm。R値記載なし)
※数値は2026年8月13日時点で各公式ページ・販売ページに記載の値です。CAPTAIN STAG M-3333の重量、Mozambiqueアウトドアマットの重量・厚み・折りたたみサイズは、公式・販売ページのいずれにも記載がなく確認できませんでした。
