

本ページはプロモーションを含みます。掲載する価格・仕様は2026年8月19日時点でメーカー公式ページに掲載されていた内容です。
秋の登山道は、ある高さから急に色が変わります。ブナやミズナラの葉が足首まで積もり、さっきまで見えていた土の道が一枚の茶色い絨毯になる。景色としては最高です。ただ、この絨毯の下がどうなっているかは、上から見ても分かりません。
落ち葉の登山道でまずやることは、道具を買うことではありません。速度を落として、足を置く前に落ち葉をつま先で払い、下に何があるかを確かめる——これが一番早く、一円もかからない対策です。靴とポールはそのあとに効いてきます。
そしてもう一つ。落ち葉は「滑る」だけの相手ではありません。踏み跡・段差・浮き石という、登山道が本来こちらに見せてくれている情報をまとめて隠します。だから落ち葉のある道では、転倒と道迷いの両方に注意が必要になります。警察庁の令和7年の統計では、山岳遭難者3,623人のうち道迷いが30.9%、転倒が19.2%。この2つで半分を超えます。
この記事でわかること
- 落ち葉が「滑る」以外に何を隠すのか、そのせいで何が起きるのか
- 警察庁・林野庁の公表資料をもとにした、落ち葉ゾーンの歩き方4手順
- 靴のソール表記の見方と、ポールの効果がどこまで確かめられているのか
- チェーンスパイクを落ち葉に使ってはいけない理由(メーカー公式の記載)
落ち葉は滑るだけでなく、登山道の情報を隠す
落ち葉ゾーンとは、登山道の路面が落葉に覆われて、踏み跡や地面の凹凸が上から見えなくなった区間のことです。標高でいえば広葉樹林帯、時期でいえば紅葉が終わりかけたころから、風の当たらない谷筋や登山道の窪みに厚くたまります。
ここで起きることは、大きく2つに分かれます。1つは足が滑る、つまり摩擦の問題。もう1つは、足を置く場所の判断材料が消えるという情報の問題です。後者はあまり語られませんが、こちらのほうが厄介です。滑るのは「滑るかもしれない」と身構えられますが、隠れている段差は身構えようがありません。


| 落ち葉の下にあるもの | 見えていれば | 隠れていると | 効く対策 |
|---|---|---|---|
| 浮き石 | 避けて置く | 体重をかけた瞬間に動く | つま先で払う・小刻み歩行 |
| 段差・掘れた溝 | 歩幅を合わせる | 踏み抜いて足首をひねる | 速度を落とす・ポールで探る |
| 木の根 | またぐ | つま先が引っかかる | 足を高めに上げる |
| 踏み跡 | 道が読める | ルートを外れる | 現在地確認・地図アプリ |
編集部⛰️の見立てです。落ち葉対策というと真っ先に靴の話になりがちですが、この表で靴が効くのは1行目だけ。残り3行はグリップでは解決しません。だから対策の順番は、歩き方が先です。
足元まわりの事故を全体像から押さえたい方は、登山の怪我を防ぐための基本と予防策もあわせて読んでみてください。落ち葉は、そこで扱う転倒リスクを季節限定で押し上げる要因のひとつです。
遭難データが示すのは、転倒と道迷いが並んで起きていること
山岳遭難の態様別統計とは、遭難者が「どういう状況で」遭難したかを警察庁が分類・集計したものです。落ち葉の話をするときに、この分類を見ておく価値があります。
警察庁「令和7年における山岳遭難の概況等」(2026年6月18日公表)によれば、令和7年の山岳遭難は発生3,122件、遭難者3,623人。このうち死者・行方不明者が332人、負傷者が1,480人です。態様別では道迷いが1,119人で30.9%、転倒が694人で19.2%を占めました。
数字を日常の感覚に置き換えると、山で遭難した人のおおよそ3人に1人が道に迷い、5人に1人が転んでいる計算になります。落ち葉が隠すものの表と見比べてみると、上位2つの態様は、どちらも落ち葉が直接関わりうる項目でした。
落ち葉対策は「転ばない」と「外れない」の二本立てで組む。道迷い30.9%には現在地確認と地図の携行、転倒19.2%には歩き方・靴・ポール。同じ登山道の同じ区間で、この2つを同時に回します。
| 態様 | 人数(令和7年) | 構成比 | 落ち葉シーズンに効く対策 |
|---|---|---|---|
| 道迷い | 1,119人 | 30.9% | 現在地確認・地図とコンパスの携行・引き返す判断 |
| 転倒 | 694人 | 19.2% | 速度を落とす・足裏全体で着地・靴とポール |
出典:警察庁「令和7年における山岳遭難の概況等」(2026年6月18日公表)
なお、この統計に季節別・月別の内訳はありません。「秋は遭難が増える」という話は登山者のあいだでよく交わされますが、全国の季節別データとして裏づけられる公表資料を今回は確認できませんでした。この記事では「秋に増える」とは書きません。書けるのは、秋固有の条件が別にある、というところまでです。
長野県は2025年9月24日のプレスリリースで、紅葉期に山岳遭難が毎年多く発生しているとして、日没が早まり気温も下がることから早い時間の行動開始と、遅くとも15時までの到着を呼びかけています(長野県警察本部山岳安全対策課も実施)。地域の注意喚起ではありますが、日没の早さは全国共通の条件です。落ち葉の道は速度が落ちるぶん、下山にかかる時間も読み直しておきたいところ。
なぜ落ち葉は滑るのか——断定できることと、できないこと
ここは慎重に扱います。「落ち葉は濡れると滑る」は登山者にとって常識に近い認識ですが、登山道の土と登山靴のあいだで摩擦がどれだけ落ちるかを測った公的なデータは、今回の調査では見つかりませんでした。
確かなこととして書けるのは、公的機関がそう注意喚起している、という事実です。林野庁関東森林管理局は「山歩きの注意」で、湿った岩・浮き石・苔・落ち葉は滑りやすいとしたうえで、つまずきやすい場所はゆっくり歩き、下りでは速度を緩めるよう案内しています。落ち葉は苔や浮き石と同じ枠で名指しされている、と読めます。
ではメカニズムはどうか。鉄道分野では、レール上の濡れた落葉が皮膜となってペースト状になり、粘着力を低下させる現象が鉄道総合技術研究所によって説明されています。列車が空転・滑走する原因として知られるものです。登山道で起きていることも似た理屈ではないか、という説明のしかたは理由として挙げられることが多く、直感的にも分かりやすい。
ここは断定しません。鉄道分野で報告されているのはレールと車輪という金属同士の話であり、土・岩・ゴムソールの登山道にそのまま当てはめられるものではありません。摩擦がどれだけ下がるかという数値も、登山道向けに測られたものではないため、この記事では使いません。落ち葉が滑りやすいことは公的機関の注意喚起として扱い、その理由については「類似の摩擦低下現象が別分野で報告されている」というところまでにとどめます。
読者をだます気がないなら、ここで数字を持ってくるべきではない、というのが編集部の判断です。「摩擦係数が◯◯まで下がる」と書けば記事は強く見えますが、それは登山道で測られた値ではありません。落ち葉を警戒する理由は、公的機関が名指ししている時点ですでに十分だと考えます。
落ち葉ゾーンの歩き方は4手順で決まる
フラットフッティングとは、つま先やかかとから突っ込まずに、足裏全体をいちどに接地させる歩き方です。接地面積が広いぶん、片側だけに荷重が集まりません。落ち葉ゾーンで最初に切り替えるのは、この足の置き方です。
警察庁の防止案内(地図・コンパスの携行、常時の現在地確認、地図アプリと紙地図の併用)と、関東森林管理局の歩行注意(ゆっくり歩く・下りは減速)を、編集部でひとつの流れに組み直したのが次の4手順です。落ち葉が現れた地点で、順番どおりに回します。
- 止まる:落ち葉が連続して現れた地点でいったん歩調を落とす。そのまま同じペースで突っ込まない。特に下りは意識して減速する
- 払う(一歩ごと):足を置く場所を、つま先で軽く横に払う。厚みのある区間ほど効きます。全部払う必要はなく、体重を預ける一歩だけでいい
- 確かめる(同時):払った下に浮き石・段差・木の根がないか見る。石があれば動くかどうかを、体重を乗せる前に軽く押して確認する
- 現在地を確認する(踏み跡が読めない区間で):踏み跡が読めない区間に入ったら、地図アプリと紙地図で現在地を見る。落ち葉が続くかぎり、間隔を短くする
手順にすると大げさに見えますが、慣れれば1〜4はほぼ一連の動作になります。効くのは3番目です。石があるときは、体重を乗せる前に足先で押して動くかどうかを確かめます。
落ち葉ゾーンに入ったときの確認リスト
- 歩幅は普段より狭くなっているか(小刻みに刻む)
- 下りで速度が上がっていないか
- 足裏全体で着地できているか(かかとから落としていないか)
- 直前の分岐から何分たったか、覚えているか
- 次の目標地点までのルートを、地図で見たのはいつか
下りの減速には、もうひとつ副次的な効果があります。下り坂ではスピードを緩めて歩くよう、関東森林管理局も案内しています。落ち葉の時期にかぎらず下りで膝が痛くなる方は、下りで膝が痛くなる原因と対策もあわせてどうぞ。歩き方の話は、転倒対策と膝の対策でかなり重なります。
靴で防げるのはグリップ、防げないのは隠れた段差
アウトソールとは、靴底の地面に接するゴム部分のことです。落ち葉対策として靴を見るときは、ブランド名ではなくこのアウトソールの仕様——ゴムの配合(コンパウンド)と、突起(ラグ)の深さ——を見ます。
ラグが深いほど、落ち葉や柔らかい土に食い込んで引っかかりを作れます。逆に、ラグが浅くフラットに近いソールは、落ち葉の層の上を滑るように動きやすい。ここは靴を選ぶ段階で決まってしまう部分なので、秋のシーズンに入る前に一度確かめておく価値があります。靴そのものの選び方は初心者向けの登山靴の選び方で扱っています。
メレル MOAB 3 SYNTHETIC MID GORE-TEX®(型番500637)の公表スペック
具体例として、メレルの「MOAB 3 SYNTHETIC MID GORE-TEX®[メンズ]」(型番500637)を挙げます。メーカー公式オンラインストアの掲載値では、アウトソールはVibram TC5+、重量は片足約470g(27.0cm)。スタックハイトはヒール30mm・つま先20mmでドロップ10mm、そしてラグの深さは5mmと公表されています。価格は税込23,100円(2026年8月19日時点)。
数字の意味をひとつずつ翻訳すると、ラグ5mmは登山靴として標準的な深さで、落ち葉の層を突き抜けて下の土に届く程度は期待できます。ドロップ10mmはかかとがつま先より1cm高い設定で、下りで自然にかかとから入りやすい形。落ち葉ゾーンで足裏全体の着地を意識するなら、この形状は「意識して直す対象」だと理解しておくといい。ミッドカットなので、足首がとっさにひねられる場面での支えにもなります。
混同されやすい点をひとつ。Vibram公式は「Megagrip」を、乾いた路面と濡れた路面の双方でグリップ性能を発揮するコンパウンドとして説明していますが、MOAB 3が採用しているのはTC5+であってMegagripではありません。Megagripの説明文をこのモデルの性能として読むのは誤りです。ソール名は必ずモデルごとに確認してください。
ただし、靴で防げる範囲ははっきりしています。ソールが解決してくれるのは接地面の摩擦、つまり「滑る」のほうだけです。落ち葉の下の段差を踏み抜くこと、浮き石が動くこと、木の根につま先を引っかけることは、どんなソールでも防げません。ここを混同すると、良い靴を買ったからと速度を上げてしまい、かえって危ない歩き方になります。
予算や足型に合わせて他のモデルも見比べたい場合は、メンズ登山靴のモデル別比較で候補を並べています。落ち葉の季節を基準にするなら、見る順番はラグの深さ、防水の有無、カットの高さ。この3つで足りることが多い印象です。
靴と一緒に効くのがゲイター(スパッツ)。落ち葉の厚い区間では、乾いた葉のかけらや泥が靴の履き口から入り込みます。歩けなくなるほどではありませんが、下山まで異物感が続くのは地味に消耗する。役割と選び方はゲイター(スパッツ)の役割と選び方にまとめています。
ストックは万能ではないが、荷重時の安定は補える
トレッキングポールとは、両手に持って地面を突き、支点を4点に増やすための道具です。落ち葉対策としては、滑ったときに体勢を戻す支えになるのと、足を置く前に地面を探れるという2つの働きがあります。
効果の根拠については、正確に書きます。富士山の下山者1,061人(男性703人・女性358人)を対象にした原著研究では、転倒率は女性49%(174/358)、男性35%(246/703)でした。多変量モデルで解析した結果、ポール使用が転倒リスクの低下と関連していたのは女性に限られています。男性や、富士山以外の一般的な登山道にそのまま一般化できる所見ではありません。
つまり「ポールを持てば転ばない」とは言えない、ということです。研究が示したのは特定の対象・特定の山での関連であって、万人向けの保証ではありません。とはいえ、機序の面からの説明は別にあります。Wilderness & Environmental Medicine誌のレビューでは、荷物を背負っていないときは下肢の負荷が減る一方で心肺の需要が増えること、そして大きな荷重を背負う場合には下肢の筋活動を減らしてバランスや安定性を高める可能性が示されています。転倒件数を減らした直接の証拠ではない、という点も添えておきます。
編集部の結論としては、ポールは「転ばないための保険」ではなく「荷物が重いとき、足を置く前に地面を探れる道具」。落ち葉ゾーンでの使いどころは、支えるより先に、探ることだと考えています。石突きで落ち葉を払い、下の硬さを確かめてから足を出す。この使い方は地面の状態を確かめる補助になりますが、転倒を防ぐことを保証するものではありません。
シナノ ロングトレイル125(2本セット)の公表スペック
国産メーカーのシナノが出している「ロングトレイル125」は、2本セットで税込15,400円(2026年8月19日時点)。公式製品ページの掲載値では、使用サイズ100〜125cm、対応身長は約141〜181cm、収納時59cm、重量は約241g/本、耐荷重30.8kgf/本、素材は超軽量アルミで台湾製です。
落ち葉の道で見るべき数字は、耐荷重30.8kgf/本と、収納時59cmの2つ。前者は、足を滑らせて体重の一部を預けた瞬間に折れないかという話に直結します。後者は、樹林帯でポールが要らなくなったときザックに収まるかという話。落ち葉ゾーンは連続するとはかぎらず、出したりしまったりを繰り返します。約241g/本という重さは、片手にスマートフォンを持っているかどうかという程度の負担で、これなら一日握っていられる範囲です。長さの合わせ方や種類の違いはトレッキングポールの選び方で解説しています。
踏み跡が消えたら、進まずに戻る
踏み跡とは、多くの登山者が歩いたことで地面が踏み固められ、線として見えている道の痕跡です。落ち葉はこの線を最初に消します。標識やロープが無い区間では、踏み跡だけがルートの証拠だった、ということも珍しくありません。
警察庁は道迷いの防止として、地図とコンパスを携行すること、常に現在地を確認すること、地図アプリと紙地図を併用することを案内しています。そして迷ったと感じたときの行動としては、闇雲に進まず来た道を戻り、早めに登山を中止することを挙げています。
ここが分かれ目です。踏み跡を見失ったとき、人は「もう少し進めば見つかるはず」と考えます。落ち葉の道は特にそうで、この先で葉が薄くなれば道がまた現れるだろう、という期待が働く。でも統計上、遭難者のもっとも多い態様は道迷いでした。進んで探すより、確実に道があった地点まで戻るほうが早い——公表資料が勧めているのは、この順序です。
踏み跡が読めなくなったときの手順
- その場で止まる。歩きながら地図を見ない
- 地図アプリで現在地を確認する(電池残量も同時に見る)
- 紙地図で、直近に通過した確実な地点(分岐・標識・沢の渡渉点)を特定する
- 踏み跡が確かにあった地点まで戻る。戻る途中も現在地を確認し続ける
- 戻っても道が見つからない、日没が近い、体力に不安がある——このいずれかなら、その日の登山を中止する判断に切り替える
落ち葉で踏み跡が消えた区間では、樹木に巻かれたピンク色のテープが唯一の手がかりになることがあります。ただしテープは登山道を示すために付けられたものとはかぎりません。何のために付けられているのか、どこまで信じてよいのかは登山道のピンクテープの意味と信頼できる範囲で整理しました。テープだけを追って道を外れる、というのは実際に起こりうる筋道です。
チェーンスパイクを落ち葉に使ってはいけない
チェーンスパイクとは、靴底に装着してチェーンと爪で氷雪を捉える滑り止めです。「滑るなら爪を付ければいい」という発想で落ち葉に使いたくなる道具ですが、メーカーの公表内容を読むと、その用途は想定されていません。
モンベルの公式オンラインストア(品番1129740、税込5,800円/2026年8月19日時点)では、適した用途として冬の低山や夏の雪渓歩行が挙げられています。そして取扱説明書には、氷雪以外での使用は爪の破損等の恐れがあると明記されています。
落ち葉の登山道でチェーンスパイクは使わないでください。取扱説明書には、氷雪以外で使用すると爪が折れ曲がったりバンドが傷ついたりして破損しやすくなる、と書かれています。メーカーが適した用途として示していない使い方です。この記事では落ち葉対策の道具として推奨しません。
| 道具 | 落ち葉シーズンに使えるか | 根拠 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 登山靴(MOAB 3/Vibram TC5+・ラグ5mm) | ◯ | 通常のトレイル用途の製品仕様 | 隠れた段差・浮き石は防げない |
| トレッキングポール(ロングトレイル125) | ◯ | 荷重時のバランス補助・地面を探る用途 | 転倒を防ぐ保証ではない(研究は女性に限る所見) |
| チェーンスパイク(品番1129740) | × | 公式の用途は冬の低山・夏の雪渓 | 氷雪以外の使用は爪の破損等の恐れ |
これは自分で対処しない方がいいケース
ここまでは、自分の判断と装備でどうにかできる範囲の話でした。線を引いておきます。
転倒して足首や膝を痛めた、頭を打った、出血が止まらない——こうしたケガの手当てや、受診するかどうかの判断は、この記事の範囲外です。応急処置と受診の可否は、医療機関や消防・自治体の公的な窓口の指示に従ってください。行動を続けられるかどうかの見立ても、素人判断で押し通さないほうがいい場面があります。
道迷いについても同じです。現在地が分からず、来た道も判別できず、日没が迫っている。この状態は自力での解決を試み続ける段階ではありません。警察庁が案内しているとおり、闇雲に進まず、早めに登山を中止する判断へ切り替える。そのうえで救助を求めるかどうかは、警察・消防など公的機関の窓口に相談してください。判断を先延ばしにするほど、選べる手段は減ります。
編集部の本音を書きます。落ち葉で滑っただけなら、たいていは笑い話で済みます。問題は、滑った先が斜面だったときと、ケガをして行動が制限されたときに、判断を自分だけで抱え込むこと。装備の話より、この線引きのほうがずっと大事だと思っています。
よくある質問
Q. 落ち葉が濡れているときと乾いているとき、どちらが危ないですか
A. 濡れている状態のほうが注意すべき、というのが公的機関の案内です。関東森林管理局は湿った岩・浮き石・苔・落ち葉を滑りやすいものとして並べて挙げています。ただし、乾いた落ち葉が安全というわけではありません。乾いていても厚く積もれば、その下の段差や浮き石は同じように見えません。隠すという性質は湿り気とは無関係です。
Q. 落ち葉の道で、スピードはどれくらい落とせばいいですか
A. 秒数や速度の公的な目安はないため、数字では書けません。関東森林管理局の案内は「浮き石、木の根などのつまずきやすい場所では、ゆっくりと歩きましょう。」「下り坂では、スピードを緩めて歩きましょう。」という表現です。実務的な基準を挙げるなら、足を置く前に一歩ぶんの地面を目で確認できる速度。それができないなら速すぎる、と判断してください。
Q. トレッキングポールを買えば転倒は防げますか
A. そう言い切れる根拠はありません。富士山の下山者1,061人を対象にした研究で、ポール使用と転倒リスクの低下に関連が見られたのは女性に限られていました。男性や他の山域への一般化はできません。ポールは荷重時の安定を補い、足を置く前に地面を探れる道具、という位置づけで考えるのが妥当です。
Q. 落ち葉の季節の日帰り登山で、装備に足すべきものはありますか
A. まず紙地図とコンパスです。警察庁が地図アプリと紙地図の併用を案内しているとおり、電池切れや圏外を前提にした冗長性が要ります。加えて、日没が早まる時期なのでヘッドランプ。長野県も紅葉期の注意喚起で早い行動開始と遅くとも15時までの到着を呼びかけています。持ち物全体は秋の日帰り登山の持ち物リストで確認できます。
Q. 落ち葉で道が分からなくなったら、GPSアプリだけで進んでも大丈夫ですか
A. 現在地の確認には有効ですが、それだけで進む判断はおすすめしません。アプリが示すのは自分の位置であって、目の前の斜面が安全に歩けるかどうかではありません。警察庁の案内も、迷った際は闇雲に進まず来た道を戻ることを勧めています。位置が分かることと、道があることは別です。
まとめ:落ち葉の道は、順番を守れば怖くない
落ち葉が積もった登山道でやることは、結局のところ2つに集約されます。転ばないために速度と足の置き方を変えること。外れないために現在地を確認し続けること。警察庁の令和7年の統計で、遭難者3,623人のうち道迷い30.9%・転倒19.2%という2つの態様が上位を占めていたことは、この2本立てを支持しています。
今日やることを1つだけ選ぶなら、次の山行で落ち葉ゾーンに入った瞬間に、足を置く前につま先で払う癖をつけること。道具は要らず、その場で始められます。
- 今日:手持ちの登山靴を裏返し、ラグの深さと減り具合を見る。すり減ってフラットに近いなら、落ち葉の季節までに買い替えを検討する
- 次の山行の前日:紙地図とコンパスをザックに入れる。地図アプリに歩く山域のマップをダウンロードしておく
- 山行当日:落ち葉ゾーンに入ったら「止まる・払う・確かめる・現在地」の4手順を回す。下りは意識して減速する
落ち葉の道を歩けるのは一年のうち短い期間だけです。避けるべき区間ではなく、歩き方を切り替える区間。そう捉えておくと、秋の山はぐっと楽しくなります。
参考・出典
- 警察庁「令和7年における山岳遭難の概況等」(2026年6月18日公表/2026年8月19日確認)
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/r07_sangakusounan_gaikyou.pdf - 林野庁 関東森林管理局「山歩きの注意」(2026年8月19日確認)
https://www.rinya.maff.go.jp/kanto/invitation/sizenkyuuyourin_anzen/html/03page.html - 鉄道総合技術研究所「落葉に起因する空転・滑走現象の解明」(2026年8月19日確認)
https://www.rtri.or.jp/rd/division/rd50/rd5030/rd50300115.html - Vibram公式「The Megagrip Sole」(2026年8月19日確認)
https://www.vibram.com/jp/TECH_megagrip.html - MERRELL公式オンラインストア「MOAB 3 SYNTHETIC MID GORE-TEX®[メンズ]」(2026年8月19日確認)
https://merrell.jp/products/mens_moab-3-synthetic-mid-gore-tex - シナノ公式製品ページ「ロングトレイル125」(2026年8月19日確認)
https://sinano.co.jp/suntrace/long125.html - シナノ公式ストア「ロングトレイル125」(2026年8月19日確認)
https://sinano-store.com/?pid=174107062 - Wilderness & Environmental Medicine誌レビュー(2020年12月1日/2026年8月19日確認)
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1016/j.wem.2020.06.009 - PubMed「富士山下山者の転倒とトレッキングポール使用の関連」原著論文(2023年3月2日Epub/2026年8月19日確認)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36870861/ - モンベル公式オンラインストア「チェーンスパイク」(2026年8月19日確認)
https://webshop.montbell.jp/goods/disp.php?product_id=1129740 - モンベル「チェーンスパイク取扱説明書」PDF(2026年8月19日確認)
https://webshop.montbell.jp/goods/instruction/1129740.pdf - 長野県プレスリリース(紅葉期の秋山注意喚起/2025年9月24日発表・2026年8月19日確認)
https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/happyou/happyou/250924press.html
