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テント泊のザックは何リットルを選べばいいのか
テント泊のザック選びは、容量の数字が決まらないと一歩も進みません。50Lか、60Lか、70Lか。ここで止まったまま商品ページを何十枚も開いて、その日は結局何も買わずに閉じた——という人はかなり多いはずです。
先に数字を置きます。夏の1泊2日で自分で食事を作るなら55〜65L。どれだけ削っても50Lが下限。これはYAMA HACKが示している目安です。60Lがピンと来なければ、2Lのペットボトル30本ぶんの空間だと思ってください。テント、シュラフ、マット、クッカー、2日分の水と食料が、そこに全部入ります。
覚えやすい式もあります。「山小屋に1泊するときのザック容量+30L」。テント・シュラフ・マット・調理器具という、山小屋泊では持たなくていい装備の体積が、おおよそ30Lだからです。
ただ、容量が決まっても買う一台は決まりません。むしろここからが本題です。同じ60L前後でも、本体だけで1,200gのモデルと2,470gのモデルがある。差は1kg以上——水を1L、最初から余分に背負っているのと変わりません。しかも背面長が体に合っていなければ、その重さは腰ではなく肩に全部乗ります。容量・重量・背面長。この3つが揃って、はじめて「自分の一台」になります。
この記事でわかること
- 「山小屋1泊+30L」でテント泊の必要容量を出す方法と、泊数×季節×体格の早見表
- 容量が合っていても失敗する3つの理由(背面長・フレーム・レインカバー)と、その判定手順
- 55〜70L帯の主要10モデルを容量・重量・価格で横並びにした比較表
- 40L台でテント泊は成立するのか、という下限の話
- この容量帯を買わないほうがいい人の条件
テント泊の魅力と荷物の多さ


テント泊登山は日帰り登山とは一味違う魅力がたくさんあります。まず何より、自然の中で過ごせる時間が格段に長くなります。日帰りでは見られない夕暮れ時の景色や、街では絶対に見えない星空を楽しめるのが大きな魅力です。テントに寝袋を敷いて山ごはんを楽しみながら仲間と語らうひと時は格別で、自分のペースで時間が流れていきます。
一方で、テント泊には日帰りには必要のない荷物がついてきます。テントやシュラフ、クッキング用品、食料など、荷物が格段に増えるのが特徴です。初めて挑戦する人が最初に戸惑うのは、たいていこの荷物の多さです。
ここで問題になるのが総重量です。装備の総重量については、競合各社の記述では基本15〜20kg、軽量化を徹底して10kg前後というレンジが示されています。当サイトの旧記事では10〜15kg・軽量化で10kg以下と書いていましたが、これは少し楽観的な数字でした。初回の装備一式は「借りものが混ざる」「不安で余計に持つ」という事情が必ず入るので、15kg前後を想定しておくほうが現実に近いです。
15kgと10kgは、まったく別の登山になります。5kgの差はビール500ml缶10本ぶん。コースタイムの伸び方も、下りの膝への負担も別物です。容量を決める前に「自分は何kgを背負う計画なのか」を先に決めてください。容量だけ大きくすると、空いた隙間はほぼ確実に荷物で埋まります。
自然の中で非日常を体験する準備
テント泊は、準備さえ間違えなければ初心者でも成立します。逆に言えば、失敗のほとんどは山ではなく買い物と自宅のパッキングで起きています。何を持っていくかがまだ固まっていない人は、初心者のテント泊登山に必要な持ち物リストで先に装備の全体像を確認してから、この先の容量計算に進むと数字が具体的になります。
テント泊を100倍楽しむザックの選び方【容量の決め方】

覚える式はひとつだけ「山小屋1泊+30L」
容量の目安として広く使われているのが「山小屋に1泊するときのザック容量に30Lを足す」という換算です。テント本体、ポール、ペグ、シュラフ、マット、クッカー、燃料。山小屋泊なら置いていける装備の体積が、ざっくり30L分あるという考え方です。
つまり、この式を逆から読むこともできます。テント泊の目安が55〜65Lということは、その前段の山小屋1泊は25〜35L。日帰り登山で30L前後のザックを使っている人なら、テント泊は60L前後が出発点になる、という読み替えです。自分が今どのサイズを使っているかがわかっていれば、計算はそこで終わります。手持ちが30L級かどうかを確認したい人は登山用30Lザックの選び方と使いどころを見比べてみてください。
容量の基準値(2026年8月11日確認時点)
- 1泊2日のテント泊で自炊をするなら 55〜65L
- どこまで削っても 50L以上 が最低ライン
- 50L前後で収める運用もあるが、高価な軽量ギアが前提で初心者には難しい
- ザック本体の重量は 3kg以下 に収めたい
泊数×季節×体格の容量早見表
上の式だけだと、2泊目以降や春秋の装備増をどう扱えばいいのかが残ります。そこで、公表されている目安値と「+30L」の式から、編集部で条件別に組み直したのが次の表です。「山小屋1泊の容量」の列は、55〜65Lという目安から30Lを引いて逆算した数値です。
| 条件(泊数×季節) | 山小屋1泊なら | +30Lの計算 | 目安容量 | 背面長が短い人の調整 |
|---|---|---|---|---|
| 夏・1泊2日・自炊あり | 25〜30L | 25+30/30+30 | 55〜60L | 容量は上げず、本体重量の軽い側を選ぶ |
| 夏・1泊2日・自炊なし/軽量ギア中心 | 20〜25L | 20+30/25+30 | 50〜55L(50Lが下限) | 50L台前半は本体が短く、小柄な人と相性が良い |
| 夏・2泊3日 | 30〜35L | 30+30/35+30 | 60〜65L | 増えるのは主に食料。容量より詰め方で吸収する |
| 春・秋の1〜2泊(防寒着と厚手シュラフ) | 30〜35L | 30+30/35+30 | 60〜65L(夏の一段上) | 拡張機能付き(+10L・+20L)で普段は絞る |
| 3泊以上の縦走/残雪期 | 35L以上 | 35+30〜 | 65L以上 | 総重量が20kg近づくため、軽量モデルは避ける |
表の見方でひとつ補足します。季節の欄を「+何L」ではなく「一段上の容量帯」と書いたのには理由があります。春秋に増えるのはダウンジャケットや厚手のシュラフといった、圧縮すると小さくなるけれど圧縮しないと大きい装備です。何リットル増えるかは持ち物次第で振れ幅が大きく、数字で言い切れません。そのためひとつ上の容量帯に寄せるという粒度で扱うのが、実務的には安全です。
編集部の見立て:迷ったら60Lです。55Lだと季節が変わった瞬間に足りなくなり、70Lだと隙間を埋めたくなる。60Lは「+30L」の式に夏も春秋もぎりぎり収まる、いちばん潰しの利く数字だと整理しています。
拡張容量(60+20・50+10)の数字をどう読むか
商品名に「60+20」「50+10」と書かれているモデルがあります。これは本体60Lに、雨蓋を引き上げるなどして最大20L分を追加できる、という表記です。数字だけ見ると80Lのザックに見えますが、実態は違います。
拡張部分は縦に伸びる構造なので、目一杯使うと荷物の重心が高く、後ろに引かれます。使いどころは「行きは食料で満載、帰りは空になる」ような長期縦走や、下山後に土産と着替えが増えるケース。ふだんの1泊2日で常時20Lを開けて歩く前提の買い方をすると、背負い心地の面で損をします。拡張は保険であって、常用の容量ではありません。
容量が合っていても失敗する3つの理由
ここからがこの記事の本題です。容量の数字だけで買って後悔する人は、たいてい次の3つのどれかを見ていません。順にチェックしていってください。
判定軸①:背面長(自分の胴の長さ)
ザックの荷重は肩ではなく腰で受けます。腰で受けるには、ヒップベルトが骨盤の正しい位置に乗っている必要があり、それを決めるのが背面長です。背面長は首を前に倒したときに出っぱる骨(第7頸椎)から、腰骨の上端を結んだ線の長さ。壁を背にして家族に測ってもらうか、メジャーを背中に当てて測ります。
この数値がなぜ重要かというと、同じ60Lでもメーカーはサイズ違いを用意しているからです。たとえばグラナイトギアのクラウン3 60は、レギュラーが背面長46〜53cm、ショートが38〜46cmという展開になっています。ここが合っていないと、ヒップベルトが骨盤の上に乗らず、15kgが全部肩に来ます。容量選びを何日かけて悩んでも、この一点を外すと快適さは戻ってきません。
買う前に確認する3項目
- 自分の背面長を㎝で把握したか(測っていないなら、まずそこから)
- 候補モデルにサイズ展開があるか、あるいは背面長調整機構があるか
- 調整機構がある場合、自分の数値がその可動範囲の真ん中あたりに来るか(端だと調整代がない)
判定軸②:フレーム(重さと引き換えに何を買うか)
テント泊用ザックの本体重量は、この記事で扱う10モデルでも1,200gから2,660gまで開きがあります。差の正体はほぼフレームと背面構造です。
具体的に並べると、グラナイトギア クラウン3 60が1,200g、ドイター エアコンタクトコア50+10が2,160g。差は960gあります。これは水1L弱を、荷物を入れる前から背負っているのと同じことです。ただし軽いほうが常に正解かというと、そうはなりません。フレームを削ったザックは、重い荷物を腰に伝える力も同時に落ちています。クラウン3はリッドとフレームを外せば980gまで落ちる設計で、これは「軽くするために構造を抜ける」ザックだという意味でもあります。
つまり選択はこうなります。総重量10kg前後まで絞り込める人は軽量フレームで軽さを取る。15kgを超える計画の人は、1kg重くても背面がしっかりしたモデルを選んで、その1kgで残り14kgを楽にする。ザック単体の重量表だけを見て軽い順に選ぶと、この判断を飛ばすことになります。
重量表記はメーカーごとに条件が違います。リッドやレインカバー、フレームを含む重量なのかどうかで数百g変わるため、100g単位の比較にはあまり意味がありません。500g以上の差が出たときだけ、その差の理由(フレームか、生地か、機能か)を確認するくらいの見方が実用的です。
判定軸③:レインカバー(付属か別売りか)
テント泊は行動時間が長く、二日目の午後に降られる確率は日帰りの比ではありません。ザックが濡れて困るのは中身よりむしろ本体で、生地が水を吸うと数百g単位で重くなります。
ここで見落としがちなのが、レインカバーが標準付属のモデルと、別売りのモデルが混在していることです。グレゴリー スタウト70は付属レインカバーを備え、オスプレー イーサープラス60もレインカバーが標準装備。一方で軽量志向のモデルは、カバーを省いて重量表記を軽く見せているケースがあります。別売りなら2,000円前後の追加出費と、100〜200g程度の重量増を最初から計算に入れておいてください。
テント泊用ザック10モデル比較表
ここまでの3軸を踏まえて、55〜70L帯の主要モデルを横並びにしました。数値はすべてメーカー公式または正規代理店の公表値です(2026年8月11日確認時点)。価格は変動しますので、購入前に販売ページでご確認ください。
| モデル | 容量 | 本体重量 | 価格(2026年8月11日確認時点) | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|---|
| グレゴリー バルトロ65 | 65L | S:0.95kg/L:0.97kg ※ | 55,000円 | 最初の1本から縦走まで長く使う |
| ノースフェイス テラ65 | 65L | S/M:約1,950g/L/XL:約2,110g | 36,300円 | 価格を抑えて65Lを確保する |
| ミレー プロライター60+20 | 60+20L | 1,550g | 41,800円 | 60L級で軽さも欲しい/季節で振れる |
| オスプレー イーサープラス60 | S/M:58L/L/XL:60L | S/M:2.54kg/L/XL:2.66kg | 40,700円 | レインカバー標準・下山後もデイパック運用 |
| グラナイトギア クラウン3 60 | 60L | 1,200g(リッド・フレーム無しで980g) | 38,500円 | 総重量を10kg前後に絞れる人 |
| ミステリーランチ レイディックス57 | 60L | 1.7kg | 45,100円 | 軽さと荷重支持のバランスを取る |
| グレゴリー スタウト70 | 70L | 1.66kg | 40,700円 | 3泊以上・レインカバー付属で始めたい |
| ミレー サースフェー60+20 | 60+20L | 2,470g | 約29,000円 | 耐久性重視・予算を抑えたい |
| ドイター エアコンタクトコア50+10 | 50+10L | 2,160g(2026年モデル) | 40,700円 | 背面の通気性を最優先する |
| ノースフェイス コブラ65 | S:56L/L:57L | S/M:約1,620g/L/XL:約1,670g | 47,300円 | 岩稜・雪稜などアルパイン寄りの用途 |
※ バルトロ65の0.95kgという表記は、フレーム等を除いた本体重量としての公式表記です。他社の「フル装備状態の総重量」とは条件が揃っていないため、この行だけを見て「いちばん軽い」と判断しないでください。重量は必ず、同じ条件で書かれた数値どうしで比べる必要があります。
おすすめのテント泊登山用ザック10選

ここからは1モデルずつ、公表スペックと「どういう人の計画に噛み合うか」を書いていきます。ブランドごとの背面構造の違いをもっと広く見たい人は、登山ザックの人気ブランド比較もあわせてどうぞ。
グレゴリー バルトロ65(型番142440ほか)
競合メディア5サイトのうち3サイトが共通して挙げていた定番機種です。容量65L、価格55,000円(2026年8月11日確認時点)。型番はサイズ・カラー別に142439/142440/142441/157939などが並びます。公式の重量表記はS:0.95kg/L:0.97kgですが、これはフレーム等を除いた本体重量としての表記なので、他社の総重量とは並べられません。
このモデルを最初に置いた理由は、早見表のどの行にも収まるからです。65Lあれば夏の1泊2日(55〜60L)でも余裕を残せ、春秋の一段上(60〜65L)にも、3泊以上(65L以上)にもそのまま乗ります。ザックを2本持つ気がないなら、この容量が最も長持ちします。
編集部の見立て:予算が許すなら、最初の1本はここから検討するのが結局いちばん安く済むと考えています。55Lで始めて翌シーズンに65Lを買い直すと、合計金額はこれを超えます。
THE NORTH FACE テラ65
ノースフェイスの定番大型バックパックです。容量は公式表記で65L、価格36,300円(2026年8月11日確認時点)。重量はS/Mが約1,950g、L/XLが約2,110gと、サイズによって160gの差があります。
ひとつ訂正があります。当サイトはこれまでこのモデルの容量を62Lと記載していましたが、ゴールドウイン公式の表記は65Lでした。流通する型番によってスペック表記が分かれている可能性があるため、購入時は販売ページの型番と容量表記をご確認ください。
特徴は背面長の調整機構を持っていること。前章の判定軸①で書いたとおり、既製サイズが体格に合わない人にとって調整幅があることは、容量以上に効いてきます。65Lをこの価格帯で確保できる点も含め、最初のテント泊用として現実的な選択肢です。通気性を高めたバックパネル、クッション性のあるショルダーストラップ、荷重を腰に伝えるヒップベルトという構成も、標準的な装備量に噛み合います。
MILLET プロライター60+20(MIS2270)
本体60Lに20Lの拡張機能を備えたモデルで、重量1,550g、サイズW31×H63×D22cm、価格41,800円(2026年8月11日確認時点)。60L級としては軽い部類に入ります。
注目したいのは、この重量で拡張機構と「X-LIGHTER BACK™」システムを両立させている点です。ダイレクトアクセスジッパーとトップスカートにより、パッキングと容量調整の手数が少なく済みます。早見表の「春・秋は一段上の容量帯へ」という調整を、ザックを買い替えずに吸収したい人にはこの拡張が効きます。夏は60Lで絞り、寒い時期は上に伸ばす。ギアホルダーやスキー装着機能も備わっており、シーズンをまたいで使う想定の設計です。
オスプレー イーサープラス60(10002900〜10002903)
容量はS/Mが58L、L/XLが60L。重量はS/Mが2.54kg、L/XLが2.66kg。価格は40,700円(2026年8月11日確認時点)です。数値だけを見ると重い側に入りますが、その重さの内訳がはっきりしているモデルでもあります。
まずレインカバーが標準装備。判定軸③で触れたとおり、これを別売りで買い足すと出費と重量が後から乗ってきます。加えて雨蓋を取り外してデイパックとして使える構造で、テント場にベースを張って空身で山頂を往復する、という歩き方に対応します。1本のザックで「担ぎ上げ」と「アタック」の両方をこなしたい人には、この2.5kg台は納得できる重さです。
このモデルの容量・重量・価格は、オスプレー公式サイトへ到達できなかったため、複数の販売店ページの記載値を採用しています(2026年8月11日確認時点)。購入前に販売ページの数値をご確認ください。
GRANITE GEAR クラウン3 60
この10モデルで最も軽い1,200g。リッドとフレームを外せば980gまで落ちます。容量60L、価格38,500円(2026年8月11日確認時点)。背面長はレギュラーが46〜53cm、ショートが38〜46cmという2サイズ展開です。
1,200gという数字を言い換えると、500mlのペットボトル2本半。2,000g台のモデルと比べて、荷物を入れる前に約1kg軽い状態から始められます。ただし判定軸②で書いたとおり、この軽さはフレームを抜ける設計と引き換えです。総重量が15kgを超えると、腰に伝わらなかった荷重が肩に回ります。装備を10kg前後まで絞り込めているかどうかが、このザックを選べるかどうかの分かれ目です。
独自の「RE-FITウエストベルト」で荷重を腰に伝える設計、撥水加工の生地と雨蓋、サイドポケットやアクセサリーポケットといった収納も備わっています。背面長のサイズ展開が明示されている点も、体格で悩んでいる人には選びやすい材料です。
MYSTERY RANCH レイディックス57
製品名は57ですが、実寸容量は60L。重量1.7kg、価格45,100円(2026年8月11日確認時点)。アルミフレームを備えたうえでこの重量に収めているのが、このモデルの立ち位置です。
クラウン3の1,200gとエアコンタクトコアの2,160gのちょうど中間にあたり、フレームによる荷重支持を残しながら軽さも確保しています。背面には通気性の高いメッシュパネル、ショルダーストラップとウエストベルトにも十分なクッション性。ジッパー式のサイドポケットやアイスアックスループなど、縦走で必要になる機能もひととおり揃います。「軽量モデルは不安だが2kg超は避けたい」という条件に、数字がそのまま当てはまります。
編集部の見立て:1.7kg前後というのは、テント泊ザックの重量としてかなり扱いやすい帯です。フレームの安心感を捨てずに軽くしたい人は、まずこの帯から探すと候補が絞れます。
GREGORY スタウト70(149377A266)
70Lの大容量モデル。重量1.66kg、価格40,700円(2026年8月11日確認時点)。この容量でこの重量というバランスが特徴で、早見表の最下段「3泊以上の縦走/残雪期=65L以上」に真正面から当たります。
70Lは2Lペットボトル35本ぶんの空間です。1泊2日には明らかに大きすぎますが、逆に「夏の縦走で3泊、食料も燃料も全部担ぐ」という計画なら、60Lでは詰め方の工夫だけでは足りません。クイック調整システムで背面を合わせられ、通気性のあるバックパネル、そしてレインカバーが付属します。判定軸③の追加出費が発生しない点は、トータルコストで見ると意外に効きます。
ただし70Lを1泊2日用に買うのは勧めません。空いた空間は「あってもいいもの」で埋まり、結果として総重量が2〜3kg増えるのがよくある展開です。容量は足りるいちばん小さい数字を選ぶのが原則です。
MILLET サースフェー60+20(MIS0637)
本体60L+拡張20L、重量2,470g、サイズW34×H70×D20cm。価格は小売実勢で約29,000円(2026年8月11日確認時点)と、この10モデルの中では最も手が届きやすい価格帯です。
耐久性に優れたCORDURA®ナイロンを使い、背面パッドの高さを調整できる構造を持ちます。背面調整があるという点は、判定軸①の観点でかなり大きい。上部と下部の両方からアクセスできるダブルアクセス設計、両サイドのメッシュポケット、アイスアックスループ、ツェルト取り付け用Dリング。長く売られ続けているロングセラーで、機能の抜けが少ないのが強みです。
2,470gという重量は軽くはありません。そのぶんが生地の厚さと背面構造に回っていると読むのが妥当で、「予算を抑えつつ、荷物が重くなる計画にも耐える1本」という位置づけになります。
deuter エアコンタクトコア50+10(D3350322)
本体50L+拡張10L、価格40,700円(2026年8月11日確認時点)。重量については重要な変更があります。2026年モデルで背面パッドが「エアスペーサーメッシュ」に刷新され、腰と背面の間に通気スペースが新設されたことにより、重量が従来の1,640gから2,160gへ変わりました。旧スペックのまま比較すると520gの誤差が出るため、他モデルと並べるときは2,160gで計算してください。
520g増やして何を買ったのか、という話です。背中と腰の間に空気の通り道を作る構造は、夏の樹林帯でシャツが背中に張り付く不快感を減らすための設計です。汗をかく量が多い人、蒸れが理由で行動ペースを落としてしまう人にとっては、この重量増が割に合う可能性があります。逆に、重量表だけを見て軽い順に選ぶ人の候補からは外れやすいモデルでもあります。
容量50+10Lは早見表の「夏・1泊2日・自炊なし/軽量ギア中心=50〜55L」に本体で対応し、季節が変わったら+10Lで吸収する、という組み立てになります。
THE NORTH FACE コブラ65(NM62355)
ノースフェイスの最高峰ライン「SUMMIT SERIES」のアルパインパックです。価格47,300円(2026年8月11日確認時点)、重量はS/Mが約1,620g、L/XLが約1,670g。
ここで数字を正確に読んでおく必要があります。製品名は「65」ですが、実容量はSが56L、Lが57Lです。名前で65Lだと思って買うと、早見表で言えば一段下の容量帯を手にすることになります。メイン素材にスペクトラ繊維を採用し、TPUコーティングで防水性も高めた、耐切創性能重視の構成。クライマーチームと共同開発された背面とヒップベルトを持ちます。
一般的な夏山のテント泊縦走が目的なら、同じ価格帯でもっと素直な選択肢があります。岩稜やアルパインルート、雪稜を含む山行を視野に入れている人向けの1本です。
40L台でテント泊はできるのか
関連検索に「テント泊 ザック 45L」といったクエリが現れ、登山系Q&Aサイトには「40Lでテント泊は無謀か」という質問が実際に立っています。ここに答えないまま「55L以上です」と言い切るのは不誠実なので、はっきり書いておきます。
ベテランが40Lでテント泊を運用している例はあります。ただしそれは、テント・シュラフ・マットのすべてを軽量かつ小さくたためるモデルに置き換えたうえでの話です。YAMA HACKも50L前後で収める運用について「高価で軽量なギアが必要」「初心者には難しい」と明記しています。容量を削るとは、装備の買い直しにお金をかけるという意味です。ザック代を1万円節約して、テントとシュラフに10万円追加する。それが40L台の実態です。
40L台を検討していい条件
- テント・シュラフ・マットをすでに軽量モデルで揃えている
- 総重量を10kg前後まで落とせる見込みが立っている
- 夏の1泊2日限定で、春秋や連泊に使う予定がない
3つとも当てはまらないなら、素直に55〜65Lを選ぶほうが結果的に安く、楽になります。
40L台をサブザックや小屋泊用として持っておく使い道はあります。その場合の選び方は40Lザックの使いどころと選び方にまとめました。テント泊本体を60Lにして、40Lを別用途で持つほうが、無理に1本で兼ねるより快適です。ザック全体のサイズ設計をゼロから考え直したい人は、登山用ザックの選び方の全体像を先に読むと判断が早くなります。
この容量帯が向かない人
55〜65Lのザックを勧めない条件もあります。当てはまる人は、この記事の10モデルを買わないほうがいいです。
- 山小屋泊がメインの人……テント・シュラフ・マットを持たないなら、30L前後で足ります。60Lを買っても中身がまとまらず、荷物が動いて歩きにくくなるだけです。
- テント泊が年1回あるかどうかの人……レンタルで済ませたほうが総額は安くなります。3年使って3回なら、1回あたり1万円以上のザックです。
- 背面長を測っていない人……サイズが合わないザックは、容量が正しくても快適になりません。買うのは測ったあとで十分です。
- 装備がまだ1点も揃っていない人……ザックの容量は中身が決まって初めて計算できます。山岳テントとシュラフを先に決めてからのほうが、無駄な容量を買わずに済みます。
- 総重量が20kgを超える計画の人……65Lでは容量も背面剛性も足りない可能性があります。70L級か、耐荷重を明記したモデルへ範囲を広げてください。
編集部の見立て:「大は小を兼ねる」はザックに関しては半分しか正しくありません。兼ねるのは容量だけで、重量と重心は兼ねてくれない。ここを混同したまま大きいほうを買うと、初回のテント泊がつらい記憶になります。
テント泊登山におすすめの荷物の詰め方

容量が正しくても、詰め方を外すと同じ重さが倍に感じられます。逆に言えば、詰め方の工夫で60Lを65L相当まで使い切ることもできます。以下の5点を順番どおりに実行してください。
1. 重い装備の配置
- 重い装備は背中に近い位置に収納する
- 重量物を背中側に配置すると重心が安定し、疲労を軽減できる
- クッカーやガスカートリッジ、食料など重たい装備は背中側のボトム部分へ
2. 頻繁に使う装備の配置
- 水筒やおやつ、雨具など頻繁に取り出す装備は手の届く外ポケットに収納する
- 行動中に使うものは、上部や側面のポケットへ分けておく
3. 水分補給用品の配置
- 水筒やペットボトルなどは手の届く位置に収納する
- 取り出しやすい場所に置くだけで、こまめな水分補給ができるようになる
4. 大型アイテムの配置
- 寝袋やテント、マットなどの大型アイテムはザックの底部に収納する
- 重心を低く保つことで安定性が高まる
- 行動中に取り出す必要がない装備こそ底部が適している
5. 収納の工夫
- 小物は圧縮袋やジップロックに入れて無駄なスペースを省く
- 形状の異なる装備は隙間に差し込み、空間を余らせない
この5項目は、家で一度やってみると効果がわかります。同じ荷物を「適当に詰めた状態」と「順番どおりに詰めた状態」で背負い比べると、体感の重さが変わります。出発の前夜ではなく、1週間前の休日にやっておくのがおすすめです。
よくある質問
Q. 初めてのテント泊なら何リットルを買えばいいですか
夏の1泊2日で自炊をする前提なら55〜60L、季節をまたいで使う予定があるなら60〜65Lです。「山小屋1泊の容量+30L」の式に自分の手持ちを当てはめると、より正確な数字が出ます。迷ったときは60Lを選んでおくと、あとから泊数が増えても対応できます。
Q. 50Lではテント泊はできませんか
できますが、条件が付きます。50Lは目安の下限にあたり、テントやシュラフを軽量・小型のモデルで揃えていることが前提です。装備をこれから買い揃える段階なら、50Lは狭すぎる可能性が高いと考えてください。
Q. 「60+20L」の+20Lは容量として数えていいですか
常用の容量としては数えないほうが安全です。拡張部分は上方向へ伸びる構造のため、満載にすると重心が高くなり、後ろに引かれる感覚が出ます。長期縦走の食料や、下山後に増える荷物のための保険と考えるのが実際的です。
Q. 女性や小柄な人はどう選べばいいですか
容量を下げるのではなく、背面長で選んでください。たとえばグラナイトギア クラウン3 60には背面長38〜46cmのショートサイズがあり、同じ60Lでも体格に合わせられます。容量を削ると装備が入らず、結局重い荷物を外付けすることになりがちです。サイズ展開か背面長調整機構があるモデルから探すのが近道です。
Q. 軽いザックほど良いのでしょうか
総重量次第です。装備を10kg前後まで絞り込めているなら、1,200g級の軽量モデルの恩恵が大きくなります。15kgを超えるなら、フレームのしっかりした2kg級のほうが腰で荷重を受けられるぶん楽です。ザック単体の軽さと、背負ったときの軽さは別の話だと考えてください。
Q. レインカバーは別途買う必要がありますか
モデルによります。グレゴリー スタウト70やオスプレー イーサープラス60のようにレインカバーが付属・標準装備のモデルもあれば、別売りのモデルもあります。別売りの場合は購入費と100〜200g程度の重量増を、最初から計算に入れておいてください。
まとめ|今日やることは、背面長を測ることだけ

容量の答えは出ました。夏の1泊2日・自炊ありで55〜65L、下限は50L、迷ったら60L。式は「山小屋1泊+30L」のひとつだけです。
ただ、今日この場で商品を決める必要はありません。今日やることは、背面長を測ること。ここが決まっていないと、どれだけ容量を検討しても最後に合わないザックを掴みます。メジャーが1本あれば5分で終わります。
- 背面長を測る(今日・5分)……首を前に倒して出っぱる骨から、腰骨の上端まで。数字をスマホにメモしておく。
- 早見表で容量を確定する(今週)……泊数と季節を決め、この記事の表から目安容量を1つに絞る。手持ちの日帰り用ザックの容量+30Lでも検算する。
- 候補2つに絞って店頭で背負う(今月)……比較表から容量と重量で2モデルまで絞り、実店舗で背面長を合わせてもらう。10kg前後の重りを入れて背負わせてもらえれば、判断はそこで付きます。
テントの設営から、夜の静けさに包まれる時間まで。ザックが体に合っていれば、その時間はもっと長く楽しめます。装備の全体像をもう一度確認しておきたい人は、30Lザックの選び方やブランド別の比較もあわせてどうぞ。
参考・出典
- グレゴリー公式「スタウト70」 https://www.gregory.jp/outdoor/type/backpacking/gr-149377-A266.html (2026年8月11日確認)
- グレゴリー公式「バルトロ65」 https://www.gregory.jp/gregory/float-a3/baltoro-65-rc-md/gr-142440-1129.html (2026年8月11日確認)
- ミレー公式「プロライター 60+20(MIS2270)」 https://www.millet.jp/c/hardware/backpacks/50l/MIS2270 (2026年8月11日確認)
- イワタニ・プリムス(deuter日本正規代理店)「エアコンタクトコア」 https://www.iwatani-primus.co.jp/products/deuter/items/D3350322/ / https://www.iwatani-primus.co.jp/products/deuter/lp/mountain-012/ (2026年8月11日確認)
- ゴールドウイン「THE NORTH FACE テラ65」 https://www.goldwin.co.jp/ap/item/i/m/NM62400 (2026年8月11日確認)
- ゴールドウイン「THE NORTH FACE コブラ65」 https://www.goldwin.co.jp/ap/item/i/m/NM62355 (2026年8月11日確認)
- グラナイトギア「クラウン3 60」 https://www.glagh.jp/view/item/000000008405 (2026年8月11日確認・背面長サイズ展開の出典)
- A&F「ミステリーランチ レイディックス57」 https://aandfstore.com/products/19761590 (2026年8月11日確認)
- YAMA HACK「テント泊におすすめの大型ザック」 https://yamahack.com/2511 (2026年8月11日確認・「山小屋1泊+30L」および55〜65L/50L下限、UL運用の注記の出典)
- ミレー サースフェー60+20、オスプレー イーサープラス60の数値は、公式ページへ到達できなかったため複数の販売店ページの記載値を採用(2026年8月11日確認)
