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登山中の休憩は、歩き続けた体を回復させる大事な時間です。ですが地面や岩に直接座ると、お尻や腰が痛くなるだけでなく、思った以上に体力を消耗します。
そこで候補に挙がるのが、軽量な折りたたみ椅子やスツールです。ただし「登山 椅子」で検索すると、重量や耐荷重は書かれていても、実際に山で使ったときに起きること――地面が柔らかくて脚が沈む、設営に手間がかかる、背もたれ付きは重い――までは触れていない情報も多く見かけます。
この記事では、そもそも椅子は必要なのかという判断基準から、脚が沈む問題への対策、背もたれ付きとスツールの違いまで踏み込んだうえで、登山向けの軽量チェア7商品の重量・座面高・耐荷重を公式ページ・販売ページの数値で比較します。数値は原則として公式ページか販売ページに記載のあるものだけを掲載し、確認できなかった項目は「—」または「確認できず」と明記しています。
先に結論:登山に椅子は要る?
- 持っていく価値がある場面……テント泊で拠点に長く留まる、山頂で景色を見ながら長めに休む、撮影や順番待ちで同じ場所にいる時間が長い
- なくても困りにくい場面……日帰りで休憩が数分〜10分程度、ベンチや平らな岩があるコース、荷物を少しでも減らしたい日
- 選ぶなら見る3点……重さ(今回の7商品は約300〜490g)、収納サイズ(ザックの中に入るか、外付けになるか)、座面高(公式に記載のある製品で23〜28cm)
キャンプ用の一般的な折りたたみ椅子とは重さと収納サイズの桁が違います。流用できるかは比較表のあとで説明します。
そもそも登山に椅子は必要か?日帰りとテント泊で結論が変わる


登山用品店やネット通販で折りたたみ椅子を見かけても、「本当に持っていく価値があるのか」と迷う人は多いはずです。結論からいえば、必要かどうかは行動時間と休憩の長さで変わります。全ての登山者に必須の装備というわけではなく、荷物を減らしたい人まで無理に持つ必要はありません。
日帰り登山なら、なくても大きく困らない
日帰りで休憩が数分〜10分程度なら、椅子がなくても大きな支障はありません。荷物を1つ増やすことと、地面や岩に座る数分の我慢を天秤にかけると、軽量化を優先して見送る選択も十分に合理的です。
テント泊や山頂での長い休憩には効く
一方、テント泊で夕方から夜まで拠点に留まる、山頂で景色を眺めながら長く過ごす、といった場面では話が変わります。地面に座り続けると腰や太ももに負担がかかり続け、休憩のはずが逆に疲労を溜め込むことにもなりかねません。
判断の目安は「休憩10分に対して設営に何分かけるか」
迷ったときの目安になるのが、休憩時間と設営にかかる手間の比率です。10分程度の休憩のたびにフレームを組んで座るのは面倒に感じても、テント泊のように何時間も同じ場所で過ごすなら、その一手間は十分に元が取れます。休憩や滞在の合計時間が長い山行ほど、椅子を持つ価値は高くなります。
こんな人には特におすすめ
- 山頂や稜線で景色を眺めながら長めに過ごしたい人
- テント泊で、夕食から就寝までの時間を拠点で過ごすことが多い人
- 山小屋の受付や混雑した休憩ポイントで、順番待ちの時間が発生しやすい人
- 撮影や自然観察など、同じ場所に長く留まる目的がある人
逆に、休憩のたびに歩き出すまでの時間が短い人、荷物を1gでも削りたい人は、無理に持たなくても行程に支障は出にくいはずです。
登山用の折りたたみ椅子を選ぶポイント

持っていく価値があると判断したら、次は製品選びです。登山用の折りたたみ椅子を選ぶときに見るべきポイントを整理します。
軽量性
登山では持ち物の重さがそのまま体力の消耗につながります。今回比較する7商品は300g台〜500g前後に収まっており、椅子1脚で500mlペットボトル1本前後の重さと考えるとイメージしやすくなります。日帰りでザック全体を軽くしたいならスツールタイプ、多少の重さより快適さを取るなら背もたれ付きというように、まずは総重量の中で許容できる範囲を決めてから選ぶと失敗しません。
コンパクト性(収納サイズ)
折りたたんだ状態でザックのどこに収まるかも重要です。円筒形でサイドポケットに収まるタイプもあれば、平たく畳んでメインコンパートメントの隙間に収めるタイプもあります。収納サイズは製品ごとの差が大きいので、使っているザックのポケット寸法と照らし合わせておくと安心です。休憩のたびに取り出すなら、ザックの奥ではなく、すぐ手が届く位置に収納できるかどうかも合わせて確認しておきましょう。
持ち運び方:ザックの中と外、どちらに収めるか
収納サイズが決まったら、次はこの椅子(イス)をザックのどこに収めるかです。円筒形の収納袋に入るタイプは、ザック側面のポケットやコンプレッションストラップに外付けしやすく、休憩のたびにザック本体を開ける手間を省けます。ただし外付けにすると、雨天時に袋ごと濡れる、藪漕ぎや岩場で枝や岩に引っかかるといったリスクも出てきます。一方、平たく畳めるタイプはメインコンパートメントの隙間に収めやすく、外付けよりは天候や接触の影響を受けにくい収め方です。トレッキングポールを使う人は、ポールと同じサイドポケットに収めると干渉して出し入れしにくくなることがあるため、別のポケットに分けておくと扱いやすくなります。また、雨や朝露で椅子の脚が濡れた状態のままザックの中に戻すと、他の荷物まで濡らしてしまうことがあります。付属の収納袋とは別に、濡れた脚だけ包める小さなポリ袋を1枚用意しておくと、片付けの際に困りません。
耐久性・耐荷重
耐荷重の表示は、体重に荷物の重さを加えた状態で座ることも考えて、余裕を持って確認しておきたい数値です。多くの製品は「静荷重」での目安であり、座る・立ち上がるといった動作で瞬間的にかかる力までは含まれていない点も踏まえておきましょう。フレームの素材はアルミ合金や超々ジュラルミンが中心で、いずれも登山用品として実績のある素材です。
フレーム素材:アルミとカーボンで何が変わるか
今回比較する7商品はいずれもアルミ合金、または7075や7001といった超々ジュラルミン系のアルミ合金をフレームに採用しています。店頭やネット通販では、これとは別にフレームにカーボン(炭素繊維)を使った製品を見かけることもあります。カーボンは一般に、同じ太さのパーツであればアルミより軽く作れる素材ですが、価格が上がりやすく、局所的に強い衝撃を受けたり折れ曲がる方向に力がかかったりすると、曲がらずに割れてしまう点がアルミと大きく異なります。アルミフレームは多少曲がっても現地である程度応急的に使い続けられる場合がありますが、カーボンは破損すると現場での補修が難しく、そのまま交換が前提になりやすい素材です。また金属であるアルミは低温下で素手に触れると冷たさを感じやすいのに対し、カーボンは熱伝導率が低く、冷え込む稜線でも冷たさを感じにくいという違いもあります。今回の7商品にカーボンフレームのモデルは含まれていないため、具体的な重量差・価格差を数値で比較することはできませんでした。カーボンフレームの椅子を検討する場合は、購入前に破損時の修理・保証の対応があるかどうかも確認しておくと安心です。
座り心地
座面の素材やハンモック状の構造によって、座り心地は製品ごとに変わります。長時間座る前提なら座面高や背もたれの有無も含めて確認し、短時間の休憩が中心なら軽さを優先するという考え方もできます。座面が地面に近いタイプは立ち座りがやや大変になる一方、重心が低く安定しやすいという面もあります。
設置性(地面への安定・設営のしやすさ)
登山道や山頂は必ずしも平らではありません。石が多い場所、傾斜がある場所、柔らかい土や雪が残る場所など、地面の条件は毎回変わります。脚の本数や接地面積、そして設営にかかる手間は、実際に使う場面を想像して選ぶ必要があります。休憩のたびに使うなら、いちいちザックを開けて中身を探さなくても取り出せる収納位置にしておくと、設営までの時間そのものを短縮できます。地面が柔らかい場所で起きる「脚が沈む」問題については、次の章で詳しく扱います。
機能性
テーブルを取り付けられるモデルや、収納ポケットが付いたモデルもあります。今回比較する7商品は椅子・スツール本体の比較に絞っていますが、用途に応じてこうした周辺機能もあわせて検討するとよいでしょう。カラーバリエーションが複数あるモデルも多く、ザックや他のギアとの組み合わせで選ぶ楽しみもあります。
見落とされがちな「脚が沈む」問題
柔らかい土・砂礫・雪では、脚が沈んで座面が傾く
折りたたみ椅子の多くは、細い脚が本体の重さと座る人の体重を数点で支える構造です。舗装された場所やベンチとは違い、登山道の休憩適地は柔らかい土や砂礫、森林限界を超えた先の砂地、稜線に残る雪であることが珍しくありません。こうした地面では脚が沈み込み、座面が傾いたり、片側だけ深く沈んで不安定になったりします。脚の先端が細く尖った形状の製品ほど、体重が一点に集中して沈み込みは大きくなりやすい傾向があります。反対に、脚先が広がっていたり複数点で接地したりする製品は、同じ地面でも比較的沈みにくくなります。
対策:グラウンドシートと接地面積
ヘリノックスは、砂地や雪面での沈み込みを軽減するオプションパーツとして、チェア専用のグラウンドシートを販売しています。4本の脚先をシートのカバーに通して使うことで、脚1本あたりの接地面積を広げ、沈み込みを抑える仕組みです。重量は1枚あたり150〜160g程度で、椅子と一緒に持ち歩いても大きな負担にはなりません。同じ発想の対策として、脚先に取り付けて接地面を丸く広げる「ボールフィート」タイプのパーツも販売されています。専用パーツを追加しない場合でも、平らな石を脚の下に挟む、なるべく踏み固められた場所を選ぶといった工夫で、沈み込みはある程度防げます。購入前には、脚の先端がどの程度の面積で地面と接するかも確認しておくと安心です。
椅子を広げる場所:登山道の上と植物の上は避ける
道の上に置かない
登山道の幅いっぱいに椅子を広げると、後ろから来る人やすれ違う人の通行をさえぎってしまいます。とくに狭い稜線やトラバース道、ハシゴや鎖場の前後では、椅子を出さずに通過するほうが無難です。なお、登山道で椅子を使うこと自体について定めた公式の案内は確認できていないため、ここは一般的な配慮として書いています。
道を外れて植物の上に置かない
道の脇にも注意が要ります。環境省は国立公園の利用上のマナーとして、木道や歩道から外れずに歩くよう呼びかけており、その理由として植物が踏み荒らされ、土が削られることによる自然環境の変化を挙げています(環境省「国立公園の利用上のマナー」、2026年9月15日確認)。細い脚に体重がかかる椅子は、土や植物に局所的に食い込みます。高山植物の咲く草地やコケの上は避け、山頂の広場や休憩用に整備されたスペース、すでに踏み固められた場所を選ぶと、前の章の「脚が沈む」問題も起きにくくなります。行き先の国立公園や自治体が独自の利用ルールを案内している場合もあるので、出発前に確認しておくと安心です。
背もたれ付きとスツール、どちらを選ぶか
背もたれ付き:重さと引き換えに休憩の質が上がる
今回比較する7商品のうち、背もたれが付いているのはヘリノックス チェアゼロ・モンベル トレールチェア26・ヘリノックス チェアワン ミニの3機種です。重量は331g〜490gと幅があり、ヘリノックスの2機種(433g・490g)はスツールより100g前後重くなる一方、モンベル トレールチェア26(331g)はスツールとほぼ同じ重さに収まっています。上体を預けられるぶん、テント泊での滞在時間が長い人や、山頂でゆっくり過ごしたい人には、この重さの差より快適さのメリットが上回りやすくなります。
BIG AGNES(ビッグアグネス) スカイラインULスツールは、アルミニウム合金フレームで重量539g、収納サイズ9×9×30cm、耐荷重113kgを公式サイトで確認できるモデルです。今回の7商品の最軽量ラインより重めですが、製品名に「UL」を掲げ、UL志向のハイカー・バックパッカー向けに設計されている点が今回のスツール4機種とは異なります。
スツール:軽さと設営の速さを優先するタイプ
ロゴス 7075ポケットスツール・コールマン コンパクトトレッキングスツール・ロゴス 7075キュービックチェア・キャプテンスタッグ トレッカー マイクロイージーチェアの4機種は、いずれも背もたれのないスツールタイプです。重量は300g前後まで抑えられ、脚を開いてシートに通すだけで座れる製品が中心なので、休憩のたびに出し入れする使い方に向いています。姿勢を自分で支える必要があるぶん長時間の快適さでは背もたれ付きに譲りますが、日帰り登山で短い休憩を何度も取るスタイルとは相性のよいタイプです。なお、今回の7商品の中で最軽量なのはロゴス 7075キュービックチェア(約300g)とキャプテンスタッグ トレッカー マイクロイージーチェア(300g)で、この2機種はほぼ並んでいます。
今回比較した7商品とは別に、製品名に「UL(ウルトラライト)」を掲げるモデルも登場しています。たとえばBIG AGNES(ビッグアグネス) スカイラインULスツールは、アルミニウム合金フレームで重量539g、収納サイズ9×9×30cm、耐荷重113kgと公式サイトで確認できます(出典は本記事末尾に記載)。7商品の中の最軽量モデルよりは重めですが、UL志向のハイカー・バックパッカー向けに設計されている点が名称にも表れています。一本のポールで支える「ハンディ」タイプと呼ばれる一脚足の椅子も市場にはありますが、現時点で公式サイトでの取り扱いを確認できなかった製品もあり、購入前に在庫と最新仕様を公式ページで確認することをおすすめします。
迷ったときは、次のような軸で考えると選びやすくなります。
- 背もたれ付きが向く人:テント泊で拠点に長くいる/山頂でゆっくり景色を楽しみたい/多少の重さより快適さを優先したい
- スツールが向く人:日帰りで荷物を軽くしたい/休憩ごとに出し入れする回数が多い/設営の手間を最小限にしたい
登山向け折りたたみ椅子 比較表(7商品)
数値はすべて公式ページ・販売ページで確認できたものだけを掲載しています。座面高が明記されていない製品は「—」としました。
| 製品 | 重量 | 収納サイズ | 座面高 | 耐荷重 | 背もたれ | 設営の手間 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ヘリノックス チェアゼロ | 490g(収納袋込み510g) | 10×10×35cm | 28cm | 約120kg | あり | フレームを組んでシートを張る |
| モンベル トレールチェア26 | 331g(スタッフバッグ込み363g) | 直径7.5×34cm | 26cm | 約80kg | あり | フレームを組んでシートを張る |
| ヘリノックス チェアワン ミニ | 433g(スタッフバッグ込み486g) | 26.5×8×11cm | 23cm | 90kg | あり(低め) | フレームを組んでシートを張る |
| ロゴス 7075ポケットスツール | 約340g | 縦12×横26×高さ5.5cm | — | 約100kg | なし | 脚を開いてシートに通す |
| コールマン コンパクトトレッキングスツール | 約375g | 約100×100×350mm | — | 約80kg | なし | 脚を開いてシートに通す |
| ロゴス 7075キュービックチェア | 約300g | 約6×27.5×5cm | — | 約120kg | なし | 脚を開いてシートに通す |
| キャプテンスタッグ トレッカー マイクロイージーチェア | 300g | 65×65×290mm | 23cm | 約60kg | なし | 脚を開いてシートに通す |
キャンプ用の折りたたみ椅子は登山に使える?重さと収納サイズを比べる
同じ「折りたたみ椅子」でも、キャンプ場やバーベキューで使う一般的なモデルと、ここで比較している登山向けのモデルとでは、作りの前提が違います。一般的なキャンプ用の例として、コールマンの「コンパクトフォールディングチェア」の公式仕様と比較表の数値を並べました。
| 項目 | キャンプ用の例(コールマン コンパクトフォールディングチェア) | 登山向け7商品(比較表より) |
|---|---|---|
| 重量 | 約2.1kg | 約300g〜490g |
| 収納時サイズ | 約54×8.5×56.5cm | 長辺26〜35cm(大きいものでも10×10×35cm) |
| 座面高 | 約28cm | 23〜28cm(記載のある4製品) |
| 耐荷重 | 約80kg | 約60〜120kg |
キャンプ用の例の数値はコールマン公式オンラインショップ コンパクトフォールディングチェア(グレージュ)製品ページの記載(2026年9月15日確認)。登山向け7商品の数値は比較表と同じ出典です。
重さ:キャンプ用の例は登山向けの約4〜7倍
約2.1kgは、比較表でもっとも重いヘリノックス チェアゼロ(490g)の約4倍、もっとも軽いロゴス 7075キュービックチェア(約300g)やキャプテンスタッグ トレッカー マイクロイージーチェア(300g)の約7倍にあたります。「軽量性」の章で触れたとおり、登山向けの椅子は500mlペットボトル1本前後の重さですが、キャンプ用の例はペットボトル4本分ほどです。
収納サイズ:日帰りザックの高さを超える
収納時の約56.5cmという高さは、日帰り用20Lクラスのザックの外寸を上回ります。たとえばモンベルのガレナパック 20は、公式ページの記載で高さ50×幅26×奥行18cmです(モンベル公式 ガレナパック 20製品ページ、2026年9月15日確認)。キャンプ用の例はザックの中には収まらず、外付けにするしかありません。幅も約54cmあるため、背負うとザックの左右にはみ出し、枝や岩に引っかかりやすくなります。一方、登山向け7商品は長辺が26〜35cmなので、同じザックの高さ50cmの範囲に縦向きで収まる寸法です。
座面高と耐荷重は、実はあまり変わらない
キャンプ用の例の座面高は約28cmで、ヘリノックス チェアゼロの28cmと同じ。耐荷重も約80kgで、モンベル トレールチェア26やコールマン コンパクトトレッキングスツールと同じ値です。登山向けのモデルは、座面の高さや支えられる重さを大きく削らずに、重さと体積を減らしていることが数値から読み取れます。背もたれの大きさや座面の広さなど、数値に出にくい差はあります。
流用してよい場面・避けたい場面
駐車場やロープウェイ山頂駅から少し歩くだけの場所なら、手持ちのキャンプ用チェアでも困らない場合があります。反対に、登りの長い山行や岩場・樹林帯を通るコースでは、重さと外付けの引っかかりが歩きにくさに直結します。同じコールマンでも、比較表に入っているコンパクトトレッキングスツールは約375gです。ブランドではなく登山・トレッキング向けに作られたモデルかどうかで重さの桁が変わる点は押さえておきたいところです。
コンパクトに持ち運ぶ:20L前後のザックのどこに収まるか
比較表の収納サイズから、日帰りでよく使われる20L前後のザックに収めるときの目安を整理します。ザックは前の章と同じモンベル ガレナパック 20(高さ50×幅26×奥行18cm)を例にしています。
収納時の形で、収まる場所が変わる
| 収納時の形 | 該当する製品(収納サイズ) | 収めやすい場所 |
|---|---|---|
| 細長い棒・円筒形 | モンベル トレールチェア26(直径7.5×34cm)、キャプテンスタッグ トレッカー マイクロイージーチェア(65×65×290mm)、ロゴス 7075キュービックチェア(約6×27.5×5cm) | サイドポケットに立てる/メインの背中側に縦に差す |
| 太めの角柱 | ヘリノックス チェアゼロ(10×10×35cm)、コールマン コンパクトトレッキングスツール(約100×100×350mm)、ヘリノックス チェアワン ミニ(26.5×8×11cm) | メインの中に縦に入れる。荷物が多い日は外付け |
| 平たい板状 | ロゴス 7075ポケットスツール(縦12×横26×高さ5.5cm) | 背中側の隙間に縦に差す |
ザックの幅が26cmなので、長辺26〜35cmの椅子は横に寝かせると窮屈です。どのタイプも縦向きに収めるのが基本です。
20Lのうち、どのくらいを使うか
収納サイズを箱(円筒形は円柱)とみなして体積を計算すると、20Lのザックに対する大きさの目安がつかめます。実際には袋の角が潰れたり隙間ができたりするので、厳密な値ではなく桁の感覚として見てください。
- ヘリノックス チェアゼロ、コールマン コンパクトトレッキングスツール(10×10×35cm):約3.5L(20Lの約6分の1)
- ヘリノックス チェアワン ミニ(26.5×8×11cm):約2.3L
- ロゴス 7075ポケットスツール(12×26×5.5cm):約1.7L
- モンベル トレールチェア26(直径7.5×34cm):約1.5L
- キャプテンスタッグ トレッカー マイクロイージーチェア(6.5×6.5×29cm):約1.2L
- ロゴス 7075キュービックチェア(約6×27.5×5cm):約0.8L
参考までに、前の章のキャンプ用チェアの例(約54×8.5×56.5cm)を同じ方法で計算すると約26Lになり、20Lのザック1つ分を超えます。
日帰りの20Lザックには、レインウェア、防寒着、水、行動食などが先に入ります。そこに約3.5Lを足すと中がかなり詰まるので、太めの角柱タイプは外付けも視野に入れておくと現実的です。細長いタイプや板状のタイプは0.8〜1.7L程度で、中に入れやすくなります。20Lのザックにどこまで入るかの考え方は、20Lのザックが日帰りの基準になる理由と選び方で詳しく扱っています。
サイドポケットに差すなら、太さを手持ちのボトルと比べる
サイドポケットの内寸は製品ページに書かれていないことが多く、ガレナパック 20の公式ページでも寸法は確認できませんでした。直径7.5cmのモンベル トレールチェア26や65×65mmのキャプテンスタッグ トレッカー マイクロイージーチェアを差すなら、普段そのポケットに入れているボトルと太さを比べておくと見当がつきます。長さが29〜34cmあり上に大きく出るので、コンプレッションストラップで押さえると抜け落ちにくくなります。
外付けにするなら、揺れない固定と雨への備え
外付けは、ぶら下げるよりコンプレッションストラップなどでザック本体に沿わせて固定するほうが、揺れず、枝や岩にも引っかかりにくくなります。前述のとおり外付けの椅子は雨で収納袋ごと濡れます。ザックを雨から守るレインカバーや、濡らしたくない物を分ける防水袋については、ザックと一緒にそろえたいレインカバー・防水袋・小物の選び方でまとめています。
登山におすすめの折りたたみ椅子7選

背もたれ付きモデルとスツールタイプに分けて紹介します。重量・座面高・耐荷重は前章の比較表と対応しているので、気になる製品があれば見比べてみてください。
背もたれ付きモデル
上体を預けられる分だけ重量が増えますが、テント泊や山頂で長く座りたい人には快適さで報いてくれる3機種です。
ヘリノックス チェアゼロ
「チェアワン」の座り心地を引き継ぎながら軽量・コンパクト化した、背もたれ付きの代表モデルです。重量は490g(収納袋込み510g)、座面高28cm、耐荷重は約120kg(静荷重)。収納サイズは幅10×奥行10×高さ35cmで、ザックのサイドに立てて収めやすい形状です。設営はポールを組んでシートの角を4箇所掛ける方式で、スツールよりひと手間かかりますが、座面がハンモック状に沈み込む構造で腰まわりが締め付けられにくいのが引き換えの利点です。柔らかい地面では脚が沈みやすいため、前章で紹介したグラウンドシートを併用すると安定します。テント泊で夕方から夜まで拠点に座って過ごす、というスタイルでとくに真価を発揮する1脚です。
モンベル トレールチェア26
331g(スタッフバッグ込み363g)と、7商品の中でもっとも軽い背もたれ付きモデルです。座面高26cm、収納サイズは直径7.5×34cmの円筒形で、耐荷重は約80kg(静荷重)。他の背もたれ付き2機種より耐荷重は控えめなぶん、軽さを優先したい人向けの選択肢です。フレームを広げてシートを張る設営方式は他の背もたれ付きモデルと同じですが、パーツ数が少なく組みやすいと販売ページで案内されています。日帰りでも山頂で腰を落ち着けたい人や、テント泊の総重量を少しでも抑えたい人に向いています。
ヘリノックス チェアワン ミニ
ヘリノックスのチェアシリーズの中でもっとも軽量・コンパクトな背もたれ付きモデルです。重量433g(スタッフバッグ込み486g)、座面高23cm、収納サイズ26.5×8×11cm、耐荷重90kg(静荷重)。座面が低く背もたれもやや小さめなので体格の大きい人には窮屈に感じられることがありますが、そのぶん収納サイズはチェアゼロより一回り小さくまとまります。子どもと共有しやすい座面高でもあり、家族で登山を楽しむ場面や、荷物を極力小さくまとめたい単独行の両方で選択肢に入る1脚です。
スツールタイプ
背もたれを省いた分、重量と設営の手間を減らせる4機種です。休憩のたびにサッと出し入れしたい人に向いています。
ロゴス 7075ポケットスツール
7075超々ジュラルミン製フレームで、重量約340g、耐荷重は約100kg。使用時は高さ26.5×幅24×奥行22.5cm、収納時は縦12×横26×高さ5.5cmとコンパクトにまとまります。脚を開いてシートに通すだけの設営で、背もたれ付きより着座までの手順が少ないタイプです。脚先の接地面積はそれほど広くないため、砂地や雪の上では沈み込みに注意が必要です。付属の収納袋に入れてザックのポケットに差しておけば、休憩のたびにサッと取り出せます。
コールマン コンパクトトレッキングスツール
重量約375g、使用時サイズ約260×260×260mm、収納時は約100×100×350mm、耐荷重は約80kg。ジュラルミンフレームを採用し、収納ケースが付属します。4本脚で接地点が分散するため、砂礫の斜面でも比較的安定して置きやすい形状です。設営は脚を開くだけのシンプルな方式で、キャンプ用品ブランドらしく登山以外のアウトドアシーンでも扱いやすい定番の作りです。
ロゴス 7075キュービックチェア
同じロゴスの7075ポケットスツールと素材は共通ですが、重量約300gとさらに軽く、耐荷重は約120kgまで引き上げられています。使用時サイズは高さ21×幅20.5×奥行20.5cm、収納サイズは約6×27.5×5cm。座面が正方形に近く、腰を下ろす向きを選ばないのが特徴です。同じロゴス製品同士で違いが分かりにくい場合は、耐荷重の高さと座面形状の違いで使い分けを考えるとよいでしょう。より軽く、より高い耐荷重を求める人には、ポケットスツールよりこちらが候補になります。
キャプテンスタッグ トレッカー マイクロイージーチェア
「イージーチェア」という名前ですが、公式ページで確認する限り背もたれは付いていないスツールタイプです。重量300g、使用時サイズは幅20×奥行20×高さ23cm、座面高23cm、収納サイズ65×65×290mm、耐荷重は約60kgと7商品の中では控えめです。スツールタイプ4機種の中では唯一、座面高を公式に明記している製品でもあります。軽さを最優先しつつ、座面の高さだけは事前に確認しておきたい人に向いています。耐荷重に余裕を持たせたい人は、比較表で他の6商品ともあわせて確認しておくと安心です。
椅子を持たない、という選択肢
ここまで椅子を前提に解説してきましたが、「そもそも荷物を増やしたくない」という人には、椅子を持たずに済ませる方法もあります。地面から伝わる冷えや硬さが気になるだけなら、椅子より軽い座布団タイプで足りる場面も多いはずです。断熱性能を示すR値や重量・厚みで座布団を比較したい人は、登山用座布団の選び方|R値・厚み・重量を7商品で比較にまとめているので、椅子と合わせて検討してみてください。テント泊で就寝時に使うスリーピングマットについては登山マットのおすすめ人気モデルと選び方で扱っています。
もう一歩踏み込むと、椅子はいらないと言い切れる山登りもあります。目安になるのは、日帰りで休憩が数分〜10分程度と短い、下山口や山頂付近にベンチが設置されている、腰を下ろせる平らな岩が多いコースである、ザックを地面に置いて座面代わりにできる、といった条件です。こうした条件がそろっているなら、無理に椅子を追加しなくても休憩の質はそれほど落ちません。日帰りのハイキングで立ち寄る休憩ポイントも同様に、ベンチや岩場の有無を先に確認しておくと荷物を減らせます。逆に、ここまで見てきたようにテント泊で長時間拠点に留まる、山頂で腰を据えて景色を楽しみたいといった場面では、椅子があることの効果は小さくありません。
よくある質問
Q. 日帰り登山でも椅子は持っていくべきですか?
休憩が数分〜10分程度なら、なくても大きくは困りません。荷物を減らしたい日帰り登山では、無理に持っていかない選択も合理的です。山頂で長く景色を楽しみたい、休憩を何度も取りたいという人は、軽量なスツールタイプから検討するとよいでしょう。
Q. 折りたたみ椅子の設営にペグは必要ですか?
今回紹介した7商品はいずれもペグを使わず、地面に置くだけで使えます。テントやタープのように地面へ固定する必要がないぶん、設営はシンプルです。ただし風が強い稜線や山頂では、軽い椅子ほど風にあおられやすいので、置き場所や荷物での風よけを工夫すると安定します。
Q. 地面が柔らかくて脚が沈むときはどうすればいいですか?
砂地や雪の上では、脚の接地面積を広げるのが基本的な対策です。ヘリノックスのようにチェア専用のグラウンドシートを用意しているブランドもあります。専用パーツがない場合は、平らな石を脚の下に挟む、踏み固められた場所を選ぶといった方法でも沈み込みはある程度防げます。
Q. 背もたれ付きとスツール、初心者にはどちらがおすすめですか?
どちらが正解ということはなく、休憩スタイルで選ぶのが基本です。テント泊や山頂で長く座るなら背もたれ付き、日帰りで荷物を軽くしたいならスツールが向いています。迷う場合は、ヘリノックスの背もたれ付きとスツールの重量差が100g前後、モンベル トレールチェア26ならスツールとほぼ同じ重さであることを踏まえたうえで、快適さを優先するか軽さを優先するかで決めるとよいでしょう。
Q. UL(ウルトラライト)志向でも椅子は持っていく価値がありますか?
グラム単位で軽量化するUL(ウルトラライト)志向とは相性が悩ましい装備ですが、今回紹介したスツールタイプは300g前後に収まっています。休憩の快適さを完全に手放したくない人は、7商品の中でもっとも軽い部類にあたるロゴス 7075キュービックチェア(約300g)とキャプテンスタッグ トレッカー マイクロイージーチェア(300g)のようなスツールから検討すると、軽量化との折り合いをつけやすくなります。製品名にULを掲げるBIG AGNES スカイラインULスツール(539g)のように、UL層向けを明確にうたったモデルも選択肢に入ります。
Q. カーボンフレームの椅子は登山に向きますか?
向き不向きは使い方次第です。カーボンは同じ太さのパーツならアルミより軽く、稜線で感じる冷たさも小さい素材ですが、局所的な強い衝撃を受けて割れると、現地での応急処置が難しくなります。岩場や不整地に置くことが多い登山用途では、多少重くても曲がって粘るアルミフレームのほうが扱いやすいと感じる人もいます。今回比較した7商品はいずれもアルミ・ジュラルミン系フレームで、カーボンモデルとの具体的な重量差・価格差は確認できていません。カーボンフレームの椅子を検討する場合は、破損時の修理・保証の対応を公式ページで確認してから選ぶと安心です。
Q. 椅子を持たずに休憩する方法はありますか?
地面からの冷えや硬さが主な不満なら、椅子より軽い座布団タイプでも代用できます。断熱性能や重量で座布団を比較したい人は登山用座布団の比較記事もあわせてご覧ください。
Q. 折りたたみ椅子は就寝用のスリーピングマットの代わりになりますか?
なりません。椅子は座るための道具で、体の一部分を支える設計です。就寝時に全身を地面の冷えから守る用途には、別途スリーピングマットが必要になります。テント泊の下敷きについては登山マットのおすすめ人気モデルと選び方で扱っています。
Q. 収納サイズが小さい製品ほど登山向きですか?
一概にはいえません。収納サイズが小さい製品は持ち運びやすい一方、座面高が低かったり背もたれが小さかったりと、快適さを削って小型化している場合があります。比較表で収納サイズと座面高・背もたれの有無を合わせて確認し、自分がどちらを優先したいかで選ぶのがおすすめです。
Q. 同じブランドで背もたれ付きとスツールの両方がある場合、どちらを先に検討すべきですか?
まずは自分の休憩スタイルを基準に考えるのがおすすめです。今回はヘリノックスとロゴスがそれぞれ背もたれ付き・スツールの両方をラインナップしていますが、同じブランドでも重量や設営の手間は別物です。ブランドで絞り込むより、比較表の重量・座面高・耐荷重・背もたれの列を横に見比べて選ぶほうが失敗しにくくなります。
まとめ

登山用の折りたたみ椅子が必要かどうかは、休憩や滞在の時間で決まります。日帰りで休憩が短いなら無理に持たなくてもよく、テント泊や山頂でゆっくり過ごすなら、重さに見合うだけの快適さが得られます。
選ぶときは、重量・座面高・耐荷重といった数値に加えて、背もたれの有無と設営の手間、そして柔らかい地面での脚の沈み込みまで確認しておくと、実際の山行で後悔しにくくなります。今回紹介した7商品はいずれも公式ページ・販売ページで数値を確認したものなので、比較表を目安に自分の休憩スタイルに合う1脚を選んでみてください。
迷ったら、まずは自分の山行を思い浮かべてみましょう。日帰りで休憩が短いならスツールタイプ、テント泊や山頂でゆっくり過ごすなら背もたれ付き、というように使い方から逆算すると、重量と快適さのどちらを優先すべきかが見えてきます。椅子を持たない選択肢とあわせて、自分の登山スタイルに合う休憩の形を見つけてください。
出典
- モンベル公式 L.W.トレールチェア26製品ページ(重量331g・座面高26cm・耐荷重約80kg)
- ロゴスショップ公式 7075ポケットスツール製品ページ(重量約340g・耐荷重約100kg)
- モンベル公式(ヘリノックス取扱)チェアゼロ製品ページ(重量490g・座面高28cm・耐荷重約120kg)
- モンベル公式(ヘリノックス取扱)チェアワンミニ製品ページ(重量433g・座面高23cm・耐荷重90kg)
- コールマン公式 コンパクトトレッキングスツール製品ページ(重量約375g・耐荷重約80kg)
- ロゴスショップ公式 7075キュービックチェア製品ページ(重量約300g・耐荷重約120kg)
- キャプテンスタッグ公式 トレッカー マイクロイージーチェア製品ページ(重量300g・座面高23cm・耐荷重約60kg)
- Helinox公式 オプションパーツ一覧(グラウンドシート)(脚の沈み込み対策パーツ・重量150〜160g程度)
- イワタニ・プリムス公式(BIG AGNES正規輸入代理店) スカイラインULスツール製品ページ(重量539g・収納サイズ9×9×30cm・耐荷重113kg・アルミニウム合金フレーム)
- コールマン公式 コンパクトフォールディングチェア(グレージュ)製品ページ(キャンプ用の例:重量約2.1kg・収納時サイズ約54×8.5×56.5cm・座面高約28cm・耐荷重約80kg)
- モンベル公式 ガレナパック 20製品ページ(容量20L・サイズ高さ50×幅26×奥行18cm・サイドポケットあり)
- 環境省「国立公園の利用上のマナー」(木道や歩道から外れずに歩く・植物の踏み荒らしによる自然環境の変化を防ぐ)
※比較表7商品の数値は2026年8月14日時点、BIG AGNES スカイラインULスツールの数値は2026年9月1日時点、コールマン コンパクトフォールディングチェアとモンベル ガレナパック 20の数値、環境省のマナーの記載は2026年9月15日時点で、各公式ページ・販売ページに記載の値です。座面高が「—」の製品は、公式ページに座面高の記載がありませんでした。
