比良山系の登山口へはどう入るか|坊村行きバスは1日1往復・びわ湖バレイは下り最終17:00

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比良山系の登山口へのアクセスは、山そのものより先に決めておかないと行程が崩れます。理由は単純で、この山域では「バスで行って、バスで帰る」という組み立てが、現時点でほとんど成立しないからです。

坊村へ向かう唯一の路線バスは、土曜・休日を中心とした運行で、しかも1日1往復しかありません。さらに、その1往復の帰りの便は、行きの便が坊村に着いてから23分後に出発します。つまり登山の帰りには使えません。一方、比良駅からイン谷口へ向かっていた路線バスは、すでに運行を終了しています。ネット上に残っている記事の中には、この路線をまだ現役のものとして案内しているものがあります。

この記事では、坊村・イン谷口・びわ湖バレイという3つの入口について、2026年9月4日時点で公式サイトに掲載されている運行条件・時刻・料金だけを使って整理します。数字はすべて確認日を添え、確認先のページも本文中に書きます。時刻表と料金は改正されるものなので、出発前にご自身で公式サイトを開いてください。

先に結論めいたことを1つ書いておくと、比良山系のアクセスは道具では解決しない話です。ヘッドランプを増やしても、軽い靴に替えても、帰りのバスは増えません。これは装備の問題ではなく、時刻表と運行日をどう読むかという段取りの問題です

  • 坊村へ入る唯一のバス(江若交通・堅田葛川線)が土曜・休日中心の運行で、1日1往復しかないこと
  • その1往復の帰り便が坊村9:51発で、行きの坊村9:28着からわずか23分後に出てしまうこと
  • 京都バス10系統が2026年3月15日に廃止、比良登山線(130系統)が2025年2月18日に運行終了しており、これらを案内する記事は古いと判断できること
  • イン谷口には現在、路線バスが無く、徒歩・タクシー・自家用車が前提になること
  • びわ湖バレイのロープウェイは通常9:00〜17:00で、上り最終16:00・下り最終17:00から行程を逆算する必要があること
  • 登山用施設利用券(片道)が大人3,500円で、山麓駅での販売が14:30までという締切を持つこと
  • びわ湖バレイ公式が「登山道は管理外・道標は整備されていない」と明記していること
  • イン谷口・大津ワンゲル道側の駐車場は、収容台数も料金も公式の記載が見つからないこと

比良山系の登山口は3つ——山より先に「入口」を決める

比良山系は滋賀県大津市の西側に連なる山域です。登山口として名前が挙がるのは、大きく分けて次の3か所になります。西側の葛川地区にある坊村、東側の比良駅方面から入るイン谷口、そしてロープウェイで一気に高度を上げるびわ湖バレイです。

この3つは、地図の上では同じ山域の入口として並んで見えます。ところが交通の事情は、それぞれまったく別物です。同じ山域だから同じように行ける、という前提で計画を立てると、現地で足が止まります。

編集部の見立て:比良山系の記事を読むときに最初に確認してほしいのは、標高でもコースタイムでもなく「その記事が書かれた日付」です。この山域は、ここ2年で公共交通の選択肢が減っています。地形は変わりませんが、バスは無くなります。古い記事の内容が間違っているのではなく、書かれた時点では正しかったものが、今は使えなくなっているという構図です。

3つの入口を、交通の性格だけで分けると次のようになります。坊村は「バスで行けるが、帰りには使えない」入口です。イン谷口は「バスが無い」入口です。びわ湖バレイは「バスではなくロープウェイで上がる、営業時間のある」入口です。

この記事の組み立て方:比良山系では、行き先の山を決めてから交通手段を探すと、後戻りが多くなります。順番を逆にして、まず自分が使える交通手段(土休日に動けるか/車があるか/タクシー代を出せるか)を確定させ、そこから入れる登山口を絞り、最後に山とコースを決める。比良では、交通手段が行き先を決めるという順番のほうが、計画が破綻しにくくなります

比良の登山口へ入る手段と締め切り。左に手段、右に時刻と条件を並べた対応表の図解。坊村行きバス(行き)=堅田駅8:50発→坊村9:28着。土休日のみ・1日1往復/坊村行きバス(帰り)=坊村9:51発→堅田駅10:27着。到着の23分後に出る/京都バス10系統=出町柳〜朽木学校前。2026年3月15日で廃止/比良登山線130系統=比良駅〜イン谷口。2025年2月18日で運行終了/びわ湖バレイ=ロープウェイは上り最終16:00/下り最終17:00。図の下部に「江若交通・京都バス・びわ湖バレイの公表値(2026年9月4日確認)」と注記。
比良の登山口へ入る手段と締め切り。左に手段、右に時刻と条件を並べた対応表の図解。坊村行きバス(行き)=堅田駅8:50発→坊村9:28着。土休日のみ・1日1往復/坊村行きバス(帰り)=坊村9:51発→堅田駅10:27着。到着の23分後に出る/京都バス10系統=出町柳〜朽木学校前。2026年3月15日で廃止/比良登山線130系統=比良駅〜イン谷口。2025年2月18日で運行終了/びわ湖バレイ=ロープウェイは上り最終16:00/下り最終17:00。図の下部に「江若交通・京都バス・びわ湖バレイの公表値(2026年9月4日確認)」と注記。

坊村から登る代表的な行き先は武奈ヶ岳です。ルートの中身、標高差、コースの分岐といった山側の話は交通とは別の記事になるので、そちらは坊村から武奈ヶ岳へ登るルートの解説記事で確認してください。この記事は、そこへ「どうやって着くか」と「どうやって帰るか」だけを扱います。

3つの入口を1日でつなぐ、たとえば「坊村から入ってびわ湖バレイに下りる」といった縦断的な計画は、交通の面では難易度が跳ね上がります。入口と出口で交通手段が別になり、それぞれに別の締切(バスの発車時刻とロープウェイの下り最終)が付くためです。初めて比良に入る場合は、入口と出口を同じ場所にする往復型から始めるほうが、時間の見積もりが1本で済みます。

もう1つ、比良山系を軽く見ないための材料を先に置いておきます。大津市の案内によれば、比良山系での遭難は2026年1〜6月に9件、2025年4〜12月に17件発生しています(2026年9月4日確認時点)。琵琶湖のすぐ西という位置関係から、街に近い山として扱われがちですが、件数としては無視できない規模です。

遭難件数の集計期間が「2026年1〜6月」と「2025年4〜12月」で揃っていない点には注意してください。単純に比較して増えた・減ったと読むには期間が合っていません。ここでは「毎年、二桁に届く規模で起きている山域である」という程度の読み方にとどめるのが妥当です。

坊村への唯一のバス「堅田葛川線」——運行日が季節と曜日で限られる

坊村へ公共交通で入る場合、2026年9月4日時点で使える路線は江若交通の「堅田葛川線」です。区間は堅田駅から平・坊村を経て細川までで、坊村はその途中の停留所にあたります(江若交通の路線案内ページ・2026年9月4日確認時点)。

この路線でまず押さえるべきは、時刻ではなく運行日の条件です。公式サイトに掲載されている時刻表(2024年3月16日改正版・2026年9月4日時点で現行として掲載)には、「春分の日」から12月第一日曜日までの間は土曜・休日のみの運行であること、そして8月14日から8月16日までのお盆運行期間は運行することが記載されています。

編集部の判断:この「土曜・休日のみ」という条件は、時刻表の欄外や注記に書かれているタイプの情報で、時刻の数字だけを拾っていくと簡単に読み飛ばせます。平日に休みを取って登る人ほど、この一行を見落としたときの被害が大きくなります。時刻表を見るときは、数字より先に運行日の条件を読む順番にしたほうが安全だと考えています。

確認する項目 堅田葛川線の記載内容 計画への影響
路線名・区間 江若交通 堅田葛川線/堅田駅〜平〜坊村〜細川 坊村は終点ではなく途中停留所。細川まで乗り過ごさない
運行日の条件 「春分の日」〜12月第一日曜日は土曜・休日のみ運行。8/14〜8/16のお盆運行期間は運行 平日に登る計画では、この期間はバスが使えない前提で組む
時刻表の版 2024年3月16日改正版(2026年9月4日時点で公式サイトに現行掲載) 改正から時間が経っている。乗車前に必ず公式サイトで再確認する
運賃 本記事では未確認 金額は江若交通の運賃表(公式サイト)で確認する

運賃について、この記事では金額を書きません。運賃表のPDFを確認できていないためです。分からないものを推測で埋めると、現地で財布の中身が足りないという形で読者に跳ね返ります。乗車前に江若交通の公式サイトにある運賃表を開いて、堅田駅から坊村までの金額を確認してください。

「春分の日から12月第一日曜日まで」という期間の外側、つまり冬季にあたる期間の運行条件は、この記事では確認できていません。12月中旬から春分の日の前までに坊村へ行く計画がある場合は、時刻表の記載を自分の目で確認してください。「たぶん同じだろう」で組むと、バス停で立ち尽くすことになります。

時刻表の版が2024年3月16日改正であるという点も、そのまま受け取るのではなく前提として扱ってください。2026年9月4日の時点で公式サイトから現行の時刻表としてたどり着ける状態にはなっていますが、改正から日数が経っていることは事実です。この記事に書かれた時刻は「その日に公式サイトに載っていた値」であって、あなたが乗る日の値ではありません

バス路線の時刻表は、改正日がページやPDFの隅に必ず書かれています。検索で見つけた個人の記事に時刻が書いてあったとしても、その記事が何年何月の改正版を写したものかは分かりません。時刻を計画に組み込む段階では、必ず事業者の公式ページに戻って改正日を確認する習慣にしてください。この確認作業は3分ほどで終わります。

坊村行きバスは1日1往復。帰りの便は到着の23分後に出てしまう

ここがこの記事の核心です。堅田葛川線の土休日ダイヤ(系統51)で、坊村に関わる便は行き・帰りとも1日1本ずつしかありません。数字を並べます。

方向 時刻(土休日ダイヤ・系統51) 読み取り方
行き 堅田駅 8:50発 → 坊村 9:28着(→ 細川 9:35着) 坊村に立てるのは9:28。これより早く登山を始める手段は公共交通では無い
帰り 坊村 9:51発 → 堅田駅 10:27着(細川 9:43発) 登山の帰り便としては成立しない。9:28に着いて9:51に乗る人は登っていない

坊村9:28着、坊村9:51発。この2つの数字の間は23分です。行きのバスで坊村に降り立ってから、帰りのバスが出るまでに23分しかありません。つまり堅田葛川線は「行きのバス」としては使えますが、「帰りのバス」としては使えない路線です

編集部の見立て:この23分という数字は、検索上位のどの記事にも書かれていませんでした。時刻表そのものには当然載っているのですが、「1日1往復」という表現で止まっている案内が多く、その1往復が同じ朝の時間帯に固まっているという事実まで踏み込んだものが見当たりません。ここを知らずに「バスがあるから大丈夫」と考えると、下山後に堅田駅まで帰る手段が無いことに、山の中で気づくことになります。

この構造は、路線の役割を考えると理解しやすくなります。堅田葛川線は登山者のために走っている路線ではなく、葛川地区の生活路線です。朝に集落から堅田方面へ出て、堅田方面から集落へ入る。その運行パターンに、たまたま登山口が含まれているという関係です。登山者の行動時間に合わせたダイヤにはなっていません。

「1日1往復」という言葉を、「朝に行って夕方に帰れる1往復」と読み替えないでください。この路線の1往復は、行きも帰りも午前中に完結します。下山後に坊村のバス停で待っていても、その日の便はもう来ません。日没後に坊村で交通手段が無いと分かった場合、周囲に代替の公共交通はありません。

では、坊村から登った人はどうやって帰っているのか。現実的な選択肢は3つに絞られます。1つは自家用車で坊村まで入り、下山後に自分の車で帰る方法。2つ目は、下山後にタクシーを呼んで最寄り駅まで出る方法。3つ目は、登山口までの往復を車で行くのではなく、行きだけバスを使い、帰りは別の下山口へ抜けてそこから公共交通を使う方法です。

3つ目の「行きだけバス、帰りは別ルート」を選ぶ場合、下山側の交通手段も同じ精度で調べておく必要があります。片道だけ調べて出発すると、下山口で同じ問題を繰り返すことになります。車を持たない場合の登山口アクセスの考え方は、車なしで登山口に入るための手段を整理した記事にまとめてあります。比良に限らず使える組み立て方です。

坊村の交通の結論:坊村は「行きは公共交通で入れるが、帰りは自分で用意しなければならない」登山口です。したがって坊村を選ぶ時点で、下山後の帰り方を先に確定させておく必要があります。帰り方が決まっていない状態で坊村行きのバスに乗るのは、片道切符だけ買って旅に出るのと同じことです

「1日1往復」で行程を組み直す——出発・折り返し・下山の3つの時刻

坊村行きバスが1日1往復であるという条件は、行程の中身にも影響します。抽象的に「早く出発する」と言っても計画にはならないので、3つの時刻に分けて具体化します。

1つ目は出発時刻です。公共交通で坊村に入る場合、登山開始時刻は坊村9:28着から動かせません。バス停に降りて支度を整える時間を考えれば、実際に歩き出すのは9:30台後半になります。自家用車であればこれより早く出発できますが、公共交通に限れば9:28が上限ではなく下限、つまり「これより早くは始められない」線になります。

編集部の判断:登山口に立てるのが9:30前後というのは、日帰りの山としては決して早い出発ではありません。夏至の前後なら余裕がありますが、秋が深まって日没が早くなる時期には、この出発時刻がそのまま行程の上限を決めます。坊村を公共交通で使うのなら、9:30スタートで成立するコースかどうかを、最初に自分の使う地図のコースタイムで検算してほしいと考えています。

2つ目は折り返し時刻です。往復型の行程では、「ここまでに山頂に着いていなければ引き返す」という時刻を、出発前に紙かスマートフォンに書いておく必要があります。この時刻は山の高さではなく、下山後に交通手段が確保できる時刻から逆算して決まります。

3つ目は下山時刻です。坊村では帰りのバスが無いので、下山時刻を縛るのはバスではありません。代わりに縛るのは、日没の時刻と、タクシーを呼べる時間帯です。この2つのうち、早いほうが実質的な締切になります。

3つの時刻 公共交通(坊村) 自家用車(坊村) びわ湖バレイ
出発時刻 9:28着から。実際の歩き出しは9:30台 自分で決められる。夜明けに合わせた出発が可能 ロープウェイ営業開始(通常9:00)以降
折り返し時刻 下山後の交通確保時刻から逆算 日没時刻から逆算 下り最終17:00から逆算
下山時刻の締切 日没、またはタクシーを呼べる時間帯の早いほう 日没(駐車地に戻れば移動手段はある) 下り最終17:00(乗り遅れると歩いて下りることになる)

この表で注目してほしいのは、締切の性質が入口ごとに違うことです。びわ湖バレイの17:00は、施設が閉まるという明確な線です。坊村の締切は日没という連続的なもので、線が引かれているわけではありません。はっきりした締切がある入口のほうが、行程管理はむしろ簡単になります

「日没まで歩けば良い」という考え方は、比良のように交通が細い山域では危険です。日没時刻に登山口へ戻れたとしても、そこから駅まで移動する手段が無ければ、下山は終わっていません。登山の終わりは山を下りた瞬間ではなく、公共交通か自分の車に乗り込んだ瞬間だと定義し直してください。

この定義に切り替えると、持ち物の側にも1つ影響が出ます。下山してから車やタクシーに乗り込むまでの時間は、歩いていない時間です。坊村のように屋内の待機場所が用意されていない登山口では、この「動かずに待つ時間」に体温が落ちます。行動中に汗をかいた状態のまま日没を迎えると、気温の数字ほどには耐えられません。

下山後にタクシーの配車を待つ計画や、同行者の下山を待つ計画がある人は、行動着とは別に、止まったときに羽織る上着を1枚ザックに入れておいてください。化繊の中綿なら、濡れたザックの中に押し込んでいても機能が落ちにくく、たたんだときの体積も小さく収まります。

  1. 下山後に確実に使える移動手段を1つ決め、その手段が使える最終時刻を書き出す(自分の車なら日没、タクシーなら配車を頼める時間帯、ロープウェイなら17:00)
  2. その最終時刻から、登山口まで戻るのに必要な下りのコースタイムを引き、さらに30分から1時間の余裕を引く。残った時刻が「折り返し時刻」になる
  3. 出発時刻(公共交通なら9:30台)から折り返し時刻までの持ち時間を計算し、その中に往路のコースタイムが収まるか確認する。収まらなければ、行き先を短いコースに変えるか、車での入山に切り替える

この手順の2つ目に出てくる「日没から逆算する」考え方は、比良に限らず秋以降の登山全般で必要になります。日没時刻そのものの調べ方と、余裕をどれだけ取るべきかの目安は、日没時刻から下山計画を逆算する手順の記事で詳しく扱っています。最終便からの逆算と発想は同じで、締切が「施設の営業時間」か「空の明るさ」かという違いだけです。

廃止・運行終了した2路線と、古い情報を見分ける手順

比良山系のアクセスを調べていると、現在は使えない2つの路線の情報に必ず出会います。どちらも、かつては実際に使えたものです。順に整理します。

1つ目は、京都バスの10系統(出町柳駅前〜朽木学校前)です。この路線は2026年3月15日(日)をもって廃止されています(京都バス公式の告知・2026年9月4日確認時点)。京都側から葛川方面へ入る手段として案内されていた路線で、以前は春から秋の土休日に運行していました。

2つ目は、江若交通の比良登山線(130系統)です。比良駅と比良イン谷口を結んでいた路線で、2025年2月18日付で運行終了が告知されています(江若交通公式のお知らせ・2026年9月4日確認時点)。この路線が無くなったことで、イン谷口への公共交通は現在ありません。

編集部の見立て:この2つの廃止・運行終了は、比良山系の登り方そのものを変えるレベルの変化だと考えています。それにもかかわらず、検索で上位に出てくる記事の多くは、この2件を起点に案内を組み直していません。悪意があるわけではなく、書かれた時点では正しかった記事が、そのまま残っているだけです。読む側が日付で判断するしかないのが実情です。

路線 区間 現在の状態 代わりに見るもの
京都バス 10系統 出町柳駅前〜朽木学校前 2026年3月15日(日)で廃止 坊村へは江若交通・堅田葛川線
江若交通 比良登山線(130系統) 比良駅〜比良イン谷口 2025年2月18日付で運行終了 徒歩・タクシー・自家用車
江若交通 堅田葛川線(系統51) 堅田駅〜平〜坊村〜細川 運行中(土曜・休日中心/1日1往復) 公式時刻表の改正日を毎回確認

ここからが実用的な部分です。ある記事の交通情報が古いかどうかを、読者の側で判定する手順を作っておくと、比良以外の山でも使えます。難しいことはしません。3つ見るだけです。

  1. 記事に書かれた時刻表の「改正日」を探す。改正日が書かれていない記事の時刻は、そのまま信用しない。改正日が2年以上前なら、必ず事業者の公式ページで現行版を確認する
  2. 事業者名と路線名で公式サイトを開く。「京都バス」「江若交通」のように事業者名を先に検索し、その公式サイトの中の路線案内・お知らせ欄を見る。個人の記事の中の時刻ではなく、事業者のページの時刻を採用する
  3. 系統番号(10系統、130系統、系統51など)で検索し直す。系統番号は廃止・運行終了の告知に必ず含まれるので、「130系統 運行終了」のような検索で、廃止告知に直接たどり着ける

路線名だけで検索すると、廃止告知にたどり着けないことがあります。告知は「◯◯線(◯◯系統)運行終了のお知らせ」という形式で出ることが多く、系統番号が入っています。逆に、まとめ記事や乗換案内アプリのキャッシュには、廃止後もしばらく古い路線情報が残ることがあります。アプリで検索結果が出たからといって、その路線が走っているとは限りません。

もう1つ、判定の材料になるのが「その記事が何を書いていないか」です。比良山系のアクセス記事で、坊村行きバスが1日1往復であることに触れていない記事は、時刻表の実物を見ずに書かれた可能性があります。書かれている情報の正しさより、書かれていない情報のほうが記事の質を教えてくれることがあります

この記事に書いた時刻・料金も、まったく同じ扱いをしてください。すべて2026年9月4日に公式サイトで確認した値です。あなたが読んでいる時点では改正されている可能性があります。江若交通・京都バス・びわ湖バレイの各公式サイトを、出発の1週間前と前日の2回開くことをおすすめします。1週間前は計画の修正のため、前日は当日の運休や臨時ダイヤの確認のためです。

イン谷口へ——路線バスは無く、駐車場の公式情報も見つからない

イン谷口は、琵琶湖側の比良駅方面から入る登山口です。アクセス道路には滋賀県道322号(比良山線)の区間が含まれ、大津市北比良地区にあたります(滋賀県の県道関係の例規・2026年9月4日確認時点)。

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この登山口の最大の問題は、前の節で書いたとおり、比良駅からの路線バス(比良登山線・130系統)が2025年2月18日付で運行を終了していることです。したがって、2026年9月4日時点でイン谷口へ入る手段は、徒歩・タクシー・自家用車の3つになります。

編集部の判断:イン谷口は「駅から近い登山口」として紹介されてきた入口です。駅からバスが出ていたときは、確かにその通りでした。バスが無くなった今、同じ紹介文をそのまま使うと、読者は比良駅で立ち往生します。この登山口については、案内の前提そのものを書き換える必要があると考えています。

徒歩を選ぶ場合、比良駅からイン谷口まで自分の足で歩くことになります。この区間の所要時間について、公式に示された値をこの記事では確認できていません。したがって具体的な分数は書きません。地図アプリで距離と標高差を確認し、その分を登山の行動時間に加算して計画してください。登山口までのアプローチも、体力の消費という点では登山の一部です

下山後に比良駅まで歩いて戻ることを前提にする場合、その歩行時間を「下山後の疲れた状態での時間」として見積もってください。往路と復路で同じ時間はかかりません。さらに、日没後にこの区間を歩く可能性があるなら、ヘッドランプは登山道用ではなく、車道を歩くための装備として必要になります。

ここは、スマートフォンのライトで代用しようとして失敗しやすいところです。車道の路肩を歩くときは、足元を照らすことより、対向車から自分が見えていることのほうが重要になります。手に持つ光では、荷物を背負い直すたびに照射が外れます。比良駅からイン谷口までを自分の足で往復するつもりの人は、登山道を歩くかどうかにかかわらず1つ持ってください。山用のものは頭に固定できるので、地図を開くときも両手が空きます。

タクシーを使う場合、比良駅からイン谷口までの区間は、複数人で割れば現実的な選択肢になります。特に、バスが1本も無い区間や1日1往復しかない区間では、タクシーの費用対効果が変わってきます。単独では割高でも、3人や4人で乗れば、時間を買う手段として成立する場面があります。

登山口までの短い区間をタクシーや乗合で埋める発想は、比良に限らずバス路線が減っている山域全般で有効です。登山で乗合タクシーを使う場合の段取りをまとめた記事に、事前予約が必要なケースと当日でも捕まえられるケースの見分け方を書いています。堅田駅〜坊村、比良駅〜イン谷口のどちらにも当てはまる考え方です。

イン谷口の駐車場について、書けないこと

ここは正直に書きます。イン谷口の駐車場、および大津ワンゲル道側の駐車場について、収容台数と料金を示した公式の記載を、この記事の調査では見つけられませんでした。自治体・公的機関・交通事業者のいずれのページでも確認できていません。

したがって、この記事には台数も料金も書きません。個人の記事やSNSには具体的な台数が書かれていることがありますが、それらの出所を確認できていない以上、ここで引用すると誤った数字を広げることになります。

情報が無いときの計画の立て方:収容台数が分からない駐車場を使う場合、「満車である前提」で計画を組みます。具体的には、到着時刻を早める、満車だった場合に停める別の場所を先に決めておく、公共交通に切り替える判断基準を決めておく、の3点です。台数が分からないことは、計画を立てられない理由にはなりません。分からないなら、外れても行程が壊れない組み方をするだけです

  • イン谷口方面に車で入る場合、満車だったときに引き返す先を、出発前に地図上で決めてあるか
  • その引き返し先から登山口まで歩く時間を、行動時間に加算してあるか
  • 駐車場所が林道や生活道路の路肩にならないよう、停めてよい場所かどうかを現地で判断する基準を持っているか
  • 同行者がいる場合、満車だったときにどうするかを、出発前に共有してあるか

登山口周辺の駐車スペースが公式に管理されていない場合、路肩に停める判断は自分で下すことになります。生活道路や農作業用の通路をふさぐと、地元の方の日常に直接影響します。「他の車も停まっているから」は根拠になりません。緊急車両が通れる幅が残っているかを基準にしてください。

びわ湖バレイ——ロープウェイの最終便・登山用片道券・駐車場料金

3つ目の入口、びわ湖バレイは、ロープウェイで高度を稼げるという点で、他の2つとまったく性格が違います。同時に、営業時間という明確な締切を持つ入口でもあります。

2026年のグリーンシーズンの運行期間は、2026年4月24日から2026年11月23日までです(びわ湖バレイ公式・2026年9月4日確認時点)。この期間外は、グリーンシーズンとしてのロープウェイ利用ができません。

編集部の見立て:ロープウェイのある山は「楽に登れる山」として紹介されがちですが、実際にはロープウェイのある山ほど時間の制約が厳しくなります。自分の足なら日没まで動けますが、ロープウェイは17:00に止まります。楽になる代わりに、締切が前倒しになる。この交換条件を理解しないままロープウェイを選ぶと、山頂で時計を見て青くなります。

項目 2026年9月4日確認時点の値 計画上の意味
グリーンシーズン運行期間 2026年4月24日〜2026年11月23日 この期間外の計画には使えない
通常営業時間 9:00〜17:00 登山開始は9:00以降になる
上り最終 16:00 登り始めの締切。これを過ぎたら上がれない
下り最終 17:00 行程全体を縛る締切。乗り遅れたら歩いて下りる
期間による変更 8月8日〜16日は9:00〜18:00、11月は9:30〜16:30 11月は営業時間が短くなる。紅葉期は特に注意
ロープウェイ乗車時間 約5分 移動そのものは短い。待ち時間のほうが読めない

この表で最も重要なのは、11月の営業時間が9:30〜16:30に変わるという1行です。紅葉を目当てに11月に訪れる人は多いはずですが、その時期こそ営業時間が短くなっています。通常の17:00で計画を立てて11月に行くと、30分ぶんの計算違いが生じます。

11月の下り最終時刻については、営業時間が16:30に変わることを踏まえて、必ず公式サイトで当該日の最終便を確認してください。この記事では「11月は9:30〜16:30に変更」という公式の記載までを事実として書いており、その月の下り最終が何時何分になるかまでは確認できていません。30分の差は、下山中の30分としてはかなり大きい差です。

登山用施設利用券(ロープウェイ片道)の価格と、14:30という締切

びわ湖バレイには、登山用の施設利用券としてロープウェイの片道券が用意されています。価格は大人3,500円、小学生1,500円、幼児700円です(2026年9月4日確認時点)。

購入場所は、山麓駅・山頂駅・ホーライリフト山頂・打見リフトの4か所です。このうち山麓駅での販売には「〜14:30・通年」という条件が付いています。つまり、山麓駅の窓口でこの券を買うつもりなら、14:30までに山麓駅に着いている必要があります。

編集部の判断:この14:30という数字は、上り最終16:00の陰に隠れて見落とされやすい締切です。「16:00までに着けばいい」と思って14:45に山麓駅へ着いた場合、登山用の片道券は山麓駅では買えないことになります。営業時間・最終便・券の販売締切という3つの時刻が別々に存在していることを、先に頭に入れておいてください。

登山用施設利用券 内容 注意点
券種 ロープウェイ片道 往復券ではない。もう片方の移動は自分で組む
価格 大人3,500円/小学生1,500円/幼児700円 2026年9月4日確認時点。変更の可能性がある
購入場所 山麓駅・山頂駅・ホーライリフト山頂・打見リフト 買える場所が4か所に分かれている
山麓駅の販売締切 14:30まで(通年) 上り最終16:00とは別の締切。混同しない

片道券という形式である以上、行程のどちらか片方は自分の足で歩くことになります。上りをロープウェイにするのか、下りをロープウェイにするのか。この選択によって、締切の意味が変わります。上りに使うなら気にするのは上り最終16:00と山麓駅の販売締切、下りに使うなら下り最終17:00です。

券の販売場所が山麓・山頂・リフト山頂と分かれているということは、上り方向にも下り方向にも対応できる建て付けになっていると読めます。ただし、どの窓口でどちら向きの券が買えるかについて、公式ページの記載以上のことはこの記事では確認できていません。片道券をどちら向きで使うつもりかを決めたうえで、購入前にその窓口で確認してください。

「登山道は管理外」という公式の明記

びわ湖バレイの公式サイトには、登山道について明確な注意書きがあります。「登山道はびわ湖バレイの管理外です 管理者がいないため登山道や道標は整備されていません」という記載です(2026年9月4日確認時点)。

この一文は、施設としての立場をはっきり示しています。ロープウェイは登山口への移動手段として機能しますが、そこから先の登山道の整備・管理は施設が担っていません。つまり、ロープウェイで上がったあとは、道標が整っていない山域を自力で歩くことになります。

びわ湖バレイの二重構造:観光施設としてのロープウェイと、その先に広がる管理外の登山道は、別のものとして扱う必要があります。登山用の片道券が用意されている以上、施設側も登山者の存在を想定してはいます。一方で「登山者向け施設です」という明言は無く、むしろ登山道は管理していないと書かれています。移動手段としては使えるが、登山道の面倒は見てもらえない。この二重構造を理解して使う施設です

「ロープウェイがある=整備された観光登山道がある」と考えないでください。道標が整備されていないと公式が明記している以上、地図とコンパス、あるいはGPSアプリでの現在地確認は必須です。ロープウェイの快適さと、その先の道の状態は無関係です。

紅葉の時期にロープウェイのある山を選ぶ場合、営業時間の変更と混雑による待ち時間の両方が計画に効いてきます。他の索道施設との比較や、紅葉期に選ぶときの見方は紅葉期にロープウェイを使う登山の比較記事にまとめてあります。びわ湖バレイの11月の営業時間短縮も、その文脈で読むと位置づけが分かりやすくなります。

びわ湖バレイの駐車場料金

びわ湖バレイの駐車場は、乗用車の場合、平日1,000円、土日祝・特定日2,000円です(2026年9月4日確認時点)。支払いは現金のみで、利用は営業時間内に限られます。

ここで見落としやすいのが「特定日」の存在です。2026年の特定日は、5月2日〜5日、8月8日〜16日、9月20日〜22日と示されています。これらの日は、曜日が平日であっても土日祝と同じ2,000円が適用されます。

編集部の見立て:駐車料金が現金のみ、という条件は、キャッシュレス前提で出かける人ほど引っかかります。金額そのものは大きくありませんが、現金を持っていないと駐車できないという性質の問題です。比良に限らず、山の駐車場は現金のみという場所がまだ多く残っています。財布に千円札を数枚入れておく、という古典的な備えが、いまだに一番確実です。

駐車場 料金・条件 確認できている範囲
びわ湖バレイ(乗用車) 平日1,000円/土日祝・特定日2,000円。現金のみ、営業時間内のみ 公式サイトに明記(2026年9月4日確認時点)
2026年の特定日 5/2〜5、8/8〜16、9/20〜22 公式サイトに明記(2026年9月4日確認時点)
イン谷口 不明 収容台数・料金とも公式の記載が見つからない
大津ワンゲル道側 不明 収容台数・料金とも公式の記載が見つからない

登山口に立ってから先の準備——比良で効いてくる3つの基準

ここまでは、登山口に着くまでと帰るまでの話でした。ここから先は、入口を通り抜けたあとの話です。交通の段取りが決まっても、比良の道そのものが楽になるわけではありません。びわ湖バレイ公式が「登山道や道標は整備されていません」と明記していることは、そのまま歩く側の条件になります。

比良の場合、条件は3つに整理できます。ひとつ目は、道標が整っていない区間があるので、現在地を自分で確認しながら歩く必要があること。ふたつ目は、琵琶湖側から吹き上げる風の影響を受ける山域で、稜線に出てからの体感が麓と揃わないこと。3つ目は、締切のある行程になりやすいぶん、下りで時間を落とさないことが安全に直結することです。

この3つを、そのまま選ぶ基準にします。足元は「下りで時間を落とさないか」背負うものは「稜線用の1枚を入れる余地があるか」電源と雨具は「途中で切れないか」。順に見ていきます。

まず足元です。比良は登山口の標高が低く、どの入口から入っても下りが長く続きます。登山の回数がまだ少なく、最初の一足を選ぶ段階なら、足首まで覆うミッドカットで、幅の設定があるものから見ていくのが無難です。幅の合わない靴は、長い下りの後半で親指の先が当たり、そこから歩幅が乱れます。

すでに何度か歩いていて、雨上がりの日や落ち葉の積もった時期にも入るつもりなら、防水仕様のミッドカットに寄せておくほうが読みが立ちます。比良の下りは濡れた岩と木の根が続く区間があり、ソールが効くかどうかがそのまま折り返し時刻の守りやすさになります。

次に背負うものです。容量は、稜線用の防寒着と雨具を「使わないかもしれないが入れておく」前提で決めます。23Lは、日帰りで往復する人が水・防寒着・雨具・行動食を入れてちょうど収まる大きさで、比良の一日行程ならこの前後が目安です。背中に空間を作る背面構造なので、登り返しの多い行程で蒸れにくくなります。

坊村から入って別の下山口へ抜けるような、行程が長くなる組み方をするなら、30L前後まで上げておくと出し入れで手間取りません。同行者のぶんの防寒着や水まで持つ役回りになりがちな人も、この容量から選ぶほうが当日に詰め直さずに済みます。容量が足りずに外付けを増やすと、笹や枝の多い区間で引っかかります。

雨具は上下セットが前提です。登山道では傘の使えない区間が長く、風の当たる稜線では傘そのものが危険になります。この上下セットは耐水圧約30,000mm以上と表記のあるモデルで、年に数回の山行のために1着だけ用意しておきたいという段階に向きます。これが無いと、降り出した時点で「引き返すか進むか」を濡れながら考えることになり、締切のある行程では判断が雑になります。

最後が電源です。道標が整っていない区間を歩く以上、現在地の確認はスマートフォンの地図アプリに頼ることになります。ところが地図アプリは、画面を点けている時間だけ電池を削ります。ロープウェイの最終便から逆算した行程を組む人にとって、下山中に電池が切れることは、地図と時計と連絡手段を同時に失うことと同じです。ザックの中で邪魔にならない大きさのものを1つ、行動食と同じ扱いで入れておいてください。

最終便から下山開始時刻を逆算する

ここまでに出てきた締切を、逆算の形にまとめます。使う数字は、この記事で確認済みの値だけです。コースタイムは山とルートによって変わるので、そこは読者自身の地図の値を当てはめてください。

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びわ湖バレイの場合、締切は下り最終17:00です。ロープウェイの乗車時間は約5分ですが、逆算で見るべきは乗車時間ではなく、山頂駅に何時までに戻っているかです。混雑や乗車待ちを考えれば、17:00ちょうどに山頂駅へ駆け込む計画は成立しません。

びわ湖バレイの逆算式:下り最終17:00 − 待ち時間と手続きの余裕30分 = 16:30までに山頂駅に戻る。この16:30から、折り返し地点までの往復に必要なコースタイムを引いた時刻が、行程の折り返し時刻になります。17:00は「山頂駅に着いていい時刻」ではなく「もう出発してしまう時刻」です

上りにロープウェイを使う場合は、逆算の起点がもう1つ増えます。山麓駅での登山用片道券の販売が14:30までなので、券を山麓駅で買う計画なら、14:30が実質の到着締切です。上り最終16:00より1時間30分も早い時刻が、先に効いてきます。

編集部の判断:締切が複数あるときは、必ず「一番早いもの」を自分の締切として扱ってください。上り最終16:00と券の販売14:30が並んでいるとき、意識に残るのは16:00のほうです。しかし実際に行動を縛るのは14:30です。時刻表を読むときは、数字を並べて最小値を選ぶ、という機械的な作業をおすすめします。

坊村の場合、逆算の起点はバスではありません。帰りのバスが午前中に出てしまう以上、下山時刻を縛るのは日没と、下山後に確保した移動手段です。自家用車で入っているなら日没、タクシーを呼ぶ計画なら配車を依頼できる時間帯が起点になります。

入口 逆算の起点 引く余裕 残るのは
びわ湖バレイ(下山に使う) 下り最終17:00 待ち時間・手続きで30分 16:30に山頂駅到着が目標
びわ湖バレイ(上りに使う) 山麓駅の券販売14:30/上り最終16:00 早いほうを採用 14:30が実質の到着締切
坊村(車で入る) 日没時刻 1時間以上 日没1時間前には登山口に戻る
坊村(バスで入る) 下山後の移動手段が使える最終時刻 1時間以上 その時刻から往復コースタイムを引く

逆算した折り返し時刻は、守れなかったときに意味を持ちます。「その時刻に山頂に着いていなければ、着いていなくても引き返す」というルールにしてください。あと20分で山頂だから、という判断が、締切のある行程では最も危険です。上りの20分は、下りでは取り戻せません。

その「下りでは取り戻せない」という部分だけは、道具で多少埋められます。比良は登山口の標高が低いぶん帰りの下りが長く、脚が残っているかどうかで最後の1時間の速度が変わります。下りだけ極端に遅くなる自覚がある人や、膝に不安があって同行者を待たせがちな人は、ポールで荷重を左右に分けると、下りの所要時間そのものが読みやすくなります。折り返し時刻を守れるかどうかは、上りの脚より下りの脚で決まります。

  • 折り返し時刻を、出発前に紙かスマートフォンのメモに文字として書き出したか
  • 複数ある締切のうち、一番早いものを自分の締切として採用したか
  • 下山後の移動手段が使える最終時刻を、具体的な時刻として把握しているか
  • 同行者全員が同じ折り返し時刻を共有しているか
  • 折り返し時刻を過ぎた場合に、どのルートで引き返すかを決めてあるか

車か公共交通か、平日か土休日か、積雪期か——条件で選べる登山口が変わる

ここまでの情報を、読者の条件別に組み直します。自分がどの条件に当てはまるかで、選べる登山口が変わります。

自家用車がある場合と、無い場合

自家用車がある場合、3つの入口すべてが選択肢になります。出発時刻を自分で決められること、下山後の移動手段が確定していること、この2点が決定的な差になります。特に坊村では、車があるかどうかで計画の自由度がまったく変わります。

公共交通のみの場合、選べるのは坊村(行きのみ)とびわ湖バレイの2つです。イン谷口は、比良駅から歩くかタクシーを使うかになるため、純粋な公共交通のみでは完結しません。

条件 坊村 イン谷口 びわ湖バレイ
自家用車あり 使える。出発時刻を自由に決められる 使える。ただし駐車場の公式情報が無い 使える。駐車料金は平日1,000円/土日祝・特定日2,000円
公共交通のみ・土休日 行きのみ可(堅田駅8:50発)。帰りは別手段 路線バス無し。徒歩かタクシー 可。営業時間内で完結する
公共交通のみ・平日 期間によりバス運行なし 路線バス無し。徒歩かタクシー 可。駐車料金以外の条件は同じ

編集部の見立て:この表を作って改めて感じたのは、比良山系で公共交通が素直に機能するのはびわ湖バレイだけだということです。ロープウェイという有料の索道が、事実上この山域の公共交通を代替している構図になっています。3,500円という片道券の価格を高いと見るか、確実な移動手段への対価と見るかは、その日に使える他の手段の数で変わってくると思います。

平日に行く場合の現実的な選択肢

平日に登る計画の場合、坊村行きバスは「春分の日」から12月第一日曜日までの期間、土曜・休日のみの運行という条件に引っかかります(8月14日〜16日のお盆運行期間を除く)。この期間の平日は、坊村への公共交通が無いものとして計画してください。

現実的な選択肢は3つあります。順に検討する価値があります。

  1. 自家用車で坊村まで入る。平日は駐車場所の競合が少なくなる可能性が高く、出発時刻も自由に決められる。車が使えるなら、平日の坊村はむしろ条件が良い
  2. 最寄り駅からタクシーを使う。単独では割高だが、複数人なら1人あたりの負担は下がる。帰りの配車が確保できるかを、往路の乗車時に運転手へ確認しておく
  3. 行き先をびわ湖バレイに変える。ロープウェイは平日も運行期間内なら動いており、駐車料金も平日は1,000円と安くなる。平日に公共交通で比良に入るなら、これが最も素直な選択になる

平日にどうしても坊村へ入りたい、という理由がとくに無いのであれば、行き先を変えるという選択肢を最初から候補に入れてください。交通の制約が厳しい入口に無理やり合わせると、行程全体に余裕が無くなります。山は逃げませんが、その日の帰りの手段は逃げます。

比良山系のアクセスで起きる失敗は、時刻表の読み違いと運行日の見落としがほとんどです。交通の部分は、道具を足しても解決しない、段取りだけの問題だからです。良いヘッドランプも軽いザックも、坊村の帰りのバスを増やしてはくれません。装備が効いてくるのはその先、登山口に立ってからの区間で、そこは前の節で見たとおり道標の整備されていない道が含まれます。交通の段取りと、登山口から先の準備は、別々に立てておいてください。

積雪期のアクセスで確認すること

積雪期については、この記事で断定できることが限られます。県道322号やイン谷口周辺の道路について、その日の積雪・凍結・通行止めの状況を事前に断定することはできません。出発前に、道路管理者が出す道路情報と通行止め情報を必ず確認してください。

びわ湖バレイについては、2026年のグリーンシーズンが4月24日から11月23日までであることが公式に示されています。この期間の外は、グリーンシーズンとしての運行ではないという点を押さえたうえで、公式サイトで冬季の運行内容を確認する必要があります。

堅田葛川線については、前述のとおり「春分の日」から12月第一日曜日までの運行日条件が記載されており、その期間外の扱いはこの記事では確認できていません。冬に坊村へ入る計画なら、時刻表の記載を自分の目で確認するところから始めてください。

積雪期の比良山系は、琵琶湖から吹き上げる風の影響を受ける山域として知られています。標高だけを見て「関西の山だから雪は少ない」と判断しないでください。大津市が比良山系の遭難について繰り返し注意喚起を出していること自体が、この山域の性格を示しています。

雪の残る時期に入る場合、足元から先に濡れる順番も変わります。踏み抜いた雪や溶けかけた雪は、靴の上から入ってきます。春先や初冬に、雪の残る道と土の道が混ざる時期に歩くつもりの人は、靴とパンツの隙間をふさぐスパッツを1つ持っておくと、靴の中が濡れて引き返す、という理由での撤退が減ります。防水透湿素材のものなら、雪のない時期の泥や落ち葉の道でもそのまま使えます。

冬季にアクセス道路が閉鎖される山域では、登山口まで到達できるかどうかが最初の関門になります。閉鎖情報の探し方、閉鎖期間の考え方、閉鎖ゲートから登山口までの徒歩区間の扱いについては、冬季閉鎖のある登山口へのアクセスを整理した記事を参照してください。比良の県道322号についても、同じ手順で当日の状況を確認することになります。

編集部の判断:積雪期の比良については、この記事では意図的に踏み込んでいません。道路状況が日単位で変わるものを記事に固定して書くと、その記事自体が事故の原因になり得るからです。書けるのは「確認先を示すこと」までで、値を書くことではないと考えています。

よくある質問

Q. 坊村行きのバスは、本当に1日1往復しかないのですか

2026年9月4日時点で公式サイトに掲載されている堅田葛川線の時刻表(2024年3月16日改正版)では、土休日ダイヤ(系統51)における坊村の発着は、行きが堅田駅8:50発・坊村9:28着、帰りが坊村9:51発・堅田駅10:27着の各1本です。この2本の間隔は23分で、登山の帰り便としては使えません。時刻表は改正される可能性があるので、乗車前に江若交通の公式サイトで最新の時刻を確認してください。

Q. 比良駅からイン谷口までのバスは、いつ無くなったのですか

江若交通の比良登山線(130系統)が、2025年2月18日付で運行終了を告知しています(2026年9月4日確認時点)。したがって現在、イン谷口へ入る手段は徒歩・タクシー・自家用車の3つです。検索で見つかる記事の中には、この路線をまだ運行中として案内しているものがありますが、それらは運行終了より前に書かれたものと考えられます。

Q. 京都側から比良山系へ入る方法はありますか

京都バスの10系統(出町柳駅前〜朽木学校前)は、2026年3月15日(日)をもって廃止されています(2026年9月4日確認時点)。以前は京都側から葛川方面へ入る手段として案内されていましたが、現在は使えません。坊村へは、江若交通の堅田葛川線を使うことになります。

Q. びわ湖バレイの登山用片道券は、どこで買えばよいですか

購入できるのは山麓駅・山頂駅・ホーライリフト山頂・打見リフトの4か所です。価格は大人3,500円・小学生1,500円・幼児700円です(2026年9月4日確認時点)。山麓駅での販売は14:30までという条件が付いているので、山麓駅で買うつもりなら14:30までに到着している必要があります。どの窓口でどちら向きの券が買えるかまでは、この記事では確認できていません。使う向きを決めたうえで、窓口で確認してください。

Q. イン谷口の駐車場は何台停められますか。料金はいくらですか

この記事の調査では、イン谷口および大津ワンゲル道側の駐車場について、収容台数・料金を示した公式の記載を見つけられませんでした。したがって数字は書きません。満車である可能性を前提に、早めの到着と、満車だった場合に引き返す先を出発前に決めておくことをおすすめします。

Q. びわ湖バレイのロープウェイに乗れば、整備された登山道を歩けますか

いいえ。びわ湖バレイの公式サイトには「登山道はびわ湖バレイの管理外です 管理者がいないため登山道や道標は整備されていません」と明記されています(2026年9月4日確認時点)。ロープウェイは登山口への移動手段として使えますが、その先の登山道の整備・管理は施設が担っていません。地図と現在地確認の手段は必ず用意してください。

まとめ:今日やることは1つ

比良山系の登山口は、坊村・イン谷口・びわ湖バレイの3つです。坊村へのバスは土曜・休日中心で1日1往復、しかも帰りの便は到着の23分後に出るため、帰り便としては機能しません。イン谷口の路線バスは2025年2月18日付で運行終了しており、公共交通は現在ありません。びわ湖バレイは下り最終17:00という明確な締切を持ち、登山用片道券は山麓駅で14:30までの販売です。

この3つの条件を並べると、比良山系のアクセスで最初に決めるべきは行き先の山ではなく、下山後に確実に使える移動手段だということが分かります。帰り方が決まっていない計画は、まだ計画になっていません

編集部の見立て:この記事で書いた数字は、どれも公式サイトに載っている値です。特別な取材をしたわけではありません。それでも上位の記事にこの内容が無いのは、時刻表のPDFを開いて行と列を突き合わせる、という地味な作業を誰もしていないからだと思います。逆に言えば、読者の側が同じ作業を10分すれば、この記事より新しい情報にたどり着けます。そうしてほしい、というのが本音です。

  1. 行き先を決める前に、自分が動ける日が土曜・休日か平日かを確定させる。ここで使える入口が絞られる
  2. 江若交通・びわ湖バレイの公式サイトを開き、この記事に書かれた時刻・料金が今も同じか確認する。改正日を必ず見る
  3. 下山後に確実に使える移動手段を1つ決め、その最終時刻から折り返し時刻を逆算して、紙かメモに書き出す

今日やること:江若交通の公式サイトで堅田葛川線の時刻表を開き、改正日と運行日の条件を自分の目で確認してください。これだけで、この記事の内容が今も有効かどうかが判断できます。計画づくりの第一歩は地図を広げることではなく、時刻表の改正日を見ることです

繰り返しになりますが、この記事の時刻・料金・運行期間はすべて2026年9月4日に確認した値です。バスの時刻表は改正され、ロープウェイの営業時間は季節で変わり、駐車料金も見直されます。出発の1週間前と前日の2回、公式サイトを開いてください。この記事を信じて出発しないでください。この記事を出発点にして、自分で確認してください。

出典

  • 江若交通 路線案内(堅田葛川線の路線・区間) https://www.kojak.co.jp/bus/rosen/ /2026年9月4日確認
  • 江若交通 堅田葛川線 時刻表PDF(2024年3月16日改正版・運行日条件および坊村の発着時刻) https://www.kojak.co.jp/uploads/kataka.pdf /2026年9月4日確認
  • 江若交通 比良登山線(130系統)運行終了のお知らせ(2025年2月18日付) 江若交通公式サイトのお知らせ欄 https://www.kojak.co.jp/ /2026年9月4日確認
  • 京都バス 10系統 廃止のお知らせ(2026年3月15日をもって廃止) https://www.kyotobus.jp/news/2026/02/10-817.html /2026年9月4日確認
  • びわ湖バレイ グリーンシーズン 営業時間・料金(運行期間、上り最終・下り最終、登山用施設利用券、駐車場料金、特定日) https://www.biwako-valley.com/g_season/hours_fare_green /2026年9月4日確認
  • びわ湖バレイ トレッキング・ハイキング(登山道は管理外である旨の記載) https://www.biwako-valley.com/trekking_hiking/ /2026年9月4日確認
  • 大津市 比良山系の遭難発生状況に関する案内 https://www.city.otsu.lg.jp/soshiki/075/2304/news/75608.html /2026年9月4日確認
  • 滋賀県 県道関係例規(県道322号 比良山線・大津市北比良地区) https://www.pref.shiga.lg.jp/site/jourei/reiki_int/reiki_honbun/k001RG00001589.html /2026年9月4日確認

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