

秋の山ごはんで最初に決めるのは、メニューではない。その日、火を使うのか使わないのかである。ここが決まらないうちにレシピを探しても、当日になって「そもそもここでバーナーを点けていいのか」「点けたのにガスが出ない」で崩れる。
理由は2つある。1つは、山ならどこでもコンロを使ってよいわけではないこと。もう1つは、気温が下がるとガスそのものが出なくなる場合があること。イワタニ・プリムスの公式FAQでは、OD缶のノーマルガス(Gタイプ)の使用可能温度は20℃〜とされ、5℃以下では缶にガスが残っていても出ない場合があると明記されている(2026年8月18日確認時点)。秋の山は、その5℃を平気で下回る。
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だからこの記事は、レシピを並べない。場所・気温・時間の3つで「火を使う/使わない」を先に判定し、そのうえで献立の型と道具を決めるという順番で進める。行動食そのものの選び方は登山の行動食の選び方の全体像で扱っているので、昼の一食だけでなく一日の食べ方から組み立てたい人はそちらを先に読んでほしい。
- 秋の山ごはんを「火を使う/使わない」に分ける3つの判定基準(場所・気温・時間)
- コンロを使ってよい場所とそうでない場所の考え方(環境省・富士山・尾瀬の実例)
- 気温からガスの種類と道具を決める早見表(イワタニ・プリムス公式の使用可能温度)
- 火を使わずに温かいものを食べる現実解と、サーモス公式の保温効力の読み方
- 作り置きを持ち歩くときに、温度があいまいな時間を作らないための線引き


秋の山ごはんは、レシピより先に「火を使うか使わないか」で決まる
秋の山ごはんとは、気温が下がり日没が早くなる季節に、限られた滞在時間で食べきる一食のことである。夏と決定的に違うのは、立ち止まっている時間そのものが体を冷やす方向に働く点だ。調理に20分かければ、その20分は動いていない。
山頂に着いて、ザックを下ろす。風が思ったより強い。ここでバーナーを出すか、ボトルの湯を注ぐだけにするか——この判断は現地でするものではなく、家を出る前に済ませておくものだ。現地判断にすると、道具の片方しか持っていないという理由で選択肢が消える。
編集部の見立て:上位のレシピ集が悪いわけではない。ただ、レシピは「火が使える前提」で書かれている。その前提が成り立つかを先に確かめる工程が、どこにも書かれていないだけである。
判定の順番は固定でいい。①その場所でコンロを使ってよいか → ②その気温でガスが出るか → ③その時間で作りきれるか。①でつまずいたら、②③は考えなくてよい。献立は「火を使わない型」に確定する。
判定の基準は3つ。場所・気温・時間だけを見る
判定基準とは、当日の現場で迷わないために、家で答えを出しておく問いのことである。基準を増やすほど当日に迷うので、3つに絞る。
基準1:その場所でコンロを使ってよいか
環境省の「国立公園の利用上のマナー」では、自然公園法上、直火・たき火は特別保護地区等で禁止の対象とされる一方、個人用の小型火器(コンロ)自体は自然公園法上の規制対象ではないという位置づけが示されている。ただし同時に、山小屋・自治体・保護区域の管理者が独自に制限を設けるケースがあることも押さえておきたい(2026年8月18日確認時点)。
つまり「法律で一律に禁止されていない」ことと「その場所で使ってよい」ことは別である。実例を2つ挙げる。
| 山域 | たき火・直火 | コンロ(バーナー) | 出典で明記されている条件 |
|---|---|---|---|
| 富士山 | — | 法律による一律禁止ではない | 「山小屋周辺」「混雑する場所」「強風時」の使用は厳禁と公式に明記 |
| 尾瀬 | 禁止 | 限定的に可 | 「安全で迷惑にならない場所で使用しましょう」 |
| 国立公園全般 | 特別保護地区等で禁止対象 | 自然公園法上の規制対象外 | 山小屋・自治体・管理者が独自に制限する場合がある |
この表に載っていない山域を、当サイトは「禁止」とも「可」とも書かない。確認できていないからである。「登山道なら大丈夫」「山頂なら大丈夫」という一般則は存在しないと考えたほうが安全だ。
出発前に、行く山の管理者(自治体・国立公園管理事務所・山小屋)の最新情報を必ず確認してください。火気の扱いは年ごと・シーズンごとに変わり、乾燥期や特定の区域だけ制限がかかることもあります。この記事に書けるのは、確認できた範囲の実例だけです。
あわせて、環境省は「ごみは捨てずに持ち帰りましょう」と明記しています。理由として風致景観の保護に加え、ごみの臭いが野生動物を誘引することが挙げられています(2026年8月18日確認時点)。調理をするなら、汁を含めた残りものをどう持ち帰るかまでが献立の一部です。
基準2:その気温でガスが出るか
ここが秋の山ごはん最大の落とし穴になる。イワタニ・プリムスの公式FAQによると、OD缶は成分の違いで低温性能がはっきり分かれる(いずれも2026年8月18日確認時点)。
| ガスの種類 | 使用可能温度 | 出なくなる目安 | 秋にどう効くか |
|---|---|---|---|
| ノーマルガス(Gタイプ) | 20℃〜 | 5℃以下では缶内に残っていても出ない場合がある | 秋の朝夕・稜線ではほぼ想定外 |
| ハイパワーガス(Tタイプ) | 0℃〜 | -5℃以下(使用中の缶なら0℃以下)では出ない場合がある | 秋の標準。ただし高所では限界に届く |
言い換えると、ノーマルガスの想定使用域は「夏の平地」に近い。気温20℃という数字は、秋の山では日中の低山でようやく届く水準である。そして重要なのは、5℃や-5℃という数値が「ここから性能が落ち始める」ではなく「出ない場合がある」と書かれている点だ。出るか出ないかの話であって、火力が少し弱まる話ではない。
では秋の山の気温はどのくらいか。気象庁の平年値(統計期間1991〜2020年、2026年8月18日確認時点)を2地点だけ置く。
| 地点 | 10月の日最低気温 平年値 | 11月の日最低気温 平年値 | ガスの判定 |
|---|---|---|---|
| 軽井沢(中標高の目安) | 6.3℃ | -0.2℃ | 10月でノーマルガスの使用可能温度20℃を大きく下回る。11月はハイパワーガスの下限0℃に接する |
| 富士山(山頂) | -5.1℃ | -11.8℃ | ハイパワーガスでも「出ない場合がある」域に入る |
編集部の判断:この2つの表を重ねると答えは単純になる。秋にノーマルガスを持っていく理由は、ほぼ無い。そして富士山の山頂クラスでは、ハイパワーガスでも「火が使える前提」で献立を組むべきではない。
なお、メーカーによっては寒冷地対応をうたいながら、具体的な下限温度の数値を製品ページで公表していない会社もある。当サイトでは、公式で数値を確認できたイワタニ・プリムスの値だけを判断の基準に使っている。数値が出ていないガス缶を「もっと低温に強いはず」と期待して選ぶのは、根拠のない賭けになる。
基準3:その時間で作りきれるか
秋は日没が早い。下山時刻から逆算して、山頂に滞在できる時間は現実的に30分前後ということが多い。そのうち食事に割けるのは15〜20分。この枠に、湯を沸かす時間・食べる時間・片づけと冷ましてしまう時間の全部が入る。
必要な量の目安には、運動強度から逆算する方法がある。国立健康・栄養研究所版の「身体活動のメッツ(METs)表」(2011年改訂版)では、「hiking, cross country」が6.0METs、「backpacking, hiking with daypack」が7.8METs、荷物10〜20lbを背負って坂を登る場合が7.3METs、21〜42lbで8.3METsとされている(2026年8月18日確認時点)。
消費kcalの概算=METs × 体重(kg) × 時間(h) × 1.05
体重60kgの人が6.0METsで4時間歩くなら、6.0 × 60 × 4 × 1.05 = 約1,512kcal。カロリーメイト(ブロック)は1本100kcal、井村屋のえいようかんは1本60gで171kcalなので(いずれも公式サイト・2026年8月18日確認時点)、行動食だけで埋めようとすると相当な本数になる、という規模感がつかめる。
ここで言いたいのは「全部を山ごはんで賄え」ではない。逆だ。一食で完結させようとするほど調理は重く長くなる。行動食と分担させれば、山ごはんは温かさと満足感のために食べる一杯で足りる。時間の基準は、そこから決まる。
判定チェックリストと、気温から道具を決める早見表
チェックリストとは、当日の朝に3分で答えを出すための問いの束である。以下に1つでも「いいえ」があれば、その日は火を使わない型で組む。
- 行き先の管理者(自治体・国立公園管理事務所・山小屋)の案内で、コンロの使用が制限されていないことを確認した
- 山小屋周辺・混雑地・強風時を避けて調理できる場所の見当がついている
- その日の予想最低気温が0℃を上回る(下回るならハイパワーガスでも余裕が無い)
- 手持ちのガスがハイパワーガス(Tタイプ)である
- 山頂の滞在予定が30分以上ある
- 汁気を含む残りものを持ち帰る袋を用意している
次に、気温から道具を決める。上の判定で「火を使う」に進んだ人も、この対応表で最終確認をしてほしい。
| その日の最低気温の目安 | 火を使う場合の道具 | 火を使わない場合の道具 | 献立の型 |
|---|---|---|---|
| 20℃以上(秋の低山の日中) | ノーマルガス(Gタイプ)でも使用可能温度内 | 保温ボトル/常温の行動食 | 湯を沸かす・簡単に煮る、どちらも可 |
| 0℃〜20℃未満(秋の標準域) | ハイパワーガス(Tタイプ)+バーナー+クッカー | 保温ボトル+スープジャー | 湯を注ぐだけの型が最も確実 |
| 0℃を下回る(晩秋・高所) | ハイパワーガスでも「出ない場合がある」域。火に依存しない | 保温ボトル+スープジャー(要予熱) | 火を使わない型を主、火は予備 |
表の真ん中の行が、秋のほとんどを占める。「ハイパワーガスなら使える。でも湯を注ぐだけの型がいちばん確実」——この二重の答えが、秋の山ごはんの実像に近い。道具を持っていくかどうかと、当日それに頼るかどうかは別の判断でよい。
火を使わない献立の型は「持っていく温度を器で決める」
火を使わない山ごはんとは、調理を家で終わらせ、山では温度を保つだけにする食べ方である。ここでの主役は器だ。中身より器を先に決める、と言い換えてもいい。
器の性能は感覚では測れないので、公表値を見る。サーモスの真空断熱スープジャー JED-00シリーズでは、6時間後の保温効力が公式に示されている(2026年8月18日確認時点)。
| 型番 | 容量の位置づけ | 6時間後の保温効力 | 読み取れること |
|---|---|---|---|
| JED-300 | 小 | 56℃以上 | 軽いが、6時間後の温度はいちばん低い |
| JED-400 | 中 | 60℃以上 | 小と大の中間 |
| JED-500 | 大 | 63℃以上 | 同シリーズ内では最も高い温度を保つ |
同じシリーズで、容量が大きいほど6時間後の温度が高い。差はJED-300とJED-500で7℃ある。これは「大きい器のほうが冷めにくい」という一般則が、公表値で裏づけられている例だ。軽さを取るか温度を取るかは、そのまま容量の選択になる。スープジャーの予熱の手順と容量の使い分けはスープジャーの予熱と容量の使い分けで詳しく扱っている。
編集部の本音:秋にいちばん効くのは、実は湯そのものである。湯さえあれば、フリーズドライのスープもインスタント麺も成立する。器の中に「完成した料理」を入れるより、「湯」を入れたほうが献立の自由度は高い。
その湯を運ぶ器として当サイトが基準にしているのが、サーモス 山専用ステンレスボトル 750mlである。名前のとおり登山用途に振った製品で、口径と栓の構造が熱い湯の注ぎ出しを前提に作られている。750mlという容量は、カップ麺一食ぶんに湯を使ってもまだ飲む用の湯が残る量で、ペットボトル1本半ぶんの体積にあたる。
ただし正直に書いておく。上の表で保温効力を公式に確認できたのは、スープジャーのJED-00シリーズであって、山専用ステンレスボトルの数値ではない。容量もカテゴリも別の製品なので、この56〜63℃という数字をボトルに当てはめて読まないでほしい。ボトル側の保温効力は、購入前にメーカー公式の製品ページで各自確認することをおすすめする。保温力の公表値そのものの読み方は保温ボトルの保温力の見方にまとめてある。
器を決めたら、中身は驚くほど簡単になる。湯を注ぐだけで成立するものだけを選べばよく、調理という工程が献立から消える。風が強くても、混雑した山頂でも、手袋をしたままでも成立する。これが火を使わない型のいちばんの強みだ。秋の山では、この「条件に左右されない」という性質が、味の良し悪しより先に効いてくる。
火を使う献立の型は「湯を沸かすだけ」と「煮炊きする」で別物
火を使う山ごはんとは、現地で熱源を確保して調理する食べ方である。ひとくくりにされがちだが、実際には目的が二つに分かれる。湯を沸かすだけの型と、フライパン的に炒めたり煮込んだりする型だ。必要な道具も、失敗の仕方も違う。
秋に現実的なのは、圧倒的に前者である。理由は基準3で書いたとおり、時間が無いから。そして風があると、鍋を火にかけている時間が長いほど熱が逃げるからだ。バーナー本体の選び方の考え方は登山用ガスバーナーの選び方に整理してある。
湯沸かしに振り切るなら、ジェットボイル フラッシュ
ジェットボイル フラッシュは、バーナーと専用クッカーが一体で組み合わさるシステムストーブである。鍋底に熱交換器が付いていて、鍋とバーナーがセットで機能するように設計されている。つまり「鍋を選ぶ」工程が無い。湯を沸かす、それだけに用途を絞った道具だ。
向くのは、山頂での滞在が短く、湯さえあれば献立が成立する人。フリーズドライ・カップ麺・コーヒーで完結させるなら、これ以上の適材はない。逆に、炒めものをしたい人には向かない。
なお、点火の可否はガス缶側で決まる。本体がどれだけ優秀でも、ノーマルガスを0℃の稜線に持っていけば火は点かない。道具の性能と、その日の気温は別々に判定する——これは何度でも繰り返す価値がある。
もう一方の、汎用性を取る選択肢も挙げておきたい。湯沸かしだけでなく、鍋を替えて煮る・炒めるまで視野に入れるなら、五徳付きのシングルバーナーになる。この場合はクッカーを別に選ぶことになり、組み合わせの自由度と引き換えに、荷物と選択の手間が増える。どちらが良いかではなく、その日の献立が「湯だけで足りるか」で決まる、と考えるとまとまりやすい。
汎用性を取るなら、プリムス P-153 ウルトラバーナー
プリムス P-153 ウルトラバーナーは、OD缶に直結して使う定番のシングルバーナーである。五徳が独立しているので手持ちのクッカーを載せられ、湯沸かしにも煮炊きにも回せる。イワタニ・プリムスは、この記事で低温性能の数値を引いたガス缶と同じメーカーであり、ガスの使用可能温度が公式FAQで公表されている点は、道具選びの根拠として素直に扱える。
個々の火力や重量といったスペック数値は、モデルチェンジや仕様変更で変わることがあるため、ここでは書かない。購入前にメーカー公式の製品ページで確認してほしい。当サイトが評価しているのは数値そのものより、低温での挙動をメーカーが数値で公表しているという姿勢のほうである。
クッカーは「湯だけか、煮炊きか」が決まってから選ぶ
クッカーとは、山で調理・喫食に使う鍋のことである。素材とサイズで性格が変わり、先に献立の型が決まっていないと選べない。逆に言えば、火を使う/使わないの判定を済ませた人にとっては、選択肢はかなり絞られている。
秋の日帰りで湯を沸かすだけなら、必要なのは軽くて熱の立ち上がりが速い鍋だ。ベルモント チタンクッカー3点セットは、その名のとおりチタン製の鍋類がセットになった製品で、同じサイズのステンレス製に比べて軽い点が持ち味である。3点セットなので、鍋と蓋・カップの役割を分担でき、一人ぶんの湯とコーヒーを同時に扱いたい場面に噛み合う。
チタンは軽さと引き換えに熱が一点に集中しやすい素材でもあるため、炒めもの中心の献立には向きにくい。素材ごとの得手不得手と、何人ぶんを想定してサイズを決めるかはクッカーの素材とサイズの決め方で扱っている。ここでは「湯だけの型ならチタンの軽量セットで足りる」という結論だけ持ち帰ってもらえればいい。
作り置きを持ち歩くときは、温度があいまいな時間を作らない
作り置きの山ごはんとは、家で調理を終えて現地では食べるだけにした献立のことである。火を使わない型と相性がよく、秋は特に選ばれやすい。ただしここには温度の問題がついてくる。
農林水産省の「お弁当で注意すべきこと」では、温かいところに置いておくと細菌が増えること、冷蔵庫やなるべく涼しい場所に保管して早めに食べること、長時間持ち歩くときは保冷剤・保冷バッグを利用することが明記されている(2026年8月18日確認時点)。一方で、当サイトが確認した範囲では、同ページに「何℃で何時間まで」という具体的な数値基準は書かれていない。
だから当サイトも、その数値を書かない。書けるのは判断の形だけである。
持ち歩く食べものは、「温かく保つ」か「涼しく保つ」かのどちらかに寄せる。スープジャーは前者の器で、サーモスJED-00シリーズは6時間後で56〜63℃以上という保温効力を公表している。保冷剤と保冷バッグは後者の道具である。いちばん避けたいのは、朝作ってそのままザックに入れ、どちらでもない温度で半日運ぶ形だ。
秋は「涼しいから大丈夫」と感じやすい季節でもある。だが日中のザックの中は、背中に接していて外気温そのものではない。器で温度を決めておけば、この曖昧さは最初から発生しない。予熱をして熱いものを熱いまま入れるか、保冷して冷たいまま運ぶか。どちらかに決めるだけである。
体調に異変を感じたとき、食あたりかどうかの判断や対処を自分で決めないでください。症状の見極めや治療の必要性は、医療機関・自治体の保健所や相談窓口といった公的機関の指示に従ってください。この記事は献立と道具の選び方を扱うもので、医学的な判断の材料にはなりません。
この選び方が向かない人と、デメリット
ここまでの手順は、万人向けではない。合わない場合をはっきり書いておく。
- 調理そのものが目的の人:レシピの幅を楽しみたい人にとって、「湯だけで足りるか」で道具を絞る手順は窮屈になる。この記事の型は、食事を短時間で終える前提で組んである
- グループで大人数ぶんを作る人:この記事は一人〜二人の日帰りを想定している。人数が増えると、鍋の容量とガスの消費量から逆算する別の設計が要る
- 山小屋泊・テント泊で夕食を作る人:滞在時間が長く、風を避けられる場所も確保できるため、時間の基準が変わる
- 確実に火気が使える場所しか行かない人:基準1の確認工程が丸ごと不要になる。ただし「確実に使える」と言い切れる場所は、思っているより少ない
デメリットもある。火を使わない型に寄せるほど、献立は単調になりやすい。湯を注ぐだけで成立するものは選択肢が限られるからだ。それから、保温ボトルもスープジャーも、空になっても軽くならない。バーナーとガス缶はガスを使えば軽くなるが、真空断熱の器は最後まで同じ重さを背負い続けることになる。
編集部の見立て:それでも秋に器を推すのは、失敗の種類が違うからだ。火が点かない日は一食まるごと消えるが、器が思ったより冷めていた日は「ぬるい」で済む。秋の山で取り返しがつくのは後者のほうである。
よくある質問
Q. 秋の山でノーマルガスを使ってはいけませんか?
A. 「いけない」ではなく、メーカーの想定使用域から外れる可能性が高い、という言い方が正確です。イワタニ・プリムス公式FAQでは、ノーマルガス(Gタイプ)の使用可能温度は20℃〜、5℃以下では缶にガスが残っていても出ない場合があるとされています(2026年8月18日確認時点)。軽井沢の10月の日最低気温の平年値は6.3℃なので、秋の朝夕は想定域を大きく外れます。ハイパワーガス(Tタイプ)を選ぶのが妥当です。
Q. 山頂ならどこでもバーナーを使ってよいのですか?
A. いいえ。環境省の示す位置づけでは、個人用の小型火器は自然公園法上の規制対象外とされますが、山小屋・自治体・保護区域の管理者が独自に制限を設けるケースがあります。富士山では法律による一律禁止ではないものの、「山小屋周辺」「混雑する場所」「強風時」の使用は厳禁と公式に明記されています(2026年8月18日確認時点)。行き先ごとに、管理者の最新の案内を確認してください。
Q. 火を使わずに温かいものを食べるには、何を持っていけばよいですか?
A. 保温ボトルとスープジャーの二択が基本です。サーモスの真空断熱スープジャー JED-00シリーズは、6時間後の保温効力をJED-300で56℃以上、JED-400で60℃以上、JED-500で63℃以上と公表しています(2026年8月18日確認時点)。容量が大きいほど6時間後の温度が高いので、軽さと温度のどちらを優先するかで選びます。いずれも熱湯での予熱をしてから中身を入れる前提の器です。
Q. 秋の山ごはんは、どのくらいのカロリーを見込めばよいですか?
A. 一食で賄おうとしないのが前提です。目安は運動強度から概算できます。METs表では「hiking, cross country」が6.0METs、「backpacking, hiking with daypack」が7.8METsとされ、消費kcalは「METs × 体重(kg) × 時間(h) × 1.05」で概算します(2026年8月18日確認時点)。行動食との分担で埋める設計にすると、山ごはん側は温かい一杯で足ります。
Q. 作り置きのおにぎりやサンドイッチを持っていっても大丈夫ですか?
A. 農林水産省は、温かいところに置いておくと細菌が増えること、なるべく涼しい場所に保管して早めに食べること、長時間持ち歩くときは保冷剤・保冷バッグを利用することを示しています(2026年8月18日確認時点)。当サイトが確認した範囲では、具体的な温度と時間の数値基準は同ページに書かれていません。「温かく保つ」か「涼しく保つ」かをどちらかに寄せる、という形で判断してください。体調に異変があれば公的な相談窓口に従ってください。
まとめ:今日やることは、行き先の火気ルールを1つ確認するだけ
秋の山ごはんは、レシピの引き出しの数では決まらない。場所・気温・時間の3つで「火を使う/使わない」を先に確定させる。それだけで、当日の現場に判断が残らなくなる。
- 行き先の管理者の案内を1つ開く。自治体・国立公園管理事務所・山小屋のいずれかで、火気の扱いを確認する。ここで制限があれば、②③は不要になる
- その日の最低気温を見て、ガスを決める。0℃を上回るならハイパワーガス(Tタイプ)、下回るなら火に依存しない献立に寄せる
- 器を決めてから中身を決める。温かく保つならスープジャーか保温ボトル、涼しく保つなら保冷剤と保冷バッグ。どちらでもない状態で半日運ばない
もう一度、次に読む記事の入口を置いておく。一日の食べ方全体から組み立てたい人は行動食の選び方の全体像へ。火を使わない型を詰めるならスープジャーの予熱と容量の使い分けと保温ボトルの保温力の見方へ。火を使う型なら登山用ガスバーナーの選び方とクッカーの素材とサイズの決め方へ進んでほしい。
参考・出典
- 環境省「国立公園の利用上のマナー」 https://www.env.go.jp/nature/nationalparks/about/manner/ (2026年8月18日確認)
- 富士登山オフィシャルサイト「富士山のルールとマナーについて」 https://www.fujisan-climb.jp/info/20240828-rule-manner.html (2026年8月18日確認)
- 尾瀬保護財団「ルール・マナー」 https://oze-fnd.or.jp/ozb/b-mn/ (2026年8月18日確認)
- イワタニ・プリムス公式FAQ https://www.iwatani-primus.co.jp/support/faq/ (2026年8月18日確認)
- サーモス「真空断熱スープジャー JED-00」 https://www.thermos.jp/product/series/jed-00.html (2026年8月18日確認)
- 農林水産省「お弁当で注意すべきこと」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/lunchbox.html (2026年8月18日確認)
- 気象庁「富士山(静岡県)平年値」 https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=50&block_no=47639&view=p1 (2026年8月18日確認)
- 気象庁「軽井沢(長野県)平年値」 https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=48&block_no=47622 (2026年8月18日確認)
- 国立健康・栄養研究所(現・国立健康危機管理研究機構)版 2011年改訂版「身体活動のメッツ(METs)表」 https://www.nibn.go.jp/eiken/programs/2011mets.pdf (2026年8月18日確認)
- 大塚製薬「カロリーメイト ブロック」 https://www.otsuka.co.jp/cmt/product/block/ (2026年8月18日確認)
- 井村屋「えいようかん」 https://www.imuraya.co.jp/eiyo-kan/ (2026年8月18日確認)
